ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、黒幕へと向かう

砂漠の辛い旅を続ける麦わらの一行、乾いた砂漠の国に吹き荒ぶ死を呼ぶ風。反乱と言う太陽が昇るのを阻止する為に反乱軍の拠点であるユバというオアシスを目指し続ける一行、砂漠という環境の凄さに圧倒され其処に生きる生物達に翻弄されながらも必死に歩き続ける。途中、ラクダのマツゲを旅のお供に加えてユバへと進み続ける。行軍を続ける事数日、日も傾き夜になり辺りも暗くなった頃漸くユバへと到達した。だが……

 

「そんなっ……ユバの街が……砂に飲み込まれてるなんて……!!!」

 

そこにあったのは今までの砂漠と差ほど変わらない乾ききった土地、砂嵐よって巻き上げられた砂が幾重にも降り積もりオアシスの町だったというユバは乾いていた。木すらもカラカラに乾ききった土地、砂に上がった地層はオアシスを飲み込んでしまっていた。そんな廃墟の町に響く砂を掘り返す音、不規則に聞こえるそれを頼りにしてみると一人の男が必死にスコップを手にしながら砂を掘っていた。

 

「旅の人かね?砂漠は疲れただろう……すまんな、この町は少々枯れている……。だがゆっくり休んで行くが良い」

 

振り返った男は酷く痩せていた、身体をフラフラとさせながらも優しい声色で宿ならあるからゆっくりと身体を休めてくれと薦める。こんな状態で他人を優しく労うなど普通は出来ないだろう、男の性格の良さが滲み出ているかのような言葉だった。

 

「あの、此処に反乱軍が居ると聞いて来たんですが……」

「っ!反乱軍に何のようだ!?」

 

先程の優しさから一変して男は目を鋭くし威嚇するかのように此方を睨み付けてきた、男にとって反乱軍は良い物とは思っていないようだ。そして衝撃的な事を言い放った。

 

―――此処に反乱軍は居ない、奴らはカトレアに拠点を移したっと。

 

「カトレア!?ナノハナの隣のオアシス!?」

「おいそれマジかビビ!?」

「ナ、ナノハナって俺達が最初に上陸した所じゃねえか!?何の為に此処まで……!!」

 

反乱軍を止める為に砂漠を超えてきたというのに肝心の反乱軍は此処に居ない、そればかりか最初に上陸した場所の近くにそれは居た。凄まじいニアミスだ、此処まできたというのに引き返すしかなくなったと言える。落胆する中ルフィが口にしたビビと言う言葉に反応したか男は掘っていた穴から抜け出し此方へと近づいてきた。

 

「お、おいおっさんビビは王女じゃねえぞ!?」

「白状してどうすんだアホォ!!」

「ビビちゃんなのか…!?無事だったのか……私だよ解るかい……?」

 

男は涙ぐみながら嬉しそうに、会いたいと願っても会えなかった人と会えた喜びに満ちているかのように優しい声でビビに語りかけた。随分と変わったが私だという彼にビビは解らなかった、だが直ぐに理解した。だがそれはあまりに酷い変化だった、ビビの知っている男はもっとふくよかで血色が良かった筈なのに……今は痩せ細り血色も悪い。

 

「トト、おじさん……!?そ、んなこんなに痩せて……」

「少し痩せただけだよ……ビビちゃん私は国王様を、コブラ様を信じている……!反乱なんて馬鹿げてる……!!!」

 

男、トトはビビが幼い頃からの交流があった。彼自身アラバスタ国王、ネフェルタリ・コブラの事を信じている、絶対に国を裏切るような事はしないと。だから、反乱軍を止めて欲しいと懇願する。この国を愛している一人の国民としての願い、その言葉を深く胸に刻み込んだビビは改めて反乱を止める決意を固める。だがもう既に日も落ちている、今日はこのままユバの宿で仮眠を取り早朝に出発する事を決めた。

 

 

翌日、太陽も昇りかけている早朝に一行はユバを出発しようとしているとトトが出迎えに来てくれた。彼も水を出す為の砂掘り作業で疲れている筈なのに態々起きて来てくれた、それに感謝しつつ絶対に反乱を止めると約束する。

 

「ルフィ君、こいつを持って行ってくれ」

「水!?出たのかおっさん!」

 

トトが差し出したのは小さな樽水筒に入った水だった、どうやら夜中皆が寝静まったときにルフィはトトを手伝ったらしくかなり深く穴を掘ったらしい。ルフィは疲れからか眠ってしまったがその穴を少し掘ると湿った地層に当たる事が出来た。それを蒸留し水を作ってくれたとの事。ほんの僅かな水、だがこれはユバがまぎれも無くオアシスであるという証明にも繋がる。

 

「正真正銘ユバの水だ、すまんねそれ位しかなくて。是非飲んでくれ」

「有難うおっさん!俺、これを大切に飲む!」

 

ルフィも理解している、いやルフィだからこそ解っているんだ。一緒に水を掘り当てる為に穴を掘ったからこそ解る大変さ、こんな乾いた土地でたった一人で黙々と穴を掘り続ける大変さを。それなのに自分が飲む為ではなく自分達の為に水を作ってきたトトの気持ちを重く受け止めた。それを首に下げながらルフィはトトに笑みを見せながら先頭に立って歩き始めた。反乱軍を止めるために進み始める、反乱軍がいるカトレアはあまりにも遠いが進むしかない現状。唯歩くしかないのに、ルフィは立ち止まり座りこんだ。

 

「やめた」

「えっ!?ル、ルフィさん?」

「ルフィ?」

 

座りこんだルフィに皆が戸惑った、ビビは如何して何をやめるのか理解出来ずにそっと近づきどうしたのと尋ねるしか出来ていない。

 

「ビビ。クロコダイルは、反乱軍を止めたら止まるのか」

「っ!!」

「俺はクロコダイルをぶっ飛ばしたいんだよ!!」

 

ルフィの言葉は自分のやりたい事を言っているようにも見えるがこの国で起きている出来事の核心を突いている。既に70万近い反乱軍を止める事など出来るのか?出来たとしても勢いを削ぐ程度、仮に反乱を止められたとしてもクロコダイルは更なる手を打つ事だろう。こちらは常に後手に回るしかない、黒幕に振り回されるだけになってしまう。

 

「そ、それは……!!」

「お前はこの戦いで誰も死ななきゃいいと思ってるんだろ。甘いよお前」

「それが何が悪いの!?この国の人は何も悪くないのに、そんな人達が殺し合おうとしているのを止めようとして、人が死ななくて良いって思って何が悪いの!!!?」

「人は死ぬぞ」

 

普段の彼を知っている者なら考えられないほど冷静で冷たい表情で淡々と事実を突きつけるルフィ、それを止めたいと願うのにそれを否定され遂にビビは怒りを露にしルフィを殴り付けた、彼の上へと乗り何度も何度も拳を振り下ろす。

 

「なんでお前は、命を掛けてんだ!!」

「だって、この国を救うには、私の命を賭けるしかないじゃない!!他に何を、賭けろって言うのよ!!!?」

 

振り下ろされる拳を受け止めたルフィはそのまま彼女を振り解き大声で叫んだ。

 

「俺達の命ぐらい賭けてみろ、仲間だろうがぁ!!!」

 

言葉を受けた、お前の命一つで賭けたりないなら仲間の命を賭けろよ!!たった一人で100万の命を救おうとしていたビビにそれは大きく強い言葉。一人の、20にも満たない少女が背負うにはあまりにも重すぎる物を、一緒に背負うとルフィは言い切った。それにビビの心は潤った。

 

「本当はお前が1番悔しくて、あいつをぶっ飛ばしてェんだ……ビビ、クロコダイルの場所の何処だ!?」

 

号泣するビビとそれを周囲から見守る仲間、この時をもって目的は変更となった。反乱軍の元へ行くのではなく黒幕、クロコダイルを討伐する事へと。目的地はカトレアではなく、クロコダイルがいるレインベース……!!

 

「行くぞ、クロコダイルをぶっ飛ばしにぃ!!」

『おおおっ!!!』

 

 

「あ"あ"あ"っっっ~……」

「おいおい昨日の威勢の良さと覇気は何処行ったんだよ」

 

ユバから北へ一日ほど行くとあると言うレインベース、反乱とは殆ど無縁なギャンブルの町。そこにクロコダイルがいる、威勢よく黒幕を倒す!と宣言した割りに暑さにやられて早くもヘロヘロになっているルフィそしてウソップ。チョッパーもゾロに引っ張って貰わずに頑張っていると言うのに締まらない。

 

「おいレウスゥ~でっかくなって影、作ってくれよぉ~……」

「これから戦うのに体力を浪費したくないんだけどな……」

「ケチィ~…なら……!!」

 

レウスに断られたウソップは既に喉がカラカラらしく我慢出来なくなったのかルフィが首から提げている水筒目掛けて飛び掛った。ルフィも喉が渇いているだろうにそれには一切手を付けていない、ウソップが狙っていると解ると腕を伸ばし遠ざける。

 

「ゴムゴムの駄目だァ~!!」

「良いじゃねえか一口ぐらい折角貰った水だろ!?」

「ゴムゴムの駄目だァ~!これはカラカラのおっさんが一晩中かけて掘ってくれた水だぞ、そうやって無駄に飲んだら駄目なんだ馬鹿野郎!!」

 

ナミが思わず本能に大きく偏って生きているルフィが我慢をしている事に酷く感心していると憤慨したようにルフィは失敬だな!?と怒るがそれはしょうがないだろうに。

 

「ルフィさん、本当に有難う。私じゃこんな決断下せなかったわ」

「メシ、食わせろよ。全部片付いたら死ぬほど食わせろぉ!」

「うん約束する!!」

「フッ……さあ行こうか、レインベースへ!」

 

ルフィ達が向かうレインベース、そこに居るのは王下七武海クロコダイル。国一つを手中に収めようとする凄まじき海賊、その名の如く鰐のように口角を上げながら笑う彼が率いるバロックワークス。だがその中にイレギュラーが混ざっていた、それは乾いた砂漠揺るがすような咆哮をあげるとゆっくりとレインベースへと入って行った。

 

「……そろそろ行くか。怒られるのは嫌だしな」


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