ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、船長の兄を見る

念願となっていたアラバスタへの上陸、漸く此処まで来れたとはビビは安堵していた。途中にバロックワークス配下のビリオンズの船を大量に確認したとしてもそれでもビビは国に辿り着けたと安心していた。ナノハナと言う街の近くへ船を停泊させたが付いた途端に空腹なルフィは勢いよくメシやを求めて駆け出して行ってしまった。何故この船の船長でありながら賞金首である彼が一番無鉄砲で無計画なのだろうか……。

 

「さてと……如何する、ビビちゃんは顔が割れてるし一応俺も残って警護とかしてた方が良い?」

「そうね……サンジ君が一応私達が全滅してるって話をしてくれてるけどもしもって事も十分あり得るわ。でも此処が見つかったら戦闘になっても面倒よ、姿が見られないように慎重に全員で行きましょう」

 

ビビはこの国では顔が割れすぎてはいるが残していくわけにも行かず、致し方なくバレないように連れて行く事となった。その方法は……

 

「なあ、これって結構無理があるんじゃないか?」

「でもこれが一番確実よ」

「ご、ごめんなさいレウスさん重く、無いかしら……?」

 

人獣形態となったレウスがビビを背負いその上からかなり大きめのフードを被り姿を隠すと言う物だった。見た目自体はかなり大柄の男がフードを被っているようにしか見えないようにレウスが翼をかなり無理して動かすことでカバーしている。カルーは大きめの木箱の中に入ってもらいそれを担ぐ形となった。

 

「大丈夫だよ、このぐらい軽い軽い。そっちこそ大丈夫?この形態はぶっちゃけ鎧纏ってるみたいだからゴツゴツして痛くない?」

「ううん大丈夫よ(なんだか暖かくて少し気持ちいいかも……)」

「よし行くわよ!」

 

そのままナノハナへと入っていく一同、砂漠の町だけあって殆どの人は肌を隠すような服を着用しているからかレウスの格好はそこまで注目されなかった。一部の人からそこまで厚着しなくても良いんじゃ無いかい?とからかうような声がする程度で収まった。街の外れに到着し周囲に一目が無い事を確認すると木箱とビビを降ろす。

 

「ぁぁぁぁっ……ぁぁぁぁぁっ……!!」

「だ、大丈夫レウスさん?な、なんかちょっと声が艶っぽかったけど……?」

「んっああごめん、なんか翼を動かした事が無い感じにやってたからちょっと直してた」

「今のがレディだったら俺は大歓迎だったんだけどな。20代半ばの野郎じゃな」

「喧しいわ悪かったなおっさんで」

 

半笑いのサンジにからかわれて少しむっとしてしまう、年齢自体は余り気にする方ではないがこんな言い方をされてしまうと少し気になる。実際一味の中で最年長はレウスである、寧ろ一味が全体的に若すぎると言うのも多いにあるが。

 

「ええっレウスさんってそうなんですか!?てっきり私二十歳位かと……」

「私も、結構年上だったのね」

「悪かったな27で……」

「気にすんなよ、おっさん」

「……20代はまだおっさんじゃ無いもん……」

 

おっさんは30代からだもんと若干いじけるレウスを他所にナミはサンジとチョッパーに服や食料などのお使いを頼む。この中でバロックワークスの社員と直接顔を合わせていないのはこの二人だけ、街にもバロックワークスの社員がいるかもしれないと言う警戒からの人選だ。

 

「ウソップ、27っておっさんなの……?」

「うーんおっさん予備軍じゃね?」

「……マジで……?まだ、若いつもりでいたのに……おれは、おっさんなのか……?」

「え、ええっとレウスさん元気出してください!一般的にはそうかもしれませんけどレウスさんはとっても若々しいしお兄さんって言えるかも知れませんよ!?」

「……ビビ、それフォローになってるようでなって無いわよ?」

 

レウスはサンジとチョッパーが帰って来るまで自分がおっさんであると受け入れようと必死に戦っていた。

 

「わぁお素敵!私こんな感じの服好きよ!」

「で、でも派手じゃないかしら……?」

「いえいえ凄い似合ってるよ、ナミさんにビビちゃん♡」

「踊り子の衣装って……」

 

戻って来たサンジとチョッパーが買って来た服などを着た一同だが如何にもチョイスがあれだった。ゾロとウソップは盗賊の兄貴と子分と言ったような見た目にしか見えない、サンジとレウス、チョッパーは一般的な物でマシと言える……が女性陣の服はあからさまにサンジの趣味全開としか言えない。大きく露出しているセクシーな踊り子の衣装……これから砂漠を渡ろうとしている人間の服とは思えないだろう。

 

「大丈夫、姫と海賊だってバレなきゃ良いんだろ?」

「……8割方お前の趣味だろこれ」

「オフコォォオオス!!!」

「砂漠で肌出してると火傷するから上から羽織るから砂漠に行くまでだな」

「何だとぉおおお!!!?」

 

大興奮&超喜んでいるサンジに現実を突きつける、このまま騒がれていても面倒なだけから早めに本当の事を言っておくに限る。

 

「ほ、本当なのビビちゃん!?」

「ええ。肌を出していると強い日差しで火傷しちゃうもの」

「なんてこった……俺の、俺の踊り子さんが……」

「今の内に目に焼き付けておいたら?」

「それだぁぁああ!!!」

 

っと復活して目を♡にしながら二人をまじまじと見ながら二人の魅力に溺れて行くサンジ。いやもう既に手遅れだろうが。明らかにあの挙動と発言は変態の部類だ。サンジに呆れつつ後は何処かに行ってしまったルフィをどうやって見つけようかと思った時、妙に騒がしく慌しい方向を見つけた、其方へと目を向けて見れば……海軍が誰かを追っていた、それが赤いシャツに青いズボン、そして麦わら帽を被った……我らが船長であった。レウスは頭を抱えながら口を開いた。

 

「おーい皆、荷物纏めろ~。ルフィが海軍に追われてるから早く逃げよう」

「あの馬鹿早速面倒を起こしたのかよ?」

「ああもうルフィの馬鹿!サンジ君急いで荷物持って!」

「はぁ~いナミた~ん♡香水で割り増しされた君の魅力に地獄の底までメロリンラァアアブ!!!」

「俺こっち持つ!」

「ああ行くぞチョッパー!」

「カルー行くわよ!」

 

もう既にビビすら慣れたのか全員は直ぐに荷物を纏めると一斉に船に向かって走り出す、がルフィはそれに気付くと置いていかれると思ったのか其方へと進路を転換すると走ってくる。当然大勢の海軍を引き連れて。

 

「アホォ!!海軍引き連れて来やがっててめぇだけ違う方向に逃げるか全員ぶっ飛ばせ!!」

「それが駄目なんだよゾロ、ケムリンが居て!!」

「ケムリン!?何だそれ!?」

 

大慌てで逃げる一同だが海軍の中から一人の男が抜きん出た、人一人分はあるかと言うほど長い十手を背負いながら葉巻を二本同時に銜えている男、海軍大佐のスモーカーである。スモーカーはその右腕を煙のように変えるとそのままこちらへと伸ばすかのように飛ばしてきた、明らかに常人の域を出ている。間違い無く悪魔の実、最強種と名高い自然(ロギア)系の能力者だ。

 

「逃がさないぞ麦わらァ!!!」

「うおおおお来たぁぁああああ!!?」

 

―――陽炎!!

 

煙の腕がまもなくこちらへと到達しようとした時、真横からルフィ達を守るかのように放たれた炎が燃え上がった。煙の一撃を遮断するかのように燃え上がった炎、煙を四散させた一撃の炎は次第に形を変えながら更に大きくなっていく。それはついには人の形へとなっていった、何が起きたのかその場の全員は理解出来て居なかった、たった一人だけを除いて。

 

「エース……!!」

「変わらねぇなルフィ!」

「エース、お前悪魔の実食ったのか!?」

 

唯一人だけ理解しているルフィが呼んだ名にゾロが驚きの表情を見せた。何処か嬉しそうな声をしているルフィに一体どんな繋がりなんだと困惑していた。

 

「ああメラメラの実をな!此処じゃ話も出来ねえ、後で追うからお前ら逃げろ!此方は俺が止めといてやる!」

「ああ有難う!行くぞお前ら!!」

 

エースの言葉を受け取るとルフィはそのまま皆を連れて走り出した。どんどん距離が遠ざかっていくごとに背後では凄まじい爆音と火柱と煙が上がっていく、二人の能力者がかなり激しいぶつかり合いをしているのが解る。走りながらゾロは思わずルフィに聞いた。

 

「おいルフィ、お前火拳のエースと知り合いなのか?」

「ああ。エースは俺の兄ちゃんなんだ!」

『兄ちゃん!?』

 

ルフィのカミングアウトに思わず驚愕する一同は足を止めずに走った為無事にメリー号に到着する事が出来た。兄が居る事自体には驚かなかったがそれでも兄も海賊である事に驚愕した者は多かったがゾロは何よりあの大海賊白ひげの二番隊隊長をしているエースが兄であるルフィに驚いてしまった。驚きの中メリー号を出航させるが皆はエースを置いてきてしまって良いのかと言うがルフィは別に大丈夫だろうと断言した。

 

「そんなに強いのかお兄さんは」

「ああ、昔は悪魔の実なんて食べてなかったけど強かったぞエースは!まあ今やったら俺の方が強いけどな!」

「お前が―――誰に勝てるって?」

 

出航したメリー号へと海から飛び上がってくるかのように上がってきた男はルフィの背後の船縁に着地した。それは海軍を足止めしていたエースであった。

 

「おおっエース!こいつら俺の仲間だ!」

「あ~こいつはどうも皆さん、何時もうちの弟が世話になってます」

『えっいや全く』

 

エースの口から出た柔らかで丁寧な言葉に一同は思わず敬語で対応しつつ頭を下げてしまった、あのルフィの兄なのに予想もしていなかった態度で一味は困惑してしまう。

 

「何分こいつは躾がなってねぇから、おめぇらも手を焼くだろうがどうか宜しく頼むよ」

『いえ全くこちらこそ……』

「えっとエースさん、兎に角どうです。弟さんと話とかあるんじゃないですか?お茶でも飲みながら如何ですのんびりと……?」

「ああいえ結構、お気遣いなく」

 

皆が思ったのはルフィのお兄さんがこんなにも良い人だなんて……!!と言う事だった。ハチャメチャなルフィの兄と言うからその原因的な人物である、同じようにハチャメチャであると思っていただけに此処まで紳士的に丁寧に対応されるのは予想もしていなかった。

 

「んでルフィ、お前にこれを渡したかったんだ」

「ン?なんだ紙切れか?」

「ああ、その紙切れが俺とお前をまた引き合わせる。いらねえか?」

「いや要る!」

 

素直に一枚の紙を受け取るとエースは笑って立ち上がった。

 

「出来の悪い弟を持つと、兄貴は心配でな。んじゃお前ら、これからも弟を頼むよ。んじゃな!」

 

そう言うと船から飛び降りると自前だと思われる小型の船に飛び乗った。その船はエースの炎を受けてパドルを回し風の力など受けずに自力で凄いスピードで過ぎ去って行く、ルフィは笑顔でそれを見送りながら貰った紙を大切そうに仕舞うのであった。

 

「それにしても凄い人に会っちゃった……ルフィのお兄さんがあんなに礼儀正しいなんて」

「海って不思議だなぁ……」

「だな。それよりも砂漠越えの準備しねぇと!」

 

エースとの出会いを終えた一同は、いよいよ反乱を抑える為に砂漠の先にあるオアシス、ユバを目指すのであった。


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