ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、いざアラバスタへ

―――深い深い雪雲に覆われ閉ざされている冬島に、その天に届かんする山、ドラムロッキーの頂上より鳴り響く無数の砲音。人々はそれを悪政王ワポルが戻り王政復活を告げる物かと脅えた。やがて砲音が成り止むと、明るく照らされるドラム城。人々は思わずそれを見つめた、明るく照らされた城ではなく……

 

―――俺は桜を咲かせてみせる!俺の発明が完成すればこの国は救われるんだ!!

 

昔、そう言っていた医者がいた。その男は藪医者と蔑まされ治療された人間に感謝などされた事など無い男だった。その男が30年と言う長い長い時間を掛けて作り出した物、それは人々の心に感動と言う薬を与え内部から人を治療するという物だった。それは……。

 

「お"お"お"お"お"お"ぉぉぉぉ!!!!」

 

一匹のトナカイが大粒の涙を流しながら叫ぶ、心から尊敬する医者の言葉は嘘ではなかった。研究は完成していたんだ……!!!と喜びを嬉しさを溢れさせるように流れる涙、その先にあるのはこの島の中心にあるドラムロッキーを幹にするように咲いた春の象徴の一つとも言える桜だった。白い大地と白い空に浮かび上がった鮮やかなピンクの桜はこの世の物とは思えない幻想的な風景を生み出した。

 

白い大地に降り注ぐ桜のような雪、その桜に照らされるように輝く白い大地。正に奇跡のような光景だった。この世とも思えない美しさに暫し人は呆然としてしまったが直ぐにその美しさに目を奪われ恍惚とした表情となりながらその光景に酔いしれた。島で一番信用されず、嫌われていた男が作りだした奇跡を誰もが言葉を失いながら目に焼き付けた。

 

そして―――今でも人々の心の中で生き続ける医者に医者として進めと言われ、最高の医術と優しい心を持ったトナカイは、今海賊となり海へと旅立った。

 

「チョッパー、これから宜しくな」

「うん、レウスも宜しくな!!」

「野郎共ぉ~新しい仲間、チョッパーに乾杯だぁああ!!!!」

『カンパーーーーーイ!!!!』

 

彼の仲間入りを祝う宴は、羊の海賊船の上で朝になるまで続いた……。

 

 

 

島を出航しアラバスタへと進路を取り航海をする事二日、チョッパーの診察による完全な回復が認められたナミは病気のせいでまともに動けなかったフラストレーションを解消するかのようにキビキビと指示を出しながら航海をする。皆もそれを嬉しく思いながら動き回った、そして矢張りこの船にはナミの航海術が必要不可欠だと再認識しながら船は進んで行く。

 

「へぇ、じゃあこれが"ランブルボール"っていうのか」

「うん。5年間の研究で俺が作った丸薬なんだ」

 

ラウンジでは海図をチェックしながら何かをメモしているナミ、病気で動けなかった間の航路などは一応ビビが記録していてくれたのでそれをかき起こしている。後々役に立つだろうしなにより彼女の夢である世界地図にも関わる大切な事だ。レウスとチョッパーは床に座りながら互いの話をしている、そんな時、チョッパーの戦闘に関わる話しになった際にチョッパーは自分が開発した薬を見せた。

 

「んでこれを使うと、どうなるんだ?」

「これを使うと悪魔の実の変形の波長を狂わせる事が出来るんだ。約三分間、俺は後4段階の変形をする事が出来るようになるんだ」

「へぇ~面白いな」

 

動物(ゾオン)系の能力は『人型』・『人獣型』・『獣型』の三段階に自在に変身できるのが最大の特徴。 だがチョッパーは長い時間を掛ける事によって自分が食べた悪魔の実の変形メカニズムを解明する事に成功し新たな変形点を発見する事に成功している。これがある意味ルフィが勧誘した理由、七段変形面白トナカイと言う事である。

 

「凄いなチョッパー、医術だけじゃなくてこんな物まで作っちゃうなんて…」

「そんな褒められても嬉しくねえぞこの野郎が~♪もう馬鹿♪」

「私には嬉しそうに見えるけどねぇ」

 

と茶茶を入れるとナミは直ぐに海図に向き直った。レウスはジッと興味深そうにランブルボールを見つめている。

 

「なあチョッパー、このランブルボールって俺にも使えないかな」

「へっ?レウスに?」

「ああ、なんか興味深くてさ」

「それは俺専用に合わせてるからレウスが使っても意味無いと思う、レウスに合った物を作らないと駄目だと思う」

 

そう言われたレウスは少し希望を持てたような気がした。これから自分達が向かうアラバスタには世界政府に公認された海賊、王下七武海の一角。サー・クロコダイルが率いる犯罪結社バロックワークスとの激突が予想される、自分もビビの力になりたい。だから少しでも戦力の増強を計りたいと思っていた。

 

「それじゃあチョッパー、俺に合った物を作ってくれないか」

「でも俺みたいなのは多分無理だと思うよ。それでも良い?」

「ああ、構わない」

「……解った。それじゃあまずは血を取らせて貰っても良いかな?」

 

早速血や牙や爪、鱗などを提供しチョッパーはそれを元にレウス専用のランブルボールの開発に着手する。倉庫の一室を借りての研究、チョッパーの場合は1からのスタートだった為手探りによる物だったが今回は自分と言う元がある為順調に進んでいる。このまま行けばアラバスタに付くまでには間に合う、がそれでもチョッパーは研究すればする程に自分とレウスの違いに驚くばかりだった。

 

動物系幻獣種、空想の産物とされている竜へと変じることを可能とする悪魔の実。根本的なメカニズムは同じであってもその途中で全く異なる方法を用いてリオレウスへと変わる力、この能力者にランブルボールを使ったら一体どんな変化が起きるのか全く想像が付かない。

 

「レウス、これ」

「チョッパー、これって……まさか?」

「間に合わせようと思ったから一つしか出来なかったけどなんとか」

 

二日後の朝早く、レウスが見張り台から降りた時に、倉庫から出てきたチョッパーが小瓶を手渡した。小さな瓶の中には自分の鱗のような、血よりも紅い色をした丸薬がそこにあった。小瓶越しにあるというのに凄まじい存在感を放っている丸薬に思わず喉を鳴らしてしまった。間違い無い、これは自分に凄まじい力を与えると確信出来る。

 

「サンキュチョッパー、これで奥の手が出来た……」

「本当に奥の手にしてくれよ、それを使ったらどうなるか俺も解らないんだ……」

「……解った、有難うなチョッパー。さてと、サンジの飯でも食いに行こうか」

「うん!」

 

チョッパーが作った丸薬、レウス専用ランブルボール。本来はもっと時間を掛けて作らなければいけない物、それを一つだけと言う事で大急ぎで作った物。だがこれが何を齎すのかは誰もわからない。チョッパーの言葉を深く受け止めたレウスは出来れば使わない事を決めながら共に食事を取るのであった。

 

 

「おいレウスそっちなんかあるか?」

「駄目だな……調味料ぐらいしかないぞ。ったくうちの船長は……」

 

ドラムを出航して早5日、事件が起きた。夜中の内にアラバスタまで持つように配分されていた筈の食料全てが消えうせると言う事件だ。勿論犯人はルフィだった、それに加えてチョッパーやウソップ、カルーまで絡んでいた。チョッパーに関してはランブルボールの製作中に腹が減ってしまいついつい手を出してしまったと白状した、サンジもそれに付いてはしょうがないと容認したが兎も角食料が無くなってしまったのは問題。そこで倉庫に何か残っていないかをサンジと共に捜索中。

 

「はぁ……ったくルフィの野郎、俺も少し腹ペコなのに……」

「なら食うために探そうぜ」

「だな」

 

この後何とか保存食の干し肉などを発見する事は出来たがそれ以外の物を発見する事は出来ずにまいってしまったが妙に騒がしいので外に出て見るとなんと敵であるバロックワークスの幹部、Mr.2と遭遇したと皆は語った。相手の顔に触れることで全く同じ姿や声まで真似する"マネマネ"の能力を持ったマネ人間。敵陣に潜入し相手を内部から切り崩すのにこれほど適した能力も無い、しかもMr.2が過去にコピーした相手の中にはビビの父親の顔まであったと言う。

 

「国王に成りすます……相当良からぬ事が出来るな」

「だな。だけど今あいつに会えたのはラッキーだ、対策が打てる!」

 

間もなくアラバスタに到着する所で遭遇した敵、だがその敵の能力を前もって知ることが出来た事は非常に大きな事。対策を打ち一味の内部崩壊を防ぐ事が出来るとゾロは語った。そして腕に×印のマークを入れた上に包帯を巻き、それを仲間の印とする事になった。

 

『いいか、左腕のこれが……仲間の印だ!!』

 

さあ、いよいよ砂漠の国だ!


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