ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、トナカイと仲良くなる

意識が泥に絡め取られるように薄れていく、自分が自分で決めたナミを医者に診せもう心配無いと解るまで倒れないと誓ったのに医者の居る所に彼女を連れて行く事しか出来なかった。消えて行く意識の中僅かに聞こえてきたのはドルトンのドクターと言う言葉だけだった、凄まじい疲労と磨耗した精神ではもう意識を保ちきれずに糸が切れる様に何も感知出来ないようになっていった。

 

薄っすらと瞳が開き意識が回復する、まだ何処かぼぅっとハッキリしない意識。時間を掛けながらそれをゆっくりと掘り起していく、大分意識がハッキリした所で自分が置かれている状況を確認してみることにした。どうやら簡易型のベットに横なっているらしい、此処は何所なのだろうかと身体を揺り起こす。

 

「此処は……?」

 

薄暗い空間の中、良く見えない空間を見渡すと石造りの壁に薬が置かれている棚などが目立つ。手術に必要な道具なども見えている、意識が戻った事で記憶も戻りもしかしたら此処は医者が居るという城なのではないかと思った。ベットから立ち上がって見ると身体の疲れがかなり抜けている事に驚いた、倒れる前は意識が薄れるほどに辛かった筈なのに今では平然と立ち上がる事が出来ている。

 

「もう起きたのかい、想像以上のタフだね」

 

突然声が聞こえてきたそちらに目を向けて見るとそこには片手に酒瓶を持った女性こと、Drくれはが笑っていた。

 

「ハッピーかい、小僧」

「アンタは……もしかして、医者だっていうDrくれは……?」

「そうアタシがそうさ。ドクトリーヌと呼びな」

「ドクトリーヌ……?えっと、140近いって聞いたんですけど……見た感じいい所50近くなんじゃ……」

 

初めてDrくれは、ドクトリーヌを見るレウスが抱いた印象は聞いていたよりも遥かに若々しいという事だった。140近い高齢と聞いていたが背筋は真っ直ぐ伸びているし肌の艶も良い、声もハッキリ通っている。これが100歳を超えている女性とは思えない、レウスの言葉にドクトリーヌは軽く笑いながらお世辞だとしても有難く受けとくよと答えながらそれを受け取る。

 

「だけど私はそこまで幼くないよ、艶々で華の130代だよ。独身だしね」

「130ゥ!?嘘でしょ!?ミス、どれだけお元気なんですか!?」

「若さの秘訣かい?」

「あっいえ聞いてませんけど、だけど普通に気になります……」

 

ドクトリーヌ曰く若さの秘訣は常に病気(ハッピー)でいる事らしい、それで常に身体が活性化されると語っている。それを熱心に聞いてしまうレウス、長生は矢張り生きていく上にそうなりたいと思うものの一つだ。

 

「あっ。そうだドクトリーヌ、俺の他に女の子が居ませんでしたか!?凄い熱で俺が見た限りだと動脈炎も起こしてて……!!!」

「おやある程度の医療の知識はあるようだね小僧、あの小娘の治療は終わってるよ。もう良い方向に向かってるよ」

「はぁ……良かったぁ…」

 

ナミの治療は既に終わっていてそれも回復に向かっていると解るとまた力が抜けてしまった、だが今度は安堵から来る力の抜け。安心してこの脱力感に身を委ねられた、仲間の安全が解って嬉しそうに浮かべている笑みを見るとドクトリーヌもイッヒッヒっと笑った。ドクトリーヌは付いて来なと言うとレウスを連れて隣の部屋へと案内した。そこにはナミが眠っておりその表情は酷く穏やかだ。安心したような息を吐くとドクトリーヌは椅子に座りながらレウスを見た。

 

「小僧、お前が処置をしたのかい?小娘の着てた服の中に粉状の薬が入ってた」

「あっはい、それは俺が作った物です」

「調べさせて貰ったけどこいつだね、娘の命を繋いでたのは」

 

それにレウスは驚いたように声を上げた、命を繋いでいた?一体どういうことなのだろうか。

 

「こいつには抗生物質が含まれている、それも上質な物だね。加えて解熱に鎮痛作用まであるね。こんな薬をどうやって作ったんだい?このアタシだってここまでの物は簡単には作れない、かなり良い材料が船に積んであるのかい」

「ああそれは俺の身体から作ったんです」

「お前の、身体から?」

 

その言葉に良く解らそうな表情を浮かべるドクトリーヌ、三つの作用を含みながら此処まで上質な物は中々作れる物でもない。聞いた限りレウスには医療の知識はそこまでないのに一体どうやってこんな薬を作ったのかと思案してしまう。しかも自分の身体から作ったと語る意味が解らない、どういう事か聞こうとした時廊下側の扉が開き誰かが入ってきた。

 

「おやチョッパー、良い所に来たね。隠れてないで出て来な」

「チョッパー……?」

 

ドクトリーヌの言葉に導かれるように振り向いて見ると一瞬眼を白黒させてしまった。そこにはなんともお粗末に隠れている者がいた。モコモコした毛皮に湾曲した二本の角にピンク色の帽子を被っている二足歩行をしているトナカイと思われる生物がいた。それはドクトリーヌの言葉に従うようにゆっくりと部屋へと入るとドクトリーヌの後ろに素早く隠れるように移動した。

 

「えっと、ドクトリーヌそれは……?」

「こいつは私の助手チョッパーさ」

「助手……?もしかして悪魔の実を食べているんですか?」

「ほう解るのかい?」

「俺も食べて化け物になってますからね」

 

ケラケラと笑うレウスにチョッパーはそっと見るように身体を出しながら蹄でちょんちょんとレウスに触れるように突く。彼にとってドクトリーヌ以外の人間は警戒する対象なのかもしれないと察する。何所が化け物なのかを確かめるようだ。

 

「お前、なんで化け物なんだ……?普通の人間だぞ」

「俺は動物系悪魔の実を食べてドラゴンになれるようになったんだ」

「ド、ドラゴンゥゥ!?ド、ドラゴンって空想上の生物だろ!?」

「まあ見てな、でもあんまり大声出さないでくれよ?ナミちゃんが起きちゃう」

 

そういうとチョッパーは口に手をやって大声を出せ無いようする、寝ている患者がいるのに大声を出してはいけないと自分の行動を咎めるようだ。言葉から察するとこのチョッパーも良い医者なのかもしれない、静かになってから頷くのを確認すると片腕だけを竜化させていく。次々と鱗や甲殻で覆われていく腕を見たチョッパーは目を見開きドクトリーヌは興味深そうにそれを見つめた。

 

「俺はリオレウスという竜に成る事が出来るんです、その薬も俺の爪や牙に鱗を混ぜて合わせて作ったんです」

「ほう?それは実に興味深いねぇ、お前さんの治療費はお前さんのその鱗や爪、牙って事にしておこうっかね」

「その位だったら」

 

その場で爪を切断し鱗を剥がし牙を抜いていくレウス、痛み自体はあるが竜化すると痛みにかなりの耐性が出来るためか痛みはそれほどまででもない。大きな袋一杯に素材を入れるとドクトリーヌは満足そうに頷き何処か意地悪い笑みを浮かべるとそのまま去って行ってしまった。チョッパーはナミのポケットに入っていた薬を改めて調べて見るとその効力に大きく驚きながらレウスに目を輝かせながら近寄った。

 

「お前すげえんだな!!俺こんな薬になる素材なんてみた事ねえよ!!」

「そうか、有難う」

「それに俺ドラゴンなんて初めて見たぞ、なあ身体も見せてくれよ!!」

「医者の身体検査って事なら受けない訳には行かないな」

 

レウスは服を脱ぎながら身体を人獣型に変形されていくチョッパーは更に目を輝かせながらカッコ良いと騒ぎながら大興奮しながら触れながら色々と調べ初めて行く。がその途中はチョッパーは手を止めてしまった、その顔には影を作り少し距離を取った。

 

「お前俺の事恐くないのか……?」

「何でさ」

「だって俺はトナカイなのに二本足で立ってるし……人間じゃないのに喋るし、青鼻だし……ば、化け物だし………」

 

段々声は小さくなっていくチョッパーの声、たったそれだけのなのに今まで辛い経験をした事がある事が解ってしまう。ドクトリーヌの助手となった今では考えられないような辛い事があったのだろう、化け物と揶揄され襲われた事もあったのかもしれない。気付けばそんなチョッパーの頭を帽子越しに撫でていた。

 

「俺はそんな事思ってないぞ、確かに少し驚いたけどさ。化け物とか恐いとは感じてない」

「な、なんで……?」

「それなら俺の方が化け物だからさ、だって竜に成れるんだ。普通の人間から見たら俺の方が異常さ」

「そう、かな……?お前からは嫌な臭いとかしないし悪い奴じゃないと思う」

「ありがと、嬉しいな」

 

気付くと二人はにこやかに笑っていた、エッヘヘヘヘヘと笑うチョッパーに釣られて一緒に同じような笑い声を二人して漏らしていた。

 

「俺はレウス。レウス・R・リオスだ」

「俺はトニートニー・チョッパー、宜しくな!」

 

化け物と呼ばれたことのある優しいトナカイ、自らを化け物と呼ぶ竜人。似たような二人は何処か通じ合っているように感じたのか気付けば仲良くなっていた。


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