ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、冬島に到着する

ナミが病気で倒れてしまってから既に二日が経過している、一番焦り早く国に戻りたいと願っている筈のビビの言葉により医者を探す事になったが一向に島は見えず唯闇雲に航海をするしか出来ずに一味には悔しさと歯がゆさを味わっていた。航海士であるナミが倒れてしまった為に航海士の代行に一味の中でそれなりの知識があるレウスがする事になったがそれにより負担は激増してしまっていた。

 

特殊な磁場の影響で非常に気候が変動しやすい上に嵐も何の予兆もなく発生する偉大なる航路(グランドライン)。今まで順調に航海が出来ていたのはナミのお蔭であったと一味はそれを実感した。本で得た一般的な航海術しか持たぬレウスでは偉大なる航路の航海は非常に難しい物だった。無造作に、前触れも無く風が変化するこの海。幾度と無く危機が訪れたがその都度、完全竜化する事で脱出してきたがその影響で日常的にレウスに掛かる負担と疲労はかなりの物であった。

 

レウスの航海術では日が出ている内の航海がやっとで夜は船を止め朝を待つしかなかった。その際もレウスは休もうとしなかった、ずっとナミの傍にいながら看病をしながら牙などを磨り潰し薬を作り彼女に飲ませながら支えとなっていた。保温性に優れている自分の翼膜を切り取りそれをナミに掛けてやったりしながら彼女を見守り続けていた。因みに翼膜は自然に元に戻る。

 

「水を変えてくるか……」

 

ナミの熱ですっかり水も暖かくなって来てしまっている、変える為に立ち上がった時ナミの腕が布団から伸びると腕を掴んだ。桶を置くとそっと手を握りながらナミに視線を合わせる。

 

「ナミちゃん、大丈夫か?欲しい物でもある?」

「ううん、大丈夫だから……貴方も少しは眠って……もう、二日は寝てないでしょ……?」

「鍛えてるから大丈夫さ、俺なんかよりナミちゃんはしっかり休んで。大丈夫絶対医者は見つかるから」

 

まだ熱い額を触りつつ頭を撫でてから外に出ると雪が降っている、かなり冷え込んできている。リオレウスの力を身に付けてからはそれなりに寒さには耐性は出来ている、体内に火炎袋がある為か体温を維持出来る上に高高度を丸三日休む事無く飛行することも可能であるスタミナと上空での寒さにも耐える事が出来る身体となっているのがかなり良い方向になっている……が

 

「っ!」

 

キッチンに向かおうとした時ガクっと身体が崩れ落ちそうになってしまった、それを必死に食い止めるように足に力を込めて甲板を踏み締めた。常人離れしたスタミナを持っているとはいえたった二日で完全竜化した回数は10回を越えていた、自分の未熟な航海術を補う為には能力を使うしかなかった。だがそれでも10回という回数で体力は限界を迎えようとしていた、本来ならとっくに倒れていても可笑しくのにそれを精神力で支えている。

 

「俺が、倒れたら……一体誰がナミちゃんを、楽にして上げられるって言うんだ……?」

 

今現在ナミの苦しみを少しでも和らげる薬を作れるのはレウスのみ、材料自体はあってもビビ達はどの割合で混ぜたり磨り潰したりして飲ませれればいいのか解らない。ならば倒れる訳には行かない。自分だって麦わらの一味なんだからしっかりしなくてはという強い意思で気を持ち直すとキッチンへと入り濃いコーヒーを淹れて喉へと流し込むと直ぐにナミの元へと戻って行った。

 

「(無理が、祟ったか……?少し眼が……)」

 

翌日、降頻っていた雪はなりを潜めた気候が安定しつつも寒さが続くようになっていた。不安定さが異常さの一つでもある偉大なる航路にしては安定しすぎていると思いつつも疲労からか掠れ初めている視界に活を入れながら獣人形態になりながらリオレウスの視力の良さを活かしながら周囲警戒をしながら島を探す。

 

「う~さみぃ……にしても安定して寒くなってきたな」

「だな~、それもやっぱりこの海の不安定さゆえかもな」

「いえきっと島が近いのよ。きっと冬島ね」

 

偉大なる航路には四季の一つが主な季節となっている島が幾つも点在しているらしい。それらの島に無数にある偉大なる航路の海は普通で入られなくなり不安定になってしまうとの事、逆に言えば気候が安定した場合は島が近い事の証明になると言う。その説明に感心しつつレウスも水平線を見続けると僅かに何かが見えたような気がした。

 

「サンジ、何か見えないか!?」

「ああ、見えたぜ遂に見つけた……!島が、あったぞぉぉぉぉ!!!!」

 

見張り台に立っているサンジが思わず歓喜の声を上げた、雪が高く降り積もっている冬島が少しと奥に見えている。これで念願の医者にナミを見せる事が出来る!!とウソップやビビも嬉しそうに声を張り上げる、それに釣られるようにレウスも嬉しげに笑みを浮かべるが気が抜けてしまったからかその場に座りこんでしまう。

 

「レ、レウスさん!?」

「お、おいおいレウスまさかお前も病気か!?」

 

膝をつきながら激しき呼吸を乱す彼を心配そうに見つめながら肩を貸して立ち上がらせるビビにレウスは疲れ切っている笑みを浮かべた。

 

「大丈夫……これで、ナミちゃんを医者に見せて上げられると思うと気が抜けちゃって……」

「ったく吃驚させないでくれよ……」

「少し休まないと駄目よレウスさん、まともに寝てないんでしょ……?」

「何……もう大丈夫さ、心配してくれて有難う。元気出てきた」

 

お姫様に心配されるなんて男冥利に尽きるねと軽口を叩きながら柵に手を置きながら迫って行き冬島へと真っ直ぐ視線を向ける。後少し、医者の所まで連れて行ってナミがもう大丈夫だと解るまでの辛抱だと思いながら上手く力が入らない身体に活を入れる。一面雪に覆われている島、正に冬島というような島だ。まあこれは初めての冬島なのだが。上陸をしようとしたその時、

 

「今すぐ出て行け海賊共!!」

 

そこらの木々の隙間や周辺の窪みから銃などで武装している防寒着を纏っている人々が次々と現れてきた。恐らくこの島の住人だろうがこちらに明らかな敵意を向けながらこちらを威嚇している、既に威嚇ではあるだろうが一発銃弾が打ちこまれている。それを一人の男が制したが、かなり状況は緊張している。

 

「おい如何する、斬り込むか?」

「威嚇だろうが一発撃たれてる、だけど下手に動けば医者を呼んで貰えなくなる」

「如何する船長?」

「……こうする」

 

ルフィは着ていた防寒着ごと服を脱ぎ捨てた、ウソップ達は余りの行動に驚きの声を島の人々と同時に上げた。現在の気温はマイナス10度、熊が冬眠の準備を開始する気温で凍えるような寒さの中で上半身裸になってそのまま土下座をした。頭を床に叩き付けるかのような土下座を。

 

「医者を、医者を呼んでくれ!!病気になっている仲間を助けてくれ!!肉を食って元気にならねえし、凄い熱で苦しそうなんだ……!!お願いだ、ナミを、俺の仲間を助けてくれ!!頼む!」

 

ルフィに続くようにレウスも防寒着を脱ぎ捨て土下座をした。

 

「お願いします……皆さんには危害を加えない事を約束します。もしも約束を違えたら、この命を差し出します……!!」

 

今の気温で半裸になるのは下手すれば命を危うくしなけない行為、それを行っての懇願に島の人間は酷く動揺していた。彼らの中では海賊と言うのは悪という認識で残虐非道な物ばかりだと思っていたのに仲間の為に此処までする物なのだろうかと困惑の声が広がって行った。その誠意が伝わったのか緑色のコートを羽織った大柄の男が前へと出た。

 

「村へと案内する、早く服を来て付いて来たまえ」


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