遠くで爆音のような激突音が木霊する中、レウスは一心不乱に肉へとかぶり付き貪り続けていた。ブロギーによって掃われた心の中のくすぶりが消えた事である意味更にリオレウスに近くシンクロをし近い竜化をしていた。今はただこの美味い肉で腹を満たしたいという原始的な欲求に取り付かれていた。
ナミとウソップはブロギーの言葉通り暫くはレウスを動かす事は出来ないと悟り自分達は一旦この島のログが1年も掛ってしまうという事態を何とか解決する為に船に戻る事を考えるが正直レウス抜きの今のナミとウソップではジャングルに蔓延る恐竜や怪物たちを薙ぎ倒して船に辿り着くなど不可能。そこで比較的に近いもう一人の巨人のドリーの家へと向かう事にした。ブロギーの話ではドリーの家にはルフィ達がいるという話を聞いたからだ。
「(ガツガツガツ、ゴキャ、バキゴキ)……」
肉の中央を通っている骨さえ容易に噛み砕き全てを咀嚼し飲み込む、竜は貪欲に望む物を全て手に入れる。それがなんであろうと全てを自分の糧にし明日を生きる力と変える力強く恐ろしい生物。だがレウスはそれがある意味清々しく感じられた。
「ゴフゥ……食ったぁ食ったぁ♪」
満足げに声を上げるレウスは大きく御ちそうさまでしたと言うと近くにナミやウソップ、そしてブロギーの姿が無い事に気づく。だが遠くで鉄同士がぶつかる甲高い音と誇り高い戦士の声が聞こえた事から恐らくまた戦いをしているのだろうと察した。ナミとウソップについては解らないが……。
「兎に角空から探してみるか……?ルフィやビビちゃんの事も気になる」
一先ずルフィ達との合流を決め込むと翼をはばたかせ空へと舞い上がる。空からは島全体を見渡す事が出来た、勿論ブロギートドリーの対決も。二人の対決の凄さに感心しつつルフィ達を探そうとした時、突如ドリーの足元に白い液体のような物が溢れだしドリーの足を絡め捕りバランスを崩させた。
「なっ!?」
それを見たレウスは驚愕した、木々の間に隠れていた二人組も同時にリオレウスの視力を持つ彼は捉えていた。はっきり鮮明と確認した。髪の毛を3の形にセットしている眼鏡をかけている男ともう一人は帽子を被った少女だった。男は手から白い物を溢れださせドリーの邪魔をした、そしてブロギーは振りかぶった斧でそのまま―――ドリーを切った。
「―――!!!!!!」
レウスは瞬間的に頭に血が上るを初めて感じた、自分が激高していくのも理解出来た。自分の進むべき道を記してくれたブロギーが誇りをかけて戦っている
「おぉぉぉおおおおいレウスゥゥゥウウウ!!!!!」
「―――
だがそんなレウスの怒りを僅かに沈めたのは自分が乗っている海賊船の船長の声だった。ドリーの家の近くにいる、空を飛んでいる自分を発見し声をかけたのだろう。今直ぐにもブロギーの元に行きたい気持ちを抑えつつルフィの元へと降下した。
「レ、レウス大変なんだナミが!!」
「!?ナミちゃんがどうしたんだ!?」
「レウスさん大変なのよ!!多分だけどバロックワークスに捕まっちゃったのよナミさん!!」
「ンだとぉ!!?」
掛けられた言葉は衝撃に尽きる。レウスは一気に巻き起こった出来事に混乱しかけるが深呼吸をし落ち着く、だが落ち着いてはいられない。大急ぎでナミを探す必要が出てくるがよく考えてみればどこにいるかなど簡単なものだった。ドリーの足元をすくったあの無粋な下種野郎の所だと瞬時に確信した。
「こちらも拙いぞウソップ、ブロギーとドリーの決闘に水を差した下種がいる!!!」
「何だとぉ!?それまじかよ!?じゃ、じゃあさっきの血飛沫って!?」
「ああ……ドリーの足元をすくった下種野郎のせいだ!」
それを聞いたウソップとルフィは凄まじい憤怒を表情に表わした。ルフィもビビもドリーの戦士としての誇りの凄さは話をし戦いを見て理解していた。そしてウソップは師と仰いだ男の誇り高い決闘の邪魔をした者への怒りを燃やした。
「「ぜってぇええええに許さねぇええええええええ!!!!!!!」」
「俺とて同じだ!!俺はブロギーに救われた、心をな!そんな彼の誇りをかけた戦いを邪魔するものなど、許さん!!!」
「私も行くわ!!行くわよカルー!!」
「クワアー!!!!」
カルーも男として本能で理解していた。あの戦いは決して他人が介入し穢してはいけないものだと、それを穢した者は絶対に許せないと。
「ルフィ、ウソップ、ビビちゃん、カルー全員乗れ!!空中から強襲をかける!!!」
「ああ頼むぞ!!」
「任せろ!!!」
空の王者は吠える、誇り高き決闘を穢した者に。
空へと舞い踊る王者は更に力強く羽ばたき炎を燃やしている。
「レウスあそこだ!!ブロギー師匠に、ゾロやナミもいるぞ!?」
「うぉし、先に行くぞぉ!!」
ルフィは勢いのまま高高度から飛び降りていくがそれを止めはしない。したところで無駄だから。
「全く……ウソップにビビちゃん、これから地上に接近する。いい感じに飛び降りろよ!」
「解りました!いいわねカルー!」
「クワー!!」
「お、おう!!!」
王者は怒るだろう、決闘を侮辱した愚者どもに……。
「な、何だガネ!?」
「煙……!?」
突如として巻き上がる土煙、驚きの声を上げるはバロックワークスのオフィサーエージェントの一人、Mr.3そしてそのパートナーたるミス・ゴールデンウィーク。煙から飛び出し空中に滞空する巨大な影、そして煙の中から現れるのはルフィ、ウソップ、ビビとカルー。
「誰だぁああおっさん達の決闘を邪魔したのはぁあああああああ!!!!?」
「師匠ォおおおおおおおお!!!!!!」
「ナミさん!!大丈夫ですか!?」
「ルフィウソップビビ!!」
「クワァ!!」
「ヘッカルーもいるみたいだな」
舞い上がった煙で隠れていた姿を現した麦わら海賊団の船長、狙撃手そして客人として乗っている王女。強い敵意と怒りを滲み出しながら凄まじい覇気を纏って顔を覗かせた。
「お、お前らはそ、そうかボスからの抹殺リストに乗っていた男……そしてその仲間!!」
「アチャー3頭!?」
「喧しい!!」
「頭の3燃えてるし!!」
「黙れ!!」
「そ、そんな事よりルフィ私たち助けてよ!?」
巨大な蝋の塊、それに足を捕らえて身動きが取れなくなっているナミ達。蝋の塊の上部では何かが高速で回転しながら蝋の霧のような物を散布し続けていた。それを浴びているナミ達は徐々に蝋に塗れている。
「おし、ウソップにビビ。俺はあの3をやる」
「おう解った!俺は師匠を助ける!!」
「私は何とかナミさん達を……そうだ炎!!レウスさん!!」
ビビは直ぐに上空で旋回し続けているレウスに向けて大声を張り上げた、彼が炎を吐ける事は知っている。あの炎ならば容易に溶かす事が出来る筈と踏んだ、意図を理解したレウスは完全な竜化である獣型から人獣型へと変化しナミとゾロの元へと降りる。
「こいつを溶かしていいんだな」
「おう頼むぜレウス」
「早くお願い!」
「任せろ。微・竜火炎」
蝋を含んでいる息を軽く吸うとそこへ小さな火球で火をつけて火の息として吐き出して二人の足元の蝋を溶かしていく。やや熱そうだがそこは我慢してもらおう、全身蝋塗れになって動けなくなるよりマシだろう。が
「させる訳が無いがね!!ドルドル
レウスの行動を快く思う訳が無いMr.3、蝋を身体から生み出しそれを即座に剣の形にするとそれを思いっきり投擲した。真っ直ぐと向かっていく剣にゾロは刀を抜こうとするが間に合わない。だがそれは蹴り砕かれた、怒り心頭で全身からまるで湯気のような物を漂わせているルフィによって。
「わ、私のドルドルの力を蹴り、砕いたァア!?あ、有り得ない!?鉄の強度を誇るのだぞ私の蝋は!?」
「俺は頭来てんだ、ぶっ飛っべ3頭ァ!ゴムゴムのぉ~!!バズ~カァッ!!!」
怒気と覇気の両方を発散させているルフィ、その気迫は一番長いゾロでさえ見た事が無いほどに凄まじい物。勢いよく伸ばされていく両腕、がその速度も尋常ではない。瞬間的に数十メートルは伸びている、そしてゴムの特性のまま伸びた腕は凄まじい勢いで縮みつつルフィの腕力でMr.3へと叩き込まれた。到底人間が叩き込んでいるような打撃音ではない、最早爆音の領域。それを受けたMr.3は空へと打ち出されて行き空の彼方へと消えていった。
「はぁはぁ……あっえっ、い、今の力は……!?」
敵を吹き飛ばした事で頭が多少冷えたのかルフィは自分の身体へと目をやった、先程の一撃は自分で有り得ないほどの力を感じた。そして同時に身体を襲ってくる疲労感、確実に今までは無かったこと。
「よし溶けたぞ!ビビちゃん、頼むぞ!俺はブロギー救出の方へ行く!」
「任せて!!!ってナミさん上着燃えてる!?」
「う、嘘!?きゃあ蝋に引火しちゃったんだわ!?」
リトルガーデンでの戦いは怒りによってボルテージが上がりきっていた麦わらの一味へと軍配が上がる。この後、レウスの炎によってブロギーは救出され、ドリーも無事である事が判明した。
「ナミすわぁーんビビちゃーん!!その他共ー!!」
ドリーが無事である事に対するブロギーの男泣きの中、森の中からバスケットを一つ抱えたサンジがメロメロな声を発しながら踊りつつやってくる。思わずそれを見てレウスは脱力したのか上着を脱ぎつつ圧し折った木の上に腰掛けた。
「サンジ、遅い参上だな」
「ってうぉおおおでっけぇええええ何じゃこいつらぁああ!?お前がMr.3かぁ!?」
「聞いちゃいない……俺、今回色々と頑張ったのに……」
「まあレウス……あんたの頑張りは私が認めてるから」
地味に凹んでいるレウスを助けて貰ったので慰めるナミ、今回は流石にレウスの能力が無ければ本気で危なかったかもしれない。これからもレウスには色々と迷惑を掛けるかもしれない、しっかりとフォローなどもしていこうと心に決めるナミであった。
「いたっ」
「どうしたナミちゃん?」
「なんでもないわ(きっと虫ね)」
「そうだこんな物手に入れたぞ」
そう言ってサンジはバスケットの中からあるものを取り出した。それは……アラバスタへのエターナルポースであった。