The beginning of a castle   作:里芋(夏)

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基本的に毎週投稿時間は17:00の予定です。

いくつも部活を掛け持ちしてたり課題が降って来たりの影響で投稿日をずらすこともあると思いますが、そういった時は活動報告にその旨上げておこうと思うので、そちらをご確認ください。





ビギニング

あの日(イベント)からおよそ半月。

 

 

本来は練習無しとなっている土曜の朝に出社しているのは、別に俺が仕事熱心だからなんて理由じゃない。

 

日付は9月1日。

そう、今日は【プロジェクトビギニング】の追加メンバーとの顔合わせの日だ。

 

 

 

無駄に多いだけ、中身すっからかんの階層をごぼう抜き。

俺だけを乗せてズンズン上がって行くエレベーターの中、スマホに表示されたニュースを眺めながら考える。

 

 

新規メンバーの内訳は、男()1人に女性3人、それに女子1人なんだそう。

 

わざわざ女性と女子を言い分けているのは多分、大人と子供…的な意味合いだろう。

 

が、そうなると同世代の同性いない組が、俺は…まぁ良いとして2人出来てしまうのだが、そこらへん今西さんはどう考えてるんだろうか?

 

 

 

…なんて考えている内にエレベーターが開いた。

 

オフィスビルの30階。

一つ目の角を曲がってすぐの部屋が【プロジェクトビギニング】のプロジェクトルームな訳だ…が、

 

 

『…。………す!』

 

『……ね。で…………』

 

『…ャ…!…………』

 

 

 

「…これは入りづらい」

 

「うわっ!」

 

 

扉に近寄って中から聞こえたのは、明らかに今西さんではない幾つかの女性らしい声。

 

扉の前で立っていたこの少年も多分、入りづらくて困っていたクチだろう。

 

 

「…ってことで、一緒に行かない?」

 

「え?ぁ、はい!お願いしますっ!」

 

 

…彼が気付いているかは知らないが、今の威勢の良い返事が聞こえたからか扉の向こうは静まりかえっている。

 

 

「…ほら、入った入った」

 

「わわっ」

 

 

扉を開けて少年を押し入れる。

 

彼の後ろに付いて中に入ると、ソファーに腰掛け此方に手を振る今西さんと3人の女性、それに1人の女の子の姿が見えた。

 

初めましてを安売りしつつ空いてる椅子に少年を誘導、今西さんに確認をとる。

 

「ってことは、俺らで最後ですか」

 

「うん、そうなるね。

…さて、みんな揃ったところで取り敢えず自己紹介と行こうか」

 

今西さんが視線を此方に向けた。

 

 

あ、了解です。

 

「じゃ、まずは俺から。名前は新田 翼。22歳大学生です。

…まぁ、多分ニュースとかで知ってるんじゃないかなぁとは思うけど、一足先に活動させてもらってます。

一応、このプロジェクトのリーダーを務めることになってはいますが…うん、年齢差とか気にせず普通に接してくれればと思います」

 

一礼と同時にパチパチと拍手の音。

よかった、外してないらしい。

 

 

「はい、次は肇ちゃん。大丈夫かい?」

 

「っはい!ぁ…えっと、藤原 (はじめ)です。

年は13歳で…あ、得意なことは陶芸です!年齢はみなさんよりずっと幼いですけど、置いて行かれないように頑張りますので、よろしくお願いします!」

 

肇ちゃん、と呼ばれた少女は女性陣では唯一の黒髪で、幼いながらもしっかりした子だった。

 

…ってか趣味が陶芸って中学生にしちゃ渋すぎない?

 

 

「じゃあ、次は涼くん。お願いしていいかな?」

 

「はい!名前は秋月 (りょう)で、年は藤原さんと同じ13。特技はダンスです。

…えっと、翼さんに負けないように頑張ります!よろしくお願いします!」

 

涼くんは年若いのもあってか、カッコいいというよりはまだ可愛いと言った印象を受けるが、負けず嫌い…というより熱いタイプの子らしい。

 

 

「次は…高垣くんかな?」

 

 

「はい。

…高垣 (かえで)。22歳で、翼くんと同じ大学生です。好きなことは…温泉巡り、でしょうか?

出身は和歌山で東京に来たのは大学からなので、色々教えてくれると嬉しいです。

ちょこっとだけモデル活動をしていたので、芸歴はみんなよりお姉さんになりますから、ちょっとくらい頼ってくれても大丈夫ですよ?」

 

高垣さん。ふわっとしたボブカットに泣きぼくろ。女性にしては長身だが、童顔だからか綺麗というよりは可愛いといった感じだ。

 

 

俺の幼馴染みと全くの同姓同名だが、同一人物…ではないと思う、多分。

 

あいつは左右で目の色が違う…所謂オッドアイだったが、楓さんの目は両方同じ色だし。

 

 

…いや、でも出身地も同じだからもしかしたらもしかするかもしれない。

 

まぁ、そもそもあっちが俺のことを覚えてないかもしれないし、今気にすることでもないか。

 

 

「次は…じゃあ三船くん」

 

「あ、はい。三船 美優です。年は23で、えっと…最近はアロマテラピーに凝っています。

アイドルには…流されがちな自分を変えるためになりました。

本格的に踊ったり歌ったりするのは初めてなので、色々教えてくれると嬉しいです」

 

三船さんは…なんていうんだろう。

人妻っぽいというか未亡人っぽいというか…儚さっつーか、こう、大人の色香みたいな魅力を感じさせる女性だ。

 

 

 

「最後は川島くん、頼むよ」

 

「はい。川島 瑞樹、25歳よ。特技は…そうね、早口言葉かしら?

折角上京して来たのに、地味な局アナ…って言っても肇ちゃん達には分かりづらいわよね…そう!キラキラしたかったのよ。

丁度今西プロデューサーにも話をもらっていたから、思い切って飛び込んでみたの。

まだまだ、若い子には負けないわよ〜!」

 

 

川島さんは…あー、フレッシュというか若い…若い?

 

 

なんていうか、理想の大人の女性像+α()みたいな人…かな。

 

 

 

全員の自己紹介が終わったところで、手帳を取り出した今西さんが柏手を一つ。

 

「さて、一通り自己紹介は終わったようだし、これからの予定を簡潔に言うよ?

まず、このプロダクション内の設備説明をして、ウチのカフェでみんな一緒に昼ご飯。

それから、翼くん以外は宣材写真…えっと、クライアント…じゃなくて、雑誌とかテレビとかラジオの会社の人に君たちを宣伝するための写真を撮る」

 

 

「…で、プロジェクト宣伝用の集合絵を撮った後夕飯…って感じですか?」

 

「その二つの後に、君以外のボイスサンプル録りを入れたら完璧だね」

 

 

「…だそうで」

 

まぁ、ボイス録りまで入れて正味5〜6時間なら妥当…かな?

その間俺はずっと暇してるわけだが。

 

 

「良し!じゃ、このオフィスビルから回ろうか。

あぁそれから、色々話したいことはあるかもしれないけど説明中は無しで頼むよ?」

 

そう言ってドアノブに手を掛けた直後、突然今西さんが振り返った。

 

 

 

 

 

「おっと、大事なことを忘れてた…

 

ーープロジェクトビギニング、本格始動だ!」

 

 

 





次はメンバーとの絡みもちゃんとあるかな?

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