このビッチな女神に祝福を   作:nyasu

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湖に浄化を

「多少キツくてでも、クエストを受けましょう!お金が欲しいの!お願いよぉぉぉぉ!もうバイトは嫌なのぉぉぉぉぉ!コロッケが売れ残ると店長が怒るのぉぉぉぉぉ!頑張るから!私、全力で頑張るからぁぁぁ!」

 

今日も何時ものようにアクア先輩が騒いでいた。

可愛そうに、毎回お酒にお金を使ってしまう先輩はいつだって金欠なのだ。

 

「お金が無いなら、奢って貰えばいいじゃない」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「やめろアクア、それ以上やれば死んでしまう」

 

アクア先輩が私を揺さぶる、やめてください死んでしまいます。

……ハッ、いつの間にか天界に帰っている所だったぜ。

妙に慌てた様子のエリス先輩がいた気がする。

不用意な発言は気を付けた方が良いな。

 

「全く、そんなのえっちゃん達から貰えばいいじゃないか」

「うわぁ、ナチュラルにクズな事を言ってますよ」

「まったく、しょうが無いなカズマは……」

「えっ、なんでダクネスはちょっと嬉しそうなんですか?正直、引きます」

 

頬を染めるダクネス、それはねドMだからさ。

たぶん将来を想像してハァハァしてるんだろう。

それはそれとして、残念ながらそれは出来ないのである。

 

「残念だけど、それは出来ないのです」

「なんでだよ、えっちゃんは女神だろ!人間が大好きなんだろ!その慈愛で養ってくれよ」

「養いたいけど、うちのナナシちゃんがドーピングアイテム用にお金は管理してるから」

「お小遣いを管理される子供かよ……」

 

仕方ないんだ、食べれば筋力とか俊敏とかスキルとか上がるアイテムがあるから仕方ないんだ。

基礎ステータスが上がるならって、買っちゃうんだ。

その為には、お金はいくらあっても足りない。

そう、課金することを強いられてるのである。

 

「その例のナナシちゃんはどこに行ったんだ?」

「グリフォンとマンティコアを殴って50万エリス手に入れてくるって言ってた」

「おい、死ぬぞ。一撃でも食らったら死ぬぞ」

 

本人曰く、当たらなければどうということはないそうである。

大丈夫サポーターとして荷物持ちの人がいるから、最悪遺体の一部さえあれば回収されるので問題ない。

でぇじょうぶだ、アクア先輩がいるから死んでも蘇られる。

 

「あ、これなんていいじゃない!」

 

暫くすると、アクア先輩が依頼書を剥がし持ってきた。

 

「湖が汚くてブルータルアリゲーターが住み着いて困っています。湖の浄化をお願いします。湖が浄化されるとモンスターはどっかに行くので討伐はしなくてもいいです。湖の浄化なんて出来るのか?」

「ふん。バカね。私を誰だと思ってるの?と言うか、名前や外見で私が何を司る女神かぐらい分かるでしょう?」

「宴会の神だろ?」

「違うわよ!この髪を見て分かんないの、水色の髪!水の女神でしょうが!」

「えっ、もう一回言ってくれるか?」

 

カズマさんがアクア先輩に近付き耳を向ける。

 

「水色の髪、水の女神アクア様でしょ!」

「もう一回」

「水色の髪、水の女神アクア様でしょ!この距離よ、なんで聞こえないの!」

「水色の髪、水の女神アクア様でしょ!の所が聞こえなくて」

「聞こえてるじゃ無い!うわぁぁぁぁぁぁん、カズマがいじめるぅぅぅぅ!」

 

そのやりとりに私は大爆笑である。

ででーん、私アウトー。

なお、異世界人であるダクネスとめぐみんは普通に慰めていた。

でもよく見て、アクア先輩の顔が計画通りって感じになってるよ。

 

「ったく……うん、待てよ。おいアクア、触れるだけで浄化できるんだよな」

「会ったり前でしょ、私を誰だと思ってるのよ」

「よし、俺に良い考えがある」

「カズマさん、それってダメな奴だと思うの」

「いいわ、その良い考えとやらを教えなさい!」

「えぇ……先輩が乗り気とか、ますますヤバそうだよぉ」

 

その予想はあながち外れでは無かった。

 

 

 

ギルドで檻を借りた私達は、湖に向かっていた。

 

「ねぇ、なんだか出荷される豚のような気持ちなんですけど」

「気のせいだ」

「待って!ねぇ、出して!出してよ、私は女神よ!」

「お前のためだから」

「そうそう、そうよねって騙されるわけ無いでしょクソニート!」

 

湖に向かっている間、アクア先輩は何かを察してか暴れていた。

確かに、これから向かう湖の現状を知っていたら行きたくなくなること間違いない。

きっと野生の勘で気付いているのだ。

 

「着いた……のか?」

 

そこに広がる光景に、カズマさんは絶句していた。

汚染されたことでブルータルアリゲーターが増えたとは聞いていたが、まさかここまでとはと思うくらいに汚染されていたからだ。

だが、そんなことに絶句していたのでは無い。

絶句した理由は、湖の中を徘徊する何者か達にだったのだ。

ガスマスクのような物を被り、作業着のような物を着ている。

まさに業者さんと言う格好だった。

そんな奴らが複数人いる。

噂の頭のおかしいアクシズ教徒だろうか。

 

彼らの一人が湖の外から弓矢で攻撃し、怒った一匹は群れから離れて陸に上がる。

陸に上がり、威嚇するように行動した瞬間に斬りかかられ、首を切断される。

その死体を複数の集団が慌てながら回収し、回収している間に其奴は次の獲物に攻撃する。

首を切断した人物は再び弓矢を取って、モンスターが移動している間に回収するという無駄を省くために行ったのだ。

撃つ、引き寄せる、斬る、回収する。

この四工程、その人物達の背後にある荷馬車にはモンスターが積み重なっていた。

 

 

「なんて無駄に洗練された無駄のない動き」

「あれ、ナナシちゃんだ」

「ですよね、なんかグッタリしたグリフォン見えた当たりから怪しかったんだよな」

 

なんでそんな駆除業者のような格好をしているのかと疑問がつきないカズマだったが、一旦それは横に置くことにした。

たぶん、なんか効率が良いんだろう。アイツは効率ばかり求める奴だったよと勝手に納得する。

実際には、道中の雑魚モンスターを狩るために毒煙を使うため、そう言う格好だったので間違えでは無い。

 

「狩りをすると聞いて徒歩で来た。みんな、丸太は持ったか!」

「最初の挨拶がそれってどうなんだ?あと、持ってねぇよ」

「そんな装備で大丈夫か?」

「あっ、終始ネタに走るのな」

 

初期のナナシちゃんと違うのはしょうが無かった。

日々の戦いが彼女を変えてしまったのだ。

今ではただの戦闘民族である。

レベルが上がるのが楽しすぎる感じなんだろう。

 

「ところで、なんなんだその格好は」

「ガスマスクと作業着だよ」

「そうじゃなくて、なんで着てるんだよ」

「雑魚除けには毒ガスが一番、この手に限るんだ」

 

何を馬鹿なことを言ってるんだという感じの態度だったが、逆にお前は何を言ってるんだと思った。

まさか効率を求めるが故に、毒を扱うのは予想外だったからだ。

そんなことをすれば生態系とか諸々にダメージが行くでは無いか。

 

「遺憾の意である」

「えっちゃん、これはコラテラルダメージだ。悪いのは魔王って奴なんだ」

「な、なんだってー!」

「おい、そこの二人。茶番はやめろ」

 

カズマさんが、すごく嫌そうな顔でナナシちゃんを見ていた。

はて、いったいどうしたのだろうか。

 

「俺の予想が外れて欲しいんだが、まさかこの湖が汚れたのはお前の仕業じゃ無いだろうな」

「何を言ってるんだ。確かに、土砂の流入があったりしたが大体は湖に散布した毒のせいだよ」

「そうか、土砂が原因で……いやいやいや、違うそうじゃねぇ!やっぱり、お前が原因かよ!」

「待て、私が来た頃には汚染されていた。汚染されていた物を汚染しても、汚染している事実は変わらない。つまり、私はエンカウント率を向上させただけで、出現条件を満たしたわけじゃ無い!」

「ダメだコイツ、はやくなんとかしなくちゃ。クリエイトウォーター!フリィィィィズ!」

 

カズマさんが初級魔法からのフリーズがナナシちゃんを襲う。

身に纏っていた服が濡れ、冷風によってピキピキ固まっていく。

 

「や、やめろ!私は悪くねぇ!」

「悪いに決まってんだろ!俺の勘が言ってる、俺の邪魔をお前がするってな!」

「環境浄化反対!モンスターを保護せよ!」

「うるせぇ!俺は綺麗にするんだよ!」

 

ダクネスがスゴイ防御力なのにおっぱいは固くないように、ナナシちゃんは筋力のステータスが高いが普通の時は攻撃力は普通である。

この世界の不思議な法則のせいで、ナナシちゃんは抵抗できない。

素の力で氷を砕かないといけないのだ。

 

「殴れさえすれば、ステータスの恩恵でなんとかなるのに」

「当たり前だよな!日常生活で苦労しないんだから、攻撃さえさせなければ問題ないと思ってたんだ!」

「覚えてろぉぉぉぉ!へっくち!」

 

おぉ、ナナシちゃん凍ってしまうとは情けない。


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