この世界では考えられない錬金術を使って何が悪い 作:ネオアームストロング少尉
それと、ヒロインについてですが未定です。これ自体、アニメが進む所までしか書く気はありません。ご要望があれば分かりませんが、一応、その予定です。イチャコラを期待している人には申し訳ありません。
事の顛末を語れば、やはりと言うか、自分が思っていた通りシスティーナが圧勝したようだ。何でも、グレン先生は一文節詠唱が出来ない様で、システィーナのように一節詠唱を使いこなせる者が勝てない訳もなく、文字通り圧勝だったそうだ。
しかし、グレン先生は約束を反故にした挙句、三流の悪役のような捨て台詞を残して去って行ったらしい。それにより、システィーナは完全にキレたと言ってもいいだろう。お陰で、家に帰った時にまた罵声を浴びせられるかもしれないな。
「ただいまー」
自分は錬金術を試すために遅く帰ることが多い。少々被った土を払いながら玄関に上がると、私服のシスティーナがこちらを睨みつけていた。奥ではルミアがこっそりと見ている。
「……アンタ、なんでいなかったのよ」
「いなかった?……ああ、決闘の時か」
理由は特に無いのだが、何かしら言わなければ色々と面倒だろう。そうだな…―強いて言うのなら──
「──見る必要が無かったから、かな?」
「ッ!!」
見なくとも結果は大体予想した通りだったし、結果が分かっているのなら別にみる必要も無いだろう。さて、何と言われるのだろうか。だが、システィーナの反応は自分が思っているのとは違った。俯き、握りこぶしを作って肩を震わせていた。
「……『見る必要が無い』か。そうよね、私じゃあ分かりもしないもの」
「は? 聞こえる声で言ってくれないか?」
しかし、返事は無く、システィーナはただ立ち去っていくだけだった。最近、システィーナの事がよく分からない。いや、このぐらいの年頃ならよくある事なのか? 首を傾げていると、奥から見ていたルミアが目の前に来ていた。その表情は怒っているようで、悲しんでいるようでもあった。
「何であんなこと言ったんですか?」
「あんな事って……別に大した理由は無いよ」
「そんな事を聞いてるんじゃありません!! システィはッ!!」
が、その先は何も言わず、ルミアは一言謝り自室に戻っていった。
「一体、何なんだよ……」
まあ、触らない方がいいだろう。二人とも年頃なんだし。
『──見る必要が無かったから、かな?』
その言葉に私は泣きそうなる。少なくともあの決闘を見れば、兄も少しぐらい認めてくれると思っていた。私と話してくれると思っていた。
昔から兄の背中を追いかけて、お爺様のような魔術師に憧れて。
だけど、兄は私を
一人で何かをして、一人で傷ついて。あの日の事は忘れられない。今思えばあの日から私は兄が嫌いになったのだろう。片足を無くして虚ろな瞳で私を見たあの日から……。
~Ω~
「魔術ってのは何が偉大で何が崇高なんだ?」
グレン先生のその言葉は、システィーナにとって触れてはならない部分に触れる言葉だったのかもしれない。だが、システィーナは気をとり直し、自信を持って言った。
「魔術はこの世界の真理を追究する学問よ」
そのシスティーナの言葉に自分は思う。
魔術とはこの世界の真理を追究する学問。
しかし、どうだろうか?
あの錬金術の真理を見て、自分は恐ろしいと思ったのだ。それが魔術となると、一体どれほどの物なのか想像も付かない。しかし、ただ一つ分かる事がある。それは、真理を見て待っているのは絶望だという事だ。
魔術だろうが、錬金術だろうが、根本的な物を分かっていないのに真理などと言う単語を使う。それがどんなに恐ろしい事か理解していない。
自分もその一人だった。
そのおかげで得られた物もあるが、もしあの事を忘れられると言うのなら、こんな力など捨てるだろう。後悔して、後悔して、後悔してもし足りない。真理を知ると言うのはそういう事だ。
彼も……グレン先生もまたその怖さを知ってるのかもしれない。
「魔術は人を殺すことで進化、発展してきたロクでもない技術だからだ!」
その言葉は全く持って極論だが、実際にそうして発展した国は多数存在する。自分が知っている世界だって、元は人をより効率的に殺すために作られた物が、進化して身近な物へとなっている。それは、この世界の魔術と何ら変わりはないだろう。
しかし、システィーナにとって、魔術とは死んだお爺様の形見に近い物だ。自分もそう思っている。つまり、グレン先生が言った言葉は遠回しに自分たちの祖父をバカにしたのと同義である。自分としても身内をバカにされるのは良い気はしない。
何となく予想はしていたが、案の定乾いた音が響いた。システィーナがグレン先生を叩いたのだ。システィーナはそのまま涙を浮かべて乱暴に教室から出て行った。
まあ、システィーナがあれほどやったから、軽く言うだけでいいだろう。
「先生、余り妹をイジメないで下さいよ」
自分がそう言えばグレン先生は頭をガシガシと掻き「あー、やる気でねーから、本日は自習にするわ」と言って出て行った。自分もグレン先生が出て行くのを確認して席を立つ。流石に放っとくのも気が引けるのだ。
「ルミア、ちょっと探しに行って来る」
「う、うん」
自分も行こうかどうか迷っているルミアを尻目に、自分も教室を出た。
……まあ、結論から言うと見つからなかった。この広い学院を一人で探すのは流石に無理があった。
放課後、グレンはまだ校舎に残っていたルミアと帰るハメになり、嫌々ながらも会話をしながら帰路に着いていた。そんな中、グレンはルミアに一つ聞きたいことがあったのを思い出した。
「そう言えば、あの銀髪の男ってアイツの兄なんだよな?」
「はい、そうですけど? 何か?」
「……いや、兄妹でああも違うのかなってな」
自分を叩いたあの少女の兄は、何か他の者とは異なる達観した物を感じた。あの歳にしては少し、目が据わっている。一体、何を見たらあんな眼をすることが出来るのだろうか。
「そうですか? よく見ると意外と似てる所がありますよ?」
と、ルミアは笑みをこぼす。グレンもそれを聞いて、自分の見間違いだったかも知れないと思い始めるのだった。
~Ω~
ダメ講師グレン、覚醒。
ある日を境にグレン先生は真面目に授業をするようになった。しかも、その授業の質の高さは舌を巻くほどのもので、違うクラスからも生徒が見に来るほどだ。自分としてはもう少しサボっていて欲しかったのだが、現実はそう上手く行かない。しかし、もう手袋はほぼ出来たに等しい。後は編むだけである。
家で編んでいる所をルミアに見られてから、何故か、ルミアも横で編み物をし始めて、システィーナに変態扱いされたのは記憶に新しい。男が編み物をしてるのが、それほど、おかしいだろうか?
「......時間だな、今日はこれまで。あー疲れた」
授業が終わって緩慢した空気が蔓延し始める。グレン先生が黒板消しを持って、おもむろに解説や式を消し始めた。
「あ、先生待って! まだ消さないで下さい。私まだ板書取ってないんです!」
システィーナが手を上げる。それを見てニヤリと意地悪い笑顔をし、腕の残像が見えるぐらいの速さで消し始めた。
「ふはははははッ! もう半分も消えたぞッ! ザマミロ!?」
「子供ですかっ!! アナタは!?」
そんな二人のやり取り見ながら自然と笑みが零れる。何だか、最近になってはシスティーナも機嫌がいいみたいで、自分が遅く帰って来ても小言を言わなくなった。いや、寧ろ、自分は無視されているような気がする。ルミアはともかく、システィーナは前より距離を感じるようになった。
まあ、いつもの事だ。最近に限った話じゃない。
さて、今日は新しく出来た、と言うより、やっと理解できた錬成陣を試す予定だ。まあ、基礎的なものは錬成陣無しでも出来るが、基礎から違うものはやはり錬成陣を必要とする。学院から離れた森の中で、木の棒で地面に錬成陣を書いていく。
そして、マンホールぐらいの大きさで書いた錬成陣に向かって両手を付ける。バリバリッ!! と、稲妻が走り、錬成陣の中心が爆発した。
「げほっ……ちょっと書き損じたかな?」
書いた錬成陣を見ながら、試案する。これが、上手く行かないと次のステップへと進めないのだ。火の錬金術は理解した。しかし、これが爆発となると、また違ってくる。
「焔が出来たから紅蓮も行けると思ったんだが......また最初っから組み直すかな」
理屈は理解できる。だが、手のひらぐらいの小さい錬成陣であの威力の爆発を起こすとなると.......いや、まずこの世界の爆発物について研究してからだな。何が、爆発を引き起こす物質なのか理解しなければ、変質させる時に意味が無いか。
「お前、何をしている?」
その声に振り返れば、そこには第七階梯に至った大陸最高峰の魔術師──セリカ=アルフォネアがいた。まさか、こんな場所で見つかるとは思いもしなかった。やるところは毎日変えているのだが……偶然か?
取り敢えず、動揺を見せないように誤魔化す。
「どうも、アルフォネア教授。私、
と、言いつつ足で錬成陣を消した。そんな行動にセリカは眉を顰めるが、特に確かめるようなことはしなかった。それから、少し世間話をして、自分は早々に立ち去ることにした。ちょっとばかし、大人しくしていたほうがいいかも知れない。
……。
フォルティスが去ったのを見て、セリカは先ほど起きた理解しがたい現象に思考をめぐらす。地面を見るが、殆どかすれていて法陣が見えない。しかし、分かることを纏めると、あり得ないことばかりだ。
「爆発、だと?」
確かに失敗した時、爆発したような感じで法陣が乱れる時はある。しかし、この法陣は触媒無しで、ただ描いただけだ。それが発動し、そして彼曰く
「そもそも、こんな魔法陣見たこと無いぞ……」
まだ微かに分かるところを見ても全く理解出来ない。最初はただ自分なりに魔法陣を作っているのかと思っていた。頭のお堅いヤツらが良くやることだ、とほぼ気にしていなかったが──
──ある日、私は偶然にもその魔法陣を見た。
私は最初は落書きか複写だろうと思っていた。しかし、見たことの無い法陣だったので暇つぶしに調べることにした。が、いくら探しても似たものすら無かった。古代の書物から最新の物まで、全部調べた。
しかし、結局何も分からなかった。
落書きだと、言うには少々出来が良すぎる。現に彼はこうして何かしらの現象を起こして見せた。
「……もしや『異能者』か?」
少し、不気味な感覚を覚えたセリカだった。
全然、進んでないですね。