この世界では考えられない錬金術を使って何が悪い   作:ネオアームストロング少尉

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すみません、大変遅くなりました。



十三話

「アナタ様ならきっと簡単に『アルター・エーテル』を作れる......いえ、もっとスゴイ物を作れる」

 

 その耳元で囁かれる、甘くて、恐ろしい言葉に錬成をしていた手が止まる。それを好機と見たのかエレノアは、甘くて興味を引く言葉を畳み掛ける。

 

「そう、アナタ様の力があればきっと誰にも成し得なかった偉業だって思いのまま......もしかしたら、いえ、きっとアナタ様の()()()()も上回る魔術師として名を残せる」

 

 エレノアは自分の地位を惜しまず使って調べた、フォルティスの情報を以て言葉を並べていく。感情を揺さぶり、冷静な考えが出来なくなった時を狙い、徐々に逃げ道を塞いでいく。

 そして、逃げる選択肢を無くした所で提案をするのだ。

 

「『Project:Revive Life(プロジェクト リヴァイヴ ライフ)』......通称『Re=L(リィエル)計画』。アナタ様が成そうとした事を私たちは成功させてます。十分に私たちに付く価値はあるのでは?」

 

 その計画のことを記憶の奥底から引っ張りだす。

 

 ジーン・コードという遺伝子をもとに肉体を錬成し、アルター・エーテルを代替霊魂として精神情報をアストラル・コードに変換することで疑似的な死者の蘇生を行う術式。

 

 そして、その成功例がリィエル=レイフォードだということは記憶にある。曖昧になった原作の知識を探ってみれば近いうちに会えるだろう。

 

 しかし、しかしだ。

 

 

「それなら、()()しましたよ」

 

 

 今まで黙っていたフォルティスが放った言葉にエレノアは眉を潜めた。

 

「......今、何と?」

 

「アレならもう試して失敗した、と言ったんです。大方、ルーン言語では式の構築が出来ないから、自分の錬金術に目をつけたんでしょうけど......結果としてはただの生きた人形が出来ただけです」

 

 その事実にエレノアは言葉を返さずに黙ってしまう。声がしなくなった所でフォルティスはもう一度、手を合わせた。

 

 パンッ! と手を鳴らす音で我に返ったエレノアは直ぐ様姿を隠す。そして、フォルティスが地面に両手を付けると、それを中心に地面が形を変え無数の鋭い剣山が隆起した。

 

「ッ......これが錬金術だなんて、こうして見ても理解に苦しみます」

 

 皮肉に言った言葉だがフォルティスは何とも無いように制服に付いた土埃を払う。

 

「まあ、アルター・エーテルでは無い上に自分なりに変えた錬金術でやった事なんで別物ですね。それでも、下地は同じですけど」

 

 何とも簡単に説明しているが、それをやってのけてる時点で天才としかいいようがない。いや、寧ろ異常とも言える。

 

 何故、それをしようと思ったのか?

 

 今思えば、彼は異常だ。あの日、彼が錬成をしたモノを見たとき身体が震えた。身体の芯が熱くなった。

 なんて素晴らしいものなんだ、と。

 

 しかし、今になって考えてみればゾッとする。何を思って人体錬成をしたのか。

 

 何より、その考えに行き着くこと自体異常だ。

 

 

 人が死んだ。

 

 それも大切な人が。

 

 恋人が。

 

 親が。

 

 兄弟が。

 

 

 その時、人は何を思う? 

 

 普通なら悲しみや後悔。はたまた、憎しみか怒り。一般的に考えればこう言ったものが上がるのでは無いだろうか。

 だが、彼が思ったのはきっとこうだろう。

 

 

 生き返らせればいい。

 

 

 普通の人間が、普通の感性を持った人が人体錬成などを行うハズがない。冷静さを欠けていたとしても、禁忌だと分かっていたとしても、必ず理性というものが働く。

 だと言うのにフォルティスは確かにこちらを見ていい放った。

 

 

「それに、俺がやろうとしたのは()()()()()()じゃない......()()()()()だ」

 

 

 しかし、目の前にいるこの人間はその道を選んだ。

 

 普通ではない、異常だ。しかし、それが──

 

 

「──ますます、アナタ様が欲しくなりました」

 

 

 エレノアは恍惚とした表情でフォルティスを見る。今、彼女の中にあるのはただ一つ。

 彼を手に入れたい、ということだけだ。

 

 しかし、そのせいなのか......エレノアは一つ大事な事を見落としていた。本来なら最初に気が付くべきだった。

 

 何故、フォルティスが『Re=L(リィエル)計画』を知っていたのかを。

 

 

 

 ~Ω~

 

 

 

 

 

 

『さあて、いよいよ魔術競技祭も大詰め! とうとう本日のメインイベント「決闘戦」の開催ですッ!』

 

 競技場の中央には円形の決闘場が構築され、その周囲に参加メンバーが集まっている。

 

 しかし、本来いるハズの人物がいない。澄まし顔のギイブル、しかめっ面のシスティーナ、そして緊張によって強張っているカッシュ。

 

 システィーナの表情を読み取れば一目瞭然だ。本来ならカッシュではなくフォルティスのハズだった。それが、どういうことか。フォルティスは召集時間になっても来なかったのだ。そこで、白羽の矢が立ったのがカッシュだった。

 

 無論、システィーナが黙っているはずもなかったが競技が始まるので渋々落ち着いた。それでもしかめっ面だが。

 

 システィーナ自身、恥ずかしくて口外できないが......この『決闘戦』を一番に楽しみにしていた。何故なら、兄と一緒に競技に参加できるからである。

 この組み合わせが決まったとき、必死ににやける顔を抑えた。まあ、結局のところルミアにバレバレだったが。

 

 そんなこんなで内心フォルティスに不満が爆発しているなか、嫌な予感と不安が積もっていく。例え、あの変わり者の兄でも決して練習をサボることは無かった。寧ろ、自分とフォルティス自身が出る競技に関しては積極的になっていた。

 

 そこまでしていたのにサボるだろうか.......?

 

 それが、ただ単に寝ていたなどのふざけた理由ならまだ怒りをぶつけるだけでいい。しかし、それがよからぬことに巻き込まれていたら? 

 

 それこそ、グレンとルミアがアルベルトとリィエルに化けて何かを隠そうとしている時点で不安があった。しかし、今は何とも無いことを祈るばかりだ。

 

『さぁ、いよいよ開始です。まず、トーナメント第一回戦! 六組対四組! 両チーム、先鋒選手、前へ──ッ!』

 

 

 

 




短くて申し訳ありません。本当なら今回で『魔術競技祭』を終わらせるつもりでしたが、思ったより時間がなくここまでしか書けませんでした。

また、多少フォルティスのしてきた事が出てきましたが『Re=L計画』はハガレンの人体錬成をした後になります。まあ、またそこら辺などは終盤の方に書く予定であるフォルティスの過去編で書きますので。

そして、すいませんが少々時間を下さい。出来る限り早めに更新するつもりですが、私情があるので二週間ほどか、もし出来たらいつも通り更新していきたいです。

※誤字、脱字報告ありがとうございます。
感想を見て初めて知り、思わず真顔で「ないわー」的なことを口にしました。大変お恥ずかしい上にファンの方々、申し訳ありませんでした。

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