イッセーが腹を貫かれる直後、
『『『『イッセー!』』』』
「(分かってる!)」
誰かは分からんが濃密な殺意。対象はレイちゃんじゃないなら、
「トリーズン・ディスチャージ!!」
ギシャアァァァァァァ!!
自分の中の黒龍が吠える。そして、俺を貫いてるであろう堕天使の光の槍から力を吸収し、
「クソが!貴様、何をした!?」
「俺の中のダーク・リベリオンに力を半減させて槍を砕いた。てか、お前不意打ちするにしても弱過ぎだろ、多分レイちゃんがまだ強いぞ」
響いてきた男の声。こいつが不意打ちの犯人らしい。
「チッ!レイナーレ、退くぞ!!」
「レイちゃん!目を瞑って!!」
レイちゃんが目を瞑ったのを確認すると、
「ダイクロイック・ミラー!!」
眩い光がその場を包み込み、次の瞬間にはイッセーとレイナーレの姿はどこにも無かった。
「クソッ!裏切り者が!」
男の堕天使は一言毒づくと自身もその場を去っていった。
その後、赤い魔法陣が出現し1人の女性が姿を現した。透き通るような赤いロングヘアを靡かせる彼女は先程の凄まじい力の正体を探ろうとここに来たのだが、
(どうやら堕天使が2人に、正体不明の力が…2つ?でもこの力は…敵に回ると厄介ね)
眷属にするのは自分には不可能だろう。この力は両方とも今の自分だと兵士の駒が8つは必要。どうするかと思った矢先、足元にあったある物が目に止まった。
それは1つの生徒手帳。その生徒の名前はーーー兵藤一誠。
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兵藤邸。俺はレイちゃんと状況整理をすることに…と思ったが依頼のことがあったので後回し。俺とレイちゃんは、
「オッPでダイレクト!」
「負けた…」
遊戯王をしていた。まるで意味がわからんぞ!
「イッセー君、前より強くなってない?主に魔術師のデッキに変えてから」
「いや、レイちゃんの堕天使も大概だよ…」
ちなみに俺は【四天の龍搭載型魔術師】でレイちゃんが【準堕天使】である。ちなみに戦績は10戦して五分五分。
「そんな滅茶苦茶な構築でよくここまで回るわね…。そのドラゴン共強すぎよ」
ドラゴン共というのは各召喚方法の頂点に立つと言われる四龍の事だろう。
ペンデュラムデッキのメインエンジンことオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。
絶対2500通すマンことダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン。
対効果モンスター用リーサルウェポンことクリアウィング・シンクロ・ドラゴン。
特殊召喚メタの一つの完成形ことスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン。
俺のデッキにはこの四体が全部入ってる。どころか、
俺自身に取り憑いている。
「それにしても、そんな事が。つまり、あの時黒装束を殺した龍って」
「スターヴ・ヴェノムだな、疑いの余地なく」
十年前、朱璃さん、朱ちゃん、レイちゃんが黒装束に襲われた時、俺は母親譲りの直感で彼女達の危機を察知。赤龍帝の篭手で立ち向かったが、返り討ちにあう。そして、精神世界でそれは起こった。
『お前、ドライグ?』
俺の精神世界に現れたのは所謂ゴスロリの少女だった。当時の俺から見ると少し年上に見えたその娘は4体の小さなドラゴンを抱えていた。
『確かに俺は赤龍帝だけど、もう俺は死ぬかもよ?何か用?』
『この子達、お願いしたい。代わりにお前、生き返らせる』
そいつは俺に4体を託すと不思議な力で俺の体を治した。起き上がって戦おうとした矢先だった。
『また返り討ちにあうのがオチだぞ?』
4体のドラゴンの内の1体、紫色の体躯のドラゴンが俺に話しかけた。というか俺の元に来た瞬間、ドラゴンは俺の身の丈の倍以上の大きさになっていた。どういう…ことだ…!?
『いくら赤龍帝の篭手とは言ってもお前はまだ子供。力量的にアレを倒そうものなら禁手を使わないと無理だ。そして、お前はまだそこまで至っていない。違うか?』
図星だった。確かに俺は当時禁手まで至ってなかった。ならどうすれば良いのか。このまま黙って友達が殺されるのを黙って見ていろとでも言うのか。
『違う。お前は俺に身体を貸してくれるだけでいい。お前に代わり、俺がアイツを倒してやる』
『…信じていいんだな?』
『相棒、コイツらの力の事なら信じろ。俺が保証してやる』
不意に俺の相棒のドライグの声が響く。
『…分かった。よくわからないがやり過ぎるなよ?』
『善処はする』
そして、あの時の惨劇が起こった。あの時、他のドラゴンに身体を貸していればと思ったが、残念ながら他の三龍は戦える状態ではなかったらしい。(後から聞いた話だが)
ちなみに俺が遊戯王のカードを見ていてコイツらと瓜二つのドラゴンが出てきた時は開いた口が塞がらなかった。
「レイちゃん、それじゃあ俺は依頼を片付けてくるから留守番頼んでいい?」
今俺の両親はここにはいない。父親は物心つく前に死去、母親は別世界で仕事中。…今考えたら俺の家庭ってどうなってんの?
「え!?う、うん…///」
そして、何でレイちゃんは顔を真っ赤にしてんの?
『『『『『天然タラシが』』』』』
コイツらが言ってる意味が分からなかった。
「じ、じゃあ、行ってらっしゃい、イッセー君」
「おう、行ってくる」
そう言って俺は家を出た。それから少しして
(今の私、まるでイッセー君の奥さんみたい…///)
レイナーレは嬉しさのあまり悶えていた。それと同時に覚悟を決めた。アザゼル様には悪いけど、彼らの暴走を止めるにはもうこれしかない。
私は今から、堕天使の陣営から抜ける。
そう固く心に誓ったのだった。
ゴスロリの少女…一体誰ーフィスなんだ…。