第17話 白麗の力と「
『起きてるか?兵藤一誠?』
誰だ?そう思って目を覚ますと、そこは真っ白な空間。そして、
自分と瓜二つの少年が目の前にいた。いや、瓜二つと言っても、特徴が少し違う。自分の方は茶髪であるのに対して、向こうは銀髪。
なあ、どう思うよお前ら?
『無駄だ、兵藤一誠。ここは、お前の精神世界の最奥部。覇王龍も天龍も、あの蛇もここには入ってこれない』
お前は何者だ?俺は、白い俺ー仮に白一誠に問いかける。
『俺の名は「白麗一誠」。お前の中の、「白麗の血」の力が具現化したものだ』
ふむなるほど、大体分かった。博麗がなんで白麗なのかは置いておくとしよう。
「それって裏を返せば、お前、仮に白って呼ぶけど、白は覇王龍の力を抑え込んでいる力ってことでいいのか?」
『そういうことだ。大体半々の力がお前の中でせめぎ合っていると思ってくれればいい』
なるほど、それなら今まで暴走が起きなかったのも納得が行く。幻想郷の異変を解決する際、俺は覇王龍の力の片鱗を幾度となく使っている。それにも関わらず、暴走しないのはどういう事なのかと思ってはいた。
『挨拶はこの辺で本題に入る。兵藤一誠、お前は目が覚めると白麗の沢と呼ばれる場所に飛ぶ。その時にコイツが役に立つ筈だ』
白が何かを俺に投げ渡す。それは、青い独特の形を取り、中心に赤い宝石が埋め込まれたような紋章だった。てかこれは、
「バリアンの紋章?」
『元の世界で「オーバーハンドレッド・ナンバーズ」と呼ばれていた力の結晶だ。お前の記憶を元に作らせてもらった。カオスにもなれるから安心しろ』
なんか、ドンサウザンドの呪いとかかかってそうで怖いんですけど…。
『覇王龍を制御してる奴が何を言うか』
「お前が覇王龍制御してるんだろ!?」
『大丈夫、その為に修行するから』
まさか、
「俺は白麗の沢と呼ばれる場所でZ-ARCを制御する修行をすると?」
『分かるだろ?その修行を何故行うのか。あの時はあの5人が居たから』
俺は答えることが出来なかった。確かに、あのままライザーを延々と攻撃していたらZ-ARCの本能で冥界が滅びてたかもしれない。
「で、修行内容は?」
『お前の
…。
はい?
「待て、既に俺は2つの能力持ち…」
『そもそもお前の「絆」の能力は本来の能力のお零れに過ぎない。そして、ドラゴンを従える能力もまた然り』
呼ぶ方はドライグが宿った時点で発動した言わば「体質」だけどなと付け加える白。
なるほど、つまりどういうことだ!?
『いい加減気づけよ、目の前にいるだろ』
まさか、いや俺の推測が間違ってる可能性も…
『ああ、合ってるぜ。お前の本来の能力、それは…』
ーーー言霊を現に変える能力、通称「言霊術」。
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次の日、何かしらの重みを感じて目を覚ますと、
「何してんの黒歌、オーフィス」
猫状態の黒歌とオーフィスが俺の上で眠っていた。
「にゃー、何だか心地よいオーラがイッセーから感じ取れたからつい…」
オーフィスも右に同じと言わんばかりに首を振る。
「心地よいオーラ…、白麗の力と関係が?」
『どこでその名前を知ったのかしら?』
ゾクリ…
いつの間にか傍らに紫お姉ちゃんが居た。
「紫お姉ちゃん、もしかして白麗って言葉知ってるの?てか、文字が違うって分かるの?」
「ええ、勿論。でも、予想以上に面倒な事になったわね…」
「どゆこと?」
「白麗の力…それは博麗一族の力の根源に当たるもの、そして、歴代でその力を振るえたのは」
後の初代博麗の巫女「白麗靈夢」ただ一人よ…。
そして、紫お姉ちゃんが突然消えて、次の瞬間その床が抉り取られる。
「神無、落ち着いて」
「紫?あんた私に嘘を教えたの?」
「嘘を教えるなんてとんでもない。私もさっき実感したのよ?」
俺が母さんを抑えてるうちに紫お姉ちゃんが詳細を教えてくれた。
そもそも幻想郷の守護者たる博麗一族の血筋は今から500年以上前に現れた当時最強の人間「白麗靈夢」に連なる血筋。そして、博麗一族の人間の能力は進化する傾向がある。母さんは例外中の例外で能力が進化するよりも体術が進化した。
それが顕著に現れるのが「夢想転生」、博麗一族の奥義にして守護者となりうる者の真の力を解放する。霊夢ならば発動中攻撃が全く当たらなくなり、母さんに至っては体術と組み合わせて接近戦闘最強の奥義「極拳『無想天拳』」を使える。
そして、白麗の力とはそれらを遥かに凌駕した博麗一族の根源の力。妖怪である黒歌が突然心地よいオーラを感じたのはこの所為らしい。ちなみに、黒歌は俺には滅多に近づかない。本人曰く、「何だかごっちゃになってて近づき難い」。
そして、それを使っていた白麗靈夢の持っていた能力。それこそが、
「言霊を現に変える能力…正確には、自らを媒体にした言葉を現実化する能力」
そして次の瞬間、
ブツリ
「「え?」」
俺の中で何かが無くなる音がした。てか、
「「俺が2人!?」」
「ごめんなさいね、イッセー。あなたの存在を2つに分けたわ。赤龍帝と覇王龍を宿す『肉体』、白麗の力を宿す『魂』にね。魂の方に主人格は入ってるはずよ。いいわね?魂のイッセー、貴方にはこれから京都に向かってもらいます」
「1ついいか?もしかして、肉体に残ってる人格って…」
「元五重人格が何を言ってるのかしら?」
だろうなと俺は納得した。恐らく、あの肉体には四天の龍の人格が宿ってる。絶対に主導権争い起こるなこれ。
「紫、京都に何があるのかしら?」
紫お姉ちゃんが思い口を開いて、爆弾を投下した。
「京都のとある山中の奥地に普通の人間、霊力と神力を宿していないと入れない湖があるわ。その湖の名前こそ…」
白麗の沢。私が靈夢を弔った場所にして、博麗一族の聖地。そして、あなたが修行を終わらせた暁には、兵藤一誠、あなたが本当の意味で幻想郷最強の存在になるわ。それこそ私や優香、幽々子といった幻想郷の古参勢ですら勝てない存在にね。
紫お姉ちゃんがそこまで言ったのに疑問を覚えた。幻想郷最強の存在になってどうなるのだと。
「いづれ分かる時が来るわ…」
訳も分からないまま、俺(魂サイド)は京都にスキマ送りにされた。
・現在の一誠の状態
白麗の力を宿す「魂」とそれ以外の力を宿す「肉体」に分離させられる。魂の方は京都で修行するハメに。ちなみに、擬似的な肉体を作ってはいる。
・今後のストーリー
エクスカリバー序盤は飛ばす。それまでは魂サイドの修行がメイン。原作合流はコカビエル戦直前予定。
・極拳「無双天拳」
兵藤神無が博麗神無を名乗っている時に発動可能な神無専用の奥義。自らの肉体を「気」でコーティングしてしばらく(文字通り)無敵になる。更に、攻撃スピードが上昇して拳を100発/秒で叩き込める。
・白麗靈夢
初代博麗の巫女にして博麗一族のルーツ。能力は自分の発した言葉、書いた文字などを顕現させる(例:彼女が必勝と言ったら本当に必勝になる)、捉えようによってはチートオブチート。
・紫の嘘
神無が一誠が生まれた時に「この子に博麗の力はあるのか」を尋ねたが、この頃は発現すらしていなかったので、紫は当時無いと答えている。