血族のバスケ   作:夢サクラ

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思いつきで書いたものです


プロローグ

ダムッ。キュッ。

 

小気味のいい音が体育館から聞こえてくる。中を見ると、男子高校生達が汗を流しながら、バスケの練習をしていた。

ここは神闇(しんあん)高校。長野県にある今年創設された新設校で、彼らは、神闇高校にてバスケ部を結成したときの最初の部員だ。パスやドリブル、シュートや連携、速攻などといったバスケの基礎技術から、走り込みや筋トレなどの肉体を鍛える練習までみっちり行っており、かなり体力を消耗していた。

 

「よし、一度休憩だ」

 

200cmほどの長身を持つ主将の少年の言葉で、部員達は練習の手を止める。それから、体育館の端に置いてあるタオルやドリンクを取りに向かう。その様子を一瞥してから、主将は自身のタオルやドリンクが置かれている場所に向かう。

 

 

彼の名は空山(そらやま)(じん)。ポジションはPFであり、部員達の合意で主将になった。

 

「とりあえず、結構いい感じじゃねえか?」

 

「思いの外あっさりここまで来たし、バスケも案外簡単だな」

 

「馬鹿野郎。()()()()をぶっ潰す気なら、いくらやっても足りねえよ」

 

部員達の軽口を空山はたしなめる。空山の言葉を聞いて、部員達は目を細める。

 

 

去年は絶対王者帝光(ていこう)中学校が三連覇を達成した年だ。帝光中には『キセキの世代』と呼ばれる五人の天才がおり、彼らは圧倒的な力で三連覇を成し遂げ、バスケ界はもちろん外部からも注目を集めた。プロバスケットボールプレイヤー達は彼らに大きな期待を寄せる一方で、自分達も食われるのではないかという恐怖心も抱いている。また日本のバスケ界が有名になることを期待している声もある。

だが、その一方で、彼らは数多くの犠牲も生み出した。あまりに圧倒的な力を有するが故に、真摯にバスケをやることをせず、対戦相手の精神をことごとくへし折ったのだ。そのため、彼らを恨んでいる者も多い。

 

 

空木達もその口だ。キセキの世代を倒す。彼らはそのために新設校にバスケ部を創り、日々練習を積んでいる。

 

 

ちなみに新設校に行った理由は四つある。一つ目は強豪校などに行くと、熾烈なレギュラー争いがあり、今までバスケをしたことがない自分達がそれに打ち勝てるとはとても思えないこと。二つ目は仮にごく一部が打ち勝てても、全員が試合に出なければ何の意味もないこと。そして、三つ目が神闇高校は彼らの親族が経営している学校のため、ある程度自由がきくこと。在籍している生徒達もよく知った者たちのみのため、下手な邪魔が入ることもおそらくない。弱小校に行くことも考えたが、やはりこちらの方が圧倒的に自由がきく。そして何よりも大事な四つ目は、これは()()だということだ。それを行うのならば、神闇(ここ)でなくてはならない。

 

「まあ、()からのご命令だ。俺たちに逆らったことがどういうことを意味するかあいつらに思い知らせてやろうぜ」

 

空山はニヤリと笑った。その手にはインターハイのトーナメント表が握られていた。彼らの一回戦の相手は東京三大王者の一つ泉真館(せんしんかん)。だが、泉真館には興味がなかった。ここにはキセキの世代を擁する四つの高校がある。それを潰すことだけしか、彼らの頭にはなかった。


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