男性転生者だらけのインフィニット・ストラトス   作:鋳型鉄男

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今回も視点変更が多いです。同じ視点でもう少し長く書くようするべきでしょうか?
誰の視点かは分かるよう工夫しているつもりですが、分かりづらい場合はご指摘いただけると幸いです。


クラス代表戦当日 / vs Thunderbolt

「リチャード」

「なんだデリック。作戦の確認ならもう十分したぞ。予想外は無かっただろう」

 

 第三アリーナBピット。大きく装甲を切り裂かれたレイモンド機が整備に送られるのを横目に眺めていると、少し遠くを見ているようなデリックに話しかけられる。

 作戦は事前に原作の白式を基準に建てた対近接格闘型のもので十分だろうという結論をさっき出したばかりだ。

 俺のIS、『サンダーボルト』は中距離射撃型で武装の取り回しが悪いものが多い。従ってそもそも敵機を懐に入れない戦術とそのための訓練を繰り返してきており、たとえ一撃必殺があろうと勝利する事が出来ると考えている。その上で何の用だろうか。

 

「いや、雑談だ。お前は物語の主人公とは何だと思う?」

「さっきの逆転劇だな」

 

 先ほどの試合、白式対ユートピアの決着の瞬間。策に掛かり追い詰められた織斑は最後の一撃の瞬間にファーストシフトを完了させ(真の力に目覚め)、新たに手に入れた必殺技により劇的な勝利を納めた。

 

「隠された真の力、土壇場でそれを発揮できる運の良さ、勝負強さ。流石は織斑一夏(原作主人公)といった様だった。お前はどうだ」

「…哲学は苦手だ。難しい事を考えてどうなる。ただ、宣言するなら、奴に譲るつもりのモノは無いし、俺が資格を備えていない理由は無い」

 

 主人公など作品によりけりで良いだろう。その世界で一番強い奴、一番才能がある奴、一番努力する奴、血筋が良い奴、運がいい奴、モテる奴。ちなみに俺は強い奴兼モテる奴希望だ。血筋も悪くないと自負しているし、使命もある。

 

「そういうデリックはどうなんだ?お前は前衛に出たがらないが、頭脳派キャラ気取りか?」

「リアルで言う中心人物なんてものに良い記憶が無い。織斑に回させてもロクな事が起きないのが分かり切っているならば、別の人間に役割を振る。リスクを避ける為に頭を使っただけだ」

 

 …回りくどい。この一週間で悪い奴でないことは分かっているし、俺のサポートを積極的にする所は有難いと思うが、この堅苦しさと妙な考え方は改善するべきだろう。

 

「オーッス大将と司令官殿。織斑にも勝てそうかい?」

「クルスか。その呼び方は止めろって言っただろ。で、なんだ。今更応援に来たのかよ」

「ピリピリしてんねー。気ぃ抜かないと噛ませになりますよーっと」

「ハァ。噛ませ云々は置いておくとして、何の用だ?何か情報でも持ってきたか?」

「いや応援しに来ただけ。白式も一瞬過ぎて何か違うのか分かんなかったし」

「テンション高いだけの役立たず枠認定が必要か」

「ひでぇな。せめてマスコット枠で頼むよ~。訓練だってちょっとは手伝ったろ?」

 

 面倒くさい枠その2が現れやがった。まぁ試合前で緊張していたのは事実だ。軽いノリで話せるこいつで緊張を解しておくのもいいだろう。

 

 

 そうして10分と少し後、織斑の準備完了の連絡を受けて再びアリーナへと飛び出した。

 

 

 

 

  ◇vs サンダーボルト(リチャード) / IS戦って弾幕ゲームの略?

 

『フン。逃げずに来たようだな』

『何言ってんだ?当然だろ』

『なら最後のチャンスだ。俺が一方的に勝利するのは自明。だからボロボロの無残な姿を晒したくなければ、今ここでリタイアすれば素直に俺の下に付く事を許してやる』

『そういうのはチャンスとは言わないな』

『そうか。残念だ。なら――――お別れだ!』

 

 傍から見ていて思うが、あいつ(リチャード)は原作セシリアっぽい事をしないと気が済まないんだろうか。あの筋肉でツンデレ芸とか怖気しかしないのでやめて欲しい。

 開戦の狼煙が7砲身ガトリング砲で上げられたのを客席から眺めながら考える。第三アリーナの客席はおおよそ埋まっており、俺達男性操縦者への興味が如何ほどか覗えようと言ったところか。

 

「前に聞いたスレイマン予測だとこの勝負は織斑君の勝ちだったけど、それは今も変化なし?」

「変化無し。さっき見せた勝負強さとリチャードへの専用対策が大きい。…というかスレイマン予測って専門用語みたいにしないでください」

「あら、リチャード君が初戦で見せた意外と技巧派な所を見ても変わらない?」

「……リチャードはまだ慢心がある。初戦で勝ったのが逆に響いてくるでしょう」

「辛辣だね。私怨とかありそうで記事にし甲斐が…」

「クラスの情報、部に流すの辞めますね」

「冗談だって。折角新聞部に入ってくれたんだから、まだまだお願いね」

 

 隣席に陣取っていた黛先輩に微妙に拝まれている様だが無視して試合を見る。

織斑は剣道部と行っていた専用対策訓練の成果か、未だ近づけてこそいないが目立った被弾はしていない。対するリチャードも上手く織斑の上を抑えながら二基のガトリング砲を操り、織斑に近づく隙を与えない。

 

『いくら一撃必殺の切り札があろうと、それだけで勝てると思うなよ!』

『へっ、そういうのは白式に直撃を当ててから言えよ!』

『フンッ。いつまでも避けていられると思っているなら間違いだと教えてやる!』

『ぐあっ!いつの間にミサイルが…』

 

 サンダーボルトのガトリング砲は常にどちらかが白式を捉えており、先程のように火線から逃れたと思っても、意識外の方向から迂回して飛んでくるミサイルが織斑に自由な機動を許さない。

 本当に見た目(筋肉ダルマ)に沿わない堅実な戦術を選んでいる。初戦のレイモンドは善戦したが、弾幕を強引に突破できる速度、突破したとしてそのまま倒し切る火力が無い事もあり、回避に始終するしかなくそのまま削り倒されていた。

 堅牢な要塞じみた戦闘スタイル。無論弱点はある。織斑がそれにいつ気付くか。そして気づいた時が勝負の決まり処だろう。試合の佳境はすぐに来ると予想する。そして

 

 

 

 後ろの座席から目元に向け伸びていた手を受け止める。

 

「だーれ…あれ?バレちゃってた?気配消してたのになー」

「後ろの聞こえる女子の声が少なくなった事、聞こえた呟きの中にニコライの名前があったことから予想しましたが、やっぱりあなたでしたか。生徒会長、更識楯無先輩」

 

 面倒な立ち位置確定の瞬間である。

 

 

 

 

(……白式の癖もリチャードの癖も分かってきた。後は突撃する隙を見つける…いや、作り出すだけだ)

 

 レイモンドさんと戦った時より激しい、戦場とはまさにこれだと言わんばかりの弾幕を潜り抜ける事8分、大ダメージこそ受けていないがこちらも逃げてばかりという状況が続いていた。

 

(弾幕の間を縫ってくるミサイルをどうするか。それが問題だ)

 

 この長い回避の間でガトリングの弾幕が途切れる瞬間、つまり突撃のチャンスが無かったわけではない。機動に緩急のフェイント(のつもり)を混ぜると、上手く射線を開くことも出来る。

だが、その隙をミサイルで上手く潰してくる。一番上手く行ったアプローチを避けられた時、避けたリチャードの死角からミサイルが飛んで来たのは冗談かと思った。

 

(剣道部部長の予想通りに射撃の時に足が止まってる。照準も動いていれば追いついてこない。後はミサイルのタイミングを見切るだけ)

 

 っと油断していると移動先に射線を置かれていたりするのでそれにも注意が必要だ。今も後ろから追ってくる火線とミサイルで誘導した先に弾幕が降ってきたところだ。

 

『チッ勘が良いのかよく見てるのか。直撃だけは避けられてるのが気に食わねぇな!』

「それを最低目標に訓練したからな!だが今に見てろよ。高い所で棒立ちしてるのを叩き切ってやる!」

『ミサイルにビビッて尻込みしている分際で良く吠える!ならまた突っ込んで来てみろ。ガトリング十四兄弟と番犬ミサ公が歓迎パーティーしたくて待ちぼうけてるぞ?早く来いよヒョロヒョロ!』

「そのヒョロヒョロって呼ぶのやめろ筋肉!ちょっと寄越せ!正直羨ましい!」

『ここで負けたら部下として訓練を課してやらんでもない!』

「じゃぁ奪い取ってやるよ!」

 

 口論に意識が逸れたか、ガトリング砲の射線がどちらも外れた瞬間を捉えて急加速する。ミサイルもさっきの一発以降発射されていないのはハイパーセンサーで確認してあるから、絶好のタイミングはここだと確信しての行動である。

 引き伸ばされた時間、ガトリング砲の砲口が此方に向きつつあるが、それよりもこちらが早い。

 ユートピアのように特殊兵装の展開も無い。今度こそ獲る!

 

「ぜああああああああ!」

『何っ』

 

 下段からの切り上げでガトリング砲の一つを切り裂く。

 

「貰ったああああああああああ!!!」

 

 上段からの唐竹割りが肩部装甲に入り、大きな手応えが返った。今試合初にして本日最大級のダメージが通る。このまま連続攻撃で削り切って…

 

『ぐうぅ!思ったよりヤバいなその剣!だがあと三歩足りなかった!!!』

 

 ガシリと雪片を持つ腕を掴まれる。ヤバい、振り解けない……なんて腕力してるんだこのIS!?

 

『お帰り下さいませお客様ぁ!追い銭もくれてやるよ!』

「態度悪いホストだな!またお邪魔してやる!」

 

 そのまま力任せに放り投げられ、再びガトリング砲の弾幕が張られる。

 だが密度は先ほどの半分。埋め合わせるようにミサイルの頻度が増したが、攻撃に集中したのかリチャードの棒立ち度は上がっている。

 お互いシールドエネルギーは三分の一と少し、物理ダメージレベルは小破。次のアプローチに失敗したら多分集中力が切れる。が、成功さえすれば雪片の一太刀で勝てる。

 

――決着は近い。

もう一度、パーティー会場に向かうタイミングを探そう。

 

 

 

 

『どうしたどうした!さっきからフラフラ飛んでもう限界かぁ?それともこのショットガンで腰が抜けたか?』

『緩急を付けた高度なフェイントだよ!そっちだって全然ガトリングが追いついてないじゃねぇか!というかこっちは雪片一本なのにそっちは銃沢山持てて正直羨ましいなこの野郎!』

『一撃必殺なんてチートみたいな事してる奴がよく言う!』

 

 隣で織斑先生が目を覆っている。段々ヒートアップしてきた口論(小学生レベル)に後でどんな説教をくれてやろうか考えているんだろう。

 Aピット内の空気はもうあの二人試合してるつもりあるんだろうかって感じだ。

 

「一夏の奴、というか二人とも完全に集中力切れてんなーこれ。ISの試合ってあんな感じなんですか?」

「え?そ……そんなことないですよ?普通はもっと緊張感のある、スポーツマンシップに則った正々堂々とした…でもああいうのも男の子の青春って感じがしていいですね!」

「山田先生の言う通…いや待て、最後は別の話だ。それは置いておいてだ。織斑とリチャードは後で説教だな。幸島も聞くか?ISの試合がどのようなものかよく語って聞かせてやるぞ」

「うげ藪蛇。遠慮させていただきます」

 

 巻き込まれるところだったので適当に回避する。下手すると数日の間寮から出られなくなると噂の説教なんて受けたくもない。

 

「でも二人ともチャンスの奪いあいはしてますし?お説教は程々にしてあげてくださいね?」

「ハァ。今回はお前の顔に免じて1時間で済ませてやる。後でそちらからも注意しておくように」

「分かりました。織斑君との反省会でよく言って聞かせます?」

「まったく一夏の奴、安い挑発で集中を切らせて。情けないぞ!」

「とは一夏をヒョロヒョロ呼ばわりされてブチ切れかけてたお嬢さんのコメンいっでぇええ!ちょっと弄っただげじゃぁねぇかスンマセンもうぶたないで」

「フン。揚げ足を取るような事を言うからだ北条。次からは気を付けろ」

 

 ピット内の空気もかなり弛緩してしまった。俺のせいじゃねぇよな?俺は悪くねぇ!

 剣道女子達は一夏がアプローチに入ろうとするたび黄色い声を憚らずにあげ始めたし、北条南路+マリアーノは試合後の事を話し始めている。先生方はまだ試合を見ているが、織斑先生のコメントが一夏に偏っている。

 

『だあああまた投げられた!その機体射撃型じゃ無いのかよ!』

『近接一本のその機体にはない汎用性羨ましかろう!というかいい加減お前も落ちろ!弾薬の底が見えてきたじゃねぇか!』

『そっちこそ大人しく斬られろ!連戦でいい加減疲れてるんだよ!』

 

 そして選手たちは本当に俺より年上なのだろうか。※中身(前世)は考慮しないものとする。もう小学生の殴り合いの喧嘩を眺めてる気分になって来た俺を悪く言う奴は居ないはずだ。

 原作一夏も折角分析した相手の弱点をペラペラしゃべる程度にお喋りだったが、相手が男だと遠慮が本当になくなるらしい。苛立ちを隠そうともせず口に出している。

 …あ、観客席で何人か席立ってるのが見えた。そりゃそうか。いくら珍しい男子対男子のIS戦でも口げんかに始終しだしたら見る意味無いわな。俺が向こうの立場でも帰る。

 

『あ、弾切れが近いって教えてくれてありがとよ!このまま逃げてりゃ一撃必殺狙える俺が有利になるって分かったぜ!ほらほら撃たないと当たらないぞ!』

『そういうお前もシールドエネルギー残り僅かで何回必殺技を発動できるんだ?自滅したいんだったら待っててやるよ!』

『『ぐぬぬぬぬぬぬ』』

 

 もうあの二人仲いいなで締めて良いんじゃなかろうか。マジで。

 

『ええいままよ!これで決めてやる!』

『覚悟を決めたか猪武者!当方に迎撃の用意ありだ!来やがれ!』

 

 いい加減口論にも飽きたのか、一夏がガトリングの火線に沿うように突撃、リチャードは取り回しの悪いガトリングを量子格納しつつ拳を構え、反対の手でショットガンを放つ。ここでサラッと背面のランチャーから上にミサイルを放つ準備を整える当たり何か策を考えているんだろう。

 

 一夏が散弾を躱し逆袈裟狩り、掠めるに留まる。

 

 リチャードが拳での反撃に移り顔面にストレート。逆に小手を狩られる。

 

 ショットガンを投棄し白式を掴みにかかる。宙返りした白式に避けられる。

 

 白式がそのままムーンサルトのように背面に回り……あっ

 

 

 

気付かずに背面のミサイルを切り付けて起爆させた。両機ノックアウト。

――爆発オチなんてサイテー!

 

 

 

 

「さて、お説教はこれで終わりだ。最後に罰としてさっきの試合についてのレポート10枚、今週の金曜18時までに私に提出するように。形式は各自先輩に聞け。良いな」

「「ハイ」」

「よろしい。間に合わなかった場合はその夜の内に仕上げさせるから、私の手間を増やすな。では二人とも下がって良い。今日は十分に休め」

 

 溜め息を吐く不景気な二人が第三アリーナの事務室から出てきた。疲れている上に硬い床に正座させられていた為か足が小鹿のように震えている。お互いに“お前のせいでこうなったんだぞチクショウ”と言わんばかりの目で睨み合っているあたりかなり打ち解けたようだ。

 

「二人ともお疲れ様。お説教は効いたみたいだね」

「あれ、レイモンドさん?何でここに?」

「出たな決闘者(デュエリスト)。何か用かよ?」

「白旗君に言われてね。折角だから今日戦ったこの三人で一緒にご飯を食べないか誘いに来たんだ。聞きたい事とか言いたいこともあるだろうしね」

 

 二人ともキョトンとした表情になった。機体の相性はともかく、かなり息が合うのではなかろうか。

 

「あの、俺はこの後訓練に付き合ってくれた皆と一緒にご飯に行く予定だったんですけど」

「俺もだな……ってメール?ちょっと失礼するぜ…うわ、既に根回し済みかよ」

 

 白旗君曰く凄い胡散臭いと評判の笑顔で二人の予定を確定する。因みに根回しに行ってくれたのは白旗君で、協力者組は協力者組でネタばらしの会を行うそうだ。上手く行った策や嵌められた策、行った訓練を対戦相手の協力者と確認しあい、各候補者の反省会に活かす事を目的とするとかなんとか()()()()()事を言っていた。

 対戦者の方は三人で親睦を深めて変にクラスが割れない様仲良くなっておいてください、だそうだ。積極的平和主義の亜種とは彼の自称だが言い得て妙だと思う。

 

「こっちもだ。……えっと、よろしくお願いします?」

「畏まらなくて良いよ。私も君達とは対等な友達でありたいからね。それじゃぁ織斑君、リチャード君。食堂に行こうか」

「まぁ良いか。折角だからあの機体(ユートピア)について聞かせてくれよ。正直興味はあるし」

 

 

男子移動中……

 

 

「それじゃ、レイモンドさんはもういくつか論文を出してるって事?」

「そうだよ。と言ってもISの研究自体始まってまだ何年といった所だから、あまり高度な論文じゃなくても通る事があってね。私はそれでうまく潜り抜けた形だよ」

「いや、あの変身ギミック(エクシーズチェンジ)って絶対高度な技術だろ。あれを実現できるとは普通考えないって」

「(ドヤァ)……高度な技術と言えば織斑君の剣もそうだろう。一体どうやって千冬さんと同じ能力に目覚めたのか興味は尽きないよ」

 

 さて食事会。実は白旗君ってヤバい子なんじゃないかと思うくらい根回しが通り、新聞部どころか他の女子生徒すら聞き耳以上の事をしてこない、こちらとしては話しやすい環境で和やかに今日のクラス代表候補戦について話していた。

 主な内容は各自の作戦について、ユートピアについて、雪片について、そして

 

「うぅぅ…レポートなんてどうやって書けばいいんだ……しかも十枚って千冬姉もっと加減してくれよ」

「やめろ織斑現実を思い出させるな!」

 

 課せられた課題についてだ。まだ中学から上がって来たばかり、精々理科の実験のまとめや読書感想文位しかしてこなかったであろう織斑君はもちろん、前世がどうだったか分からないが、少なくとも十数年はレポートなんて書いていなかったリチャード君にもキツイこれらは、威圧感を放つ障害として彼らの前に立ち塞がるらしい。

 

「まぁまぁ。試験段階システムの初稼働が成功した私なんて、レポートどころか週明けまでに論文だから君たちはまだマシだよ。それに訓練に付き合ってもらった先輩も居たじゃないか。彼女らに聞いてみたらどうだい?」

「断言する。ダリル先輩は絶対手伝わない。織斑、当てにさせて貰うぞ」

「優しくない先輩なのか?」

「面倒くさがりな先輩だ。俺が受けた訓練もほぼ手抜きだった。今考えるとあれで良く動けるようになったもんだ」

「大変だな。剣道部部長にリチャードの分も手を貸してもらえるか後で聞いとく」

「サンクス。金曜の夜はぐっすり眠りたいぜ」

 

 二人が拳をぶつけ合う。仲良き事は素晴らしきかな、今後どちらに味方したかでクラスが割れる事は無さそうだ。遠くから腐のオーラを感じた気がするがスルー安定だ。

 

「手が空けば手伝ってあげるから、詰まったときに私の部屋を訪ねると良い。狡い大人のやり方を伝授しよう」

「「お願いします!」」

 

 この後は適度に現実逃避しつつ食事と雑談を楽しんだ。原作では女子相手にデリカシーが無いと散々だった織斑君だが男同士でそのような話題になる事も無く、脳筋に見えるが地頭のいいリチャード君はこちらの専門的な話にも一定の理解を示して、場合によっては織斑君に対して分かりやすく翻訳してあげる場面も見られかなり親交を深める事が出来たと思う。

 ――そして最後、それぞれの訓練組との待ち合わせ場所に向かう二人に、白旗君に頼まれていた質問を投げかける。

 

「そうだ。最後に君たちの指導をしてくれた先輩たちに今後もお世話になるかどうか聞いても良いかい?」

「剣道部の皆って事ですよね?だったら今後もちょくちょくお世話になるつもりですけど…」

「ダリル先輩とフォルテ先輩はなー。付き合ってくれるかどうか。でも国から俺に指導するよう指示出てるみたいだし、()()()()()なんだかんだでお世話になるんじゃないか?」

「……分かった。変な質問してごめんね。私のライバルたちは今後どんな訓練をするか気になって。それじゃ、また明日」

 

 さて、この情報で白旗君はどう動くのかな?

 




サンダーボルトのモチーフは某魔王の遺伝子を継ぐ航空支援戦闘機ですが、あくまでモチーフなので深く突っ込まないでいただけると幸いです。
次話は前から言ってた通り人物紹介になる予定。

以上。感想・誤字脱字報告・ご意見・助言お待ちしております。
リアルの都合と作者の力量の為、更新はまた気長にお待ちください。

5/24 誤字修正

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