男性転生者だらけのインフィニット・ストラトス   作:鋳型鉄男

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初投稿です。地雷要素しかありませんが読みたくなったので無茶します。
人物の書き分けに自信が無いので感想の際にアドバイスを頂けると幸いです。


初日

『インフィニット・ストラトス/IS』

 

宇宙空間での活躍を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。

現在『製作者』の意図から離れ一向に宇宙へ進まず、持て余すほどのスペックから『兵器』として扱われ、そしてそれぞれの思惑により『スポーツ』に落ち着いた飛行パワードスーツ。

ただし、この『IS』は『女』にしか使えない。『女』以外には、この機械は反応しない。

 

―――って思ってけど、それは間違いだったんだな。

 俺こと織斑一夏は確信する。今日は高校の入学式。新しい世界の幕開け。その初日。本来ならクラスに男が俺一人という絶体絶命の危機に瀕していたに違いない。

 

 だが現実は有情だった。真ん中&最前列というめちゃくちゃ目立つ上に否が応でも注目を浴びる席――事実視線が集まっている――に居ても最悪の予想から逃れられた俺の心は軽い。

 

「全員…は揃わないはずでしたね。えっと…そ、それじゃあSHR(ショートホームルーム)はじめますよー」

 

 黒板の前で緊張気味に微笑む女性副担任山田真耶(やまだまや)先生が挨拶し、SHRを進める。心なしか俺に集まっていた視線が山田先生に移った気がする。教室中の視線を集めてしまった山田先生は少し恥ずかしそうだ。

 

「そ…そそそそれでは皆さん、一年間よろしくお願いしましゅね!」

 

 あ、噛んだ。教室の後方から数人が吹き出した音が聞こえる。山田先生は真っ赤になってあたふたしている。教室中に漂っていた謎の緊迫感が緩んでいくのを感じる。

 そうだ。皆緊張する必要は無いのだ。女の園たるIS学園にあって、この教室の中でだけは断言できる。なぜならば――

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと出席番号順で」

 

 うろたえる副担任がかわいそうなので、()()()()1()()の俺はすぐに反応する。「お」で出席番号が1番とは珍しいが、クラスメイトが1()8()()となればまぁ起こりえるだろう。

 

「えっと、出席番号1番、織斑一夏です。これから同じ境遇の仲間同士仲良くしたいと思います。よろしくお願いします」

 

俺は教室の前に立ち着席している1()3()()()()()と6つの空席に向け自己紹介をする。

 

 

 

 ――そう、1()3()()()()()に、である。

 

 

  ◇誰も想定しなかった開幕 / 原作どうすんだこれ

 

 

 オッス、オラ転生者。ぽっくり死んだあとインフィニット・ストラトスの世界で赤ん坊から初めて16年。当初想像したようにIS学園に叩き込まれたZE☆

 

 そう、白旗(しろはた)一振(いっしん)1()6()()である。おいお前俺の名前を見てギブアップとか連想しただろう。そんな事言っていられるのは今の内だけだからな!覚悟しとけよ!

 

 閑話休題。2月半ば、世界で初めて男性がISを動かしたという衝撃的ニュースは瞬く間に世界中に広がった。

 世界中で新たな男性操縦者を探す試みが行われ、そして期待通り見つかった。俺も県内最大の都市で行われた男性向け起動試験で打鉄を動かした口である。

 

 結果、見つかった男性操縦者は19人(IS委員会発表)。多過ぎである。国籍は日本が7、日本以外のアジア圏が3、ロシア含むヨーロッパ圏が4そして南北アメリカが5。

 年齢は15歳がほとんどで俺の様に1~2歳前後するものから、果ては大学院生までいる始末。むしろなぜ今まで見つからなかった男性操縦者。触る機会が無かったからか。

 

 世界中の男性が妄想した、しかし夢だと断じた男性操縦者。見つかったはいいが当然ここIS学園は男が入るなぞ想定されているはずも無く、あまつさえ年齢国籍バラバラの合計19人も急遽捻じ込まれたとなれば確実に混乱が起こる。この為IS学園および委員会では三日三晩に渡る対応会議が行われたらしい。

 この会議の結果、4~5人ずつ4クラスに均等分ける案を廃し、女性側からの男共を無遠慮に女の園へ招く事への反感、男性側からの最終的にまだ増えるだろうという予測或いは希望的観測のため、我ら男性操縦者のみの特別クラス1年5組が追加された。

 おそらくこの思考を読み取っている諸兄はこう思ったはずだ。

 

――原作ヒロインのフラグと各イベント群どうすんだ

 

 俺の、そしてこのクラスの大半を占めているであろう俺の同類の意見(想像)をお返ししよう。

 

――俺が聞きたい

 

 

 

 

 引き続き解説は白旗がお送りします。現在は織斑一夏を含めこの教室に居る男性14人――この場に居ない残り5人の男性操縦者は各国の軍・企業・研究所で訓練の後に専用機と共に転校してくることに決まっている――の自己紹介が終わり、関羽の襲撃を越え、織斑電話帳イベントをかまし現在三時間目である。

 何?一時間目後の箒イベ?廊下を埋めつくす野獣の眼光に恐怖した俺たちの決死の立て籠もり作戦によりスキップだ。チャイムギリギリまで施錠した結果全員が出席簿の餌食となった。

 二時間目後は織斑一夏を生贄に捧げる(廊下に叩き出す)ことによって一時の平和が保たれた。ちなみに立案・実行を行った奴は織斑一夏と共に廊下へ引きずり込まれ、こってり搾り取られたような有り様だ。尊い犠牲である。もう一つ付け加えると教室内に「ちょっと、よろしくて?」等という発言をする者は居なかった。

 

「さて、授業の内容に入る前に、再来週行われるクラス対抗戦に出る代表を決めないといけない」

 

 クラス内の雰囲気が変わる。クラス代表決定イベント、原作であれば他薦された織斑一夏と自薦したセシリア・オルコットが決闘を始め、また多くの二次創作ではオリ主もついでに巻き込まれるイベントである。

 織斑千冬によるクラス代表の説明が進むとともに高まる教室の緊張感。オリキャラで占められた教室、既に崩れた原作に対してどのような立場をとるか。ここで各々の立ち位置が明らかになるだろう。

 

「はい、織斑一夏を推薦します!」

「俺もそれが良いと思います!」

 っ早い!窓際席で2人分の声が挙がる。恐らく少しでも原作に近い環境を整えようとするタイプの人間か。織斑一夏も声のした方を向いて驚いている。

 

「お、俺!?」

「あぁそうだ世界初の男性操縦者にして初代ヴァルキリーの弟!こぉのクラスを代表する人間は、お前以外に存在しなぁぁいっ!!」

 

 抗議のために立ち上がった織斑一夏、そして推薦理由を高らかに宣言する窓際漢A(自己紹介1回で覚えられなかった)が視線を集める。

 

「そう、俺たちは所詮織斑一夏に続く二匹目三匹目のドジョウ!ならば先陣を切り俺たちにISを動かす機会をもたらした貴様こそ、俺たちの代表に相応しい!」

 

 かなり五月蠅いが、まだ納得のいく理由である。事実織斑一夏も気圧されており、必死に辞退する理由を探している様が見て取れる。

 

「織斑、北条。席に着け、邪魔だし五月蠅い。さて、他にはいないのか?いないなら無投票当選だぞ」

「待て!納得がいかない!」

 

 …俺たち転生者だよな?この絶妙に原作の流れに乗ろうとするのはあれか?単にやってみたかった的なノリ?世界の修正力かなんかあるのか?

 ともあれ机を叩いて立ち上がる対抗馬仮称筋肉ダルマの入場である。

 

「そのような選出は認めない!その男を見ろ、実にやる気なさげで体も貧相!さっきまでの授業態度などどうだ。あの様でクラス代表などいい恥さらし!この俺リチャード・ラッセルにそんな軟派な男の下につく屈辱を一年間味わえと言うのか!」

 

 バァーン!という効果音が背景に見えるほどの主張。これは…織斑一夏アンチか?いや、恐らく相応しくない理由を並べ立てて見下すのはあくまでついで。リチャード何某の目を見るにこれは…

 

「意識の高さ、積み上げた訓練そして優れたバックアップこそクラス代表に必要不可欠。それをただ最初に見つかったからという理由で貧相なお坊っちゃんにされては堪らない。俺はこんな辺鄙な所までIS技術の()()に来たのであって、ごっこ遊びをしに来たわけではない!」

 

 成り代わり目的のタイプ!織斑一夏に代わり代表となり、ヒロインたちとの接触の機会を増やす腹積もりか!

 

「いいか、クラス代表とは相応しい影響力を持つものがなるべき、それはアメリカ合衆国軍の膨大なバックアップを受ける専用機持ちのこの俺に他ならない!」

 

 合衆国軍のバックアップとは…想像以上の人物が出てきたな。正直喧しいレベルの声量でリチャ何某の演説は続く。このまま決闘の流れに持っていくつもりか?

 

「落ち着けリチャード君…だったか?それ以上は不味い。何か思惑があるだろうが、ひとまず置いておけ。出席簿で飛ぶ事になる」

 

 おっとここで更なるイレギュラーの入場だ。この人は覚えている。なんせ最年長で現役IS研究生レイモンドさんだ。もちろん専用機持ち。

 

「織斑君も挑発されて興奮する所だっただろうが、冷静に。少なくとも喧嘩をするためにここに居るわけではないだろう」

「くっ」「は…はい」

 

 流石は最年長。あっという間にガキの喧嘩を鎮めてくれた。頼りになる人だ…ん?頼りになる?

 

「先生。ここは全員が納得するため候補となった彼らがISを使い決闘することで決めてはどうでしょうか?実力で勝ち取ったならば皆納得するでしょう」

「決闘か。俺は良いぜ。そこのヒョロヒョロはどうだ?」

 

 原作に則った様な決闘がセッティングされていく。織斑一夏も決闘に同意し、二人の間で決闘のルールが確認されていく。

 そして、その隙をついて俺、白旗も動く。

 

「織斑先生。俺はクラス最年長のレイモンドさんを推薦します。この手際、彼ならば安心してクラス代表を任せられます」

 

 第三勢力、原作とか横に置いといて安定した学園生活を望む一般人の会からの横槍を以ってクラス代表戦は三つ巴となり、決着は一週間後の月曜日となった。

 

 

 

 

  ◇原作非介入派の暗躍? / エキストラの立ち回り

 

「解説は替わりまして北条がお送りいたします」

「いや誰に説明を…無粋だったな。聞く事じゃないか」

「おい北条、南路、宛先不明な発言は慎め。黄色い救急車呼ぶぞ」

 

 現時刻18:37、俺、北条清二(ほうじょうせいじ)南路純三(なんじじゅんぞう)にイタリアのマリアーノ・レッドパーラを加えた3人はIS学園内の外部向け宿泊施設ストラトスフィアの一室で購買の弁当・パンを食べながら今後の立ち回りについて擦り合わせの最中である。ちなみに今後一年間の俺の部屋(予定)だ。

 

「とりあえずここに居る3人は非介入派、最低でも織斑一夏を中心にして事件が回るように立ち回る一派ってことでいいな?」

「南路君と北条君は既に3時間目で意見を合わせていたようだが、私についてもその認識で正しい」

 

 南路の問いにマリアーノは答える。ちなみに手に持っているのは某コーヒーショップで見るようなパニーニである。対して日本人二人は俺が日の丸な弁当、南路が菓子パンだ。

 

(マリアーノ・レッドパーラ18歳、イタリアの専用機内定勢って言ったか。専用機内定にしちゃぁクラス代表選びで大して目立っちゃいなかったがなるほど。一夏のポジションに入るのを嫌ったか)

 

 イベントを呼び込む可能性を鑑みても、自分と同意見の専用機持ちが居るというのは心強い。万が一戦闘が起きた際、あてにできる人間がいるか否かでピンチの度合いが変化するからだ。

 

「念のため聞くが、裏は無ぇよな?一夏に協力する()()をして背後から刺し、後から美味しい所を搔っ攫おうってぇ腹黒が相手なら俺らもそれなりの動きを考えるぞ?」

「安心しろ。そのつもりは無い。何より意味がないどころか、それは()()()()という転生最大のアドバンテージをドブに捨てる行為だ」

「OK、この場では信用しよう。して、俺達に接触した目的は?派閥でも立てて発言力を手に入れるつもりか?」

 

 南路が問う。派閥を立て一夏をバックアップする体制を整えるという案は、ある種の原作介入のような気もする。しかしそうしなければ積極介入勢にイベントを引っ搔き回されるため、それは必要な措置として二人で検討していたところである。

 

「派閥ではないが、その通りだ。原作よりも専用機持ちが増えたことで織斑が主人公であるために必要な実力が相対的に上がったともいえる。メインキャストがメインキャストであるために、私たち(エキストラ)にもそれ相応の役割と義務がある」

 

 義務と来たか。そこまでは考えていなかったが、確かに俺ら(エキストラ)が増えている以上、元の物語に戻すには外部からのバイアス(荒療治)が不可欠である。

 …舞台装置(IS)を持たずして演劇の流れを修正するのは不可能だろう点を考えればこの申し出は有難い。

 

「義務、てぇと織斑の戦闘力の強化か?専用機を持ってんならそれも出来るだろぉな。それとも他に何か腹案があんのか?」

「それに加え原作ヒロインが織斑周辺に集まるように誘導する程度だな。詳しくはこれから詰めていくつもりだ」

 

 ヒロインの誘導?可能な限り原作に近づけたいわけか。確かに原作と同じメンバーが固まって動いていればおおよそ起きるイベントは予想できる。特に織斑一夏と篠ノ之箒がセットになっている限り篠ノ之束の動きがかなり誘導できるようになるのは大きい。

 

「かなりやる気だな。では改めてその動機を聞きたい。俺たち二人は大した力も無いままに命を奪われるような事件に巻き込まれないため。この一点だ」

「動機か。そうだな、あえて言うならば」

 

 一度区切る。動機如何によってはこの会合を無かった事にする必要も出てくる。例えば原作同様に強くなった織斑と戦いたいなど言われた日には即退散である。

 

「…ドタバタラブコメディを傍から眺める。或いは在る筈だった少女たちの青春の為、でどうだ」

 

 空気が固まる。想定外の返答に俺たち二人は数秒間理解に時間を要し、そして笑った。

 

「ヤべェ、それは想定してなかった。だがそっちの言い分は分かったぜ。どっちにしても専用機持ちの仲間を集める予定だったし、これから一緒に頼むな。マリアーノ…えぇっと先輩?」

「マリアーノでいい。こと俺たちの間で年功序列は意味を持たないし、今のところ学年は同じだ」

「それもそうだ。俺もよろしく頼む。マリアーノ」

 

 3人で握手を交換し、後は眠たくなるまで織斑一夏育成計画について話し合った。

 

 

――織斑一夏を取り巻く物語は既に始まっていることを忘れて

 




以上。感想・誤字脱字報告・助言・ご意見お待ちしております。
リアルの都合と作者の力量の為次話更新はしばらくお待ちください。

5/6 極微修正。一文字入れ替えただけです。

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