とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント

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第五話、

 史実が伝える通り、帝国領侵攻作戦が開始された。

 これも史実が伝える通り、迎撃を一任されたラインハルトは焦土作戦を実行。侵攻軍の弱体化に努めた。

 次第に補給が欠乏してきた同盟軍は本国から輸送船団を発進させる。だが、これはジークフリードの率いる艦隊に捕捉され、壊滅した。

 民忠も、物資も失った同盟軍に勝機はほとんど残されていなかった。そして、大反抗作戦が開始されたのである・・・

 

 補給線を断たれ、窮地に陥った同盟軍を殲滅すべく、帝国軍は一挙に反撃に転じた。

 「来るぞ!敵との予想接触時間は!?」第十艦隊司令官ウランフ中将は聞いた。

 「およそ、6分!」レーダー観測員が報告する。

 「よし、全艦総力戦用意!司令部、および第十三艦隊に連絡!”我、敵ト遭遇セリ”とな!」

 「はっ!直ちに!」チュン参謀長が敬礼し、通信手が作業に取りかかった。

 「さあ、やがてミラクル・ヤンが駆けつけてくれる。敵を挟み撃ちにできるぞ!」

 「おお!」艦橋の空気が盛り上がる。

 ウランフはそう言いつつ、分かっていた。

 (もっとも、ヤンの方も今頃・・・)ミラクル・ヤンも来れないことを。

 

 「敵ミサイル群接近!」

 「九時方向に囮を射出しろ!」戦艦「ヒューべリオン」艦長マリノが命じる。

 直前にヤン・ウェンリー中将の出した命令に従い、スパルタニアンが次々と発進していった。

 

 「なんたるザマだ!あの程度の敵にてこずりおって!後方から半包囲して艦砲の射程に誘い込め!」

 カール・グスタフ・ケンプ中将に命令に従い、ワルキューレ隊は敵機を後方から攻撃し、うまく艦砲射撃で大損害を与えた。

 

 一方、第十艦隊旗艦「盤古」では。

 「敵味方の損害は絶対数においてほぼ同レベルですが、元々敵の方が数において勝ります。その上・・・」

 「我が軍は食い物もなく、士気の低下が著しい、か?」

 「はっ。このままでは・・・」

    

 それと戦うビッテンフェルト艦隊では。

 「全艦に伝えろ。”撃てば当たる。攻撃の手を緩めるな”とな」フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将は言った。

 

 遠く離れたビルロスト星系では。

 「敵の追撃を振りきれません。いかがなさいますか、ビュコック提督?」副官ファイフェル少佐が聞いた。

 だが、老練の名将は動じない。「どうするもこうするも、ここは逃げの一手じゃ。全速でイゼルローンまで後退せよ」

 そして、戦況を見て呟く。「やれやれ、はじめから撤退準備をしていた我々もこのありさまじゃ・・・これでは他の艦隊はダメかもしれんの・・・」

 「何かおっしゃいましたか?」ファイフェルが聞いた。

 「いや、何でもない。年寄りは独り言が多いでな・・・」第五艦隊司令官、アレクサンドル・ビュコック中将は答えた。

 

 「ほう。最初から逃げにかかっているな。戦術的には正しい判断だが・・・」旗艦「トリスタン」艦橋でヘテロクロミアの提督はほくそえんだ。

 

その頃、ドウェルグ星系では。

 「閣下。敵艦隊より入電。降伏勧告を受諾するとのことです」参謀長グリルパルツァー准将が報告してきた。

 僕は戦艦「バルバロッサ」艦橋のジークフリードと同じく、ただ頷いた。

 あとはヤンだけだ。さて、いかにして確実に倒すか。

 

 「提督。我が艦隊はすでに四割を失い、残りの半数も戦闘には耐えられる状態ではありません。降伏か、逃亡かを選ぶしかありません」チュンが報告した。

ウランフはチュンの方を向いた。「不名誉な二者択一だな、うん?」

 すぐに結論を下すと、ウランフは向き直った。「降伏は性に合わん。逃げるとしよう」

「はっ!」

 損傷した艦艇を内側にして紡錘陣形をとれ。敵の包囲陣の一角を、突き崩すんだ!」

 ウランフの指示にしたがい、第10艦隊の残存部隊は急ぎ紡錘陣形に移行し、突撃を開始した。

「砲火を集中しろ!撃って、撃って、撃ちまくれえ!」ウランフの命令は、全艦隊を鼓舞した。

「怯むな!敵の最後の足掻きだ!」ビッテンフェルトは」そう結論付けたが、シュワルツ・ランツェンレイターの黒い高速戦艦は次々と沈んでいった。

 「いまだ!」

 「ぬうっ!」

 ついに包囲陣の一角が突き崩され、第10艦隊はどんどん脱出していく。

 「提督、本艦も!」

 「まて、傷付いた味方艦を一隻でも多く逃がすんだ!ギリギリまで踏みとどまる!」ウランフはまさしく勇将だった。

その間にも、シュワルツ・ランツェンレイターの猛攻を掻い潜り、見事、同盟軍艦隊は離脱していった。

「よし、脱出する!最後のミサイルを、全弾発射しろ!」

「盤古」のミサイルランチャーが数十発のミサイルを発射した。だが、ついに猛将ウランフの命運も尽きた。

ビームが次々と命中し、艦橋も爆炎に呑み込まれた。

ウランフは苦しい中にも身を起こし、最後の質問をした。「参謀長、味方は・・・脱出・・・したか・・・?」

「は、半数は・・・」

「そ、そうか・・・」

「盤古」は轟沈し、ウランフはこの世を去った。

 

あとがき

主人公の出番ありませんwアムリッツアは、やはり主人公だけでなく、全体を描きたかったんです。


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