とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント

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第三話

 「先輩、どうします?」アッテンボローが聞いた。

 「そうだな・・・」ヤンは考え込んだ。

 この時点で帝国軍は元左翼部隊の後方に回り込み、猛烈な砲撃を加えてきている。ヤンは直ちに最大戦速で逃げるように命令し、さらに元右翼と中央を合流させていた。

 「アッテンボロー。全艦のC4回路に入力した四番目の行動パターンを起動してくれ」」

 「これですか?」

 「ああ。それだ」

 

 「敵艦隊に動きあり!」逃げる敵を追撃する帝国軍艦隊の旗艦「ブリュンヒルト」艦橋に新たな報告が入った。

 帝国軍から見て正面に逃げる敵艦隊、その奥に敵の右翼と中央にいた艦隊約9500隻が展開している。その「主力」が四方に分散し始めた。敵の元左翼は相変わらず逃げ続けている。

 「閣下!危険です!」僕はラインハルトに向かって叫んだ。「集中砲火を食らいます!」

 次の瞬間、四方に分散した敵艦隊が一斉に砲撃してきた。

 「何?」ラインハルトが立ち上がった。

 「敵弾、来ます!」

 突撃し、さらに敵後背に回り込み、そのまま追撃してきたために陣形が乱れていた帝国軍は一挙に数百隻の損害を受け、戦闘部隊は身動きできなくなった。

 「くっ!」ラインハルトが歯を噛み締める。

 「閣下!ここは一度後退し、陣形の再編を!」僕よりも前にジークフリードが提案した。

 「そうです!閣下、早く!」僕も言う。

 「わかった。全艦後退!後退しつつ陣形を再編!」ラインハルトが命じる。

 「後退?」高速戦艦「ダルムシュタット」で命令を受けたファーレンハイトはそう聞き、副官サンデルスが答える前に決断を下した。「全艦後退!他の隊を援護しつつ、陣形を再編する!」

 かくして、帝国軍は一斉に後退を開始した。ファーレンハイト、メルカッツ両将の指揮で陣形を素早く再編する。その見事さに僕は感心した。

 

 「敵艦隊、後退を開始しました。予想どうりですね、先輩」

 「そうだね。よーし、全艦、逃げろ!」ヤンは命じた。

 「アイアイサー!」アッテンボローは全艦に命令を伝達した。

 

 「敵艦隊、撤退していきます」その報告は僕にとってさほど驚きではなかった。

 「キルヒアイス、敵艦隊に伝えろ。”卿らの奮戦に敬意を表す。再戦の時まで壮健なれ”とな」

 「はっ」ジークフリードが敬礼した。

 

 こうしてアスターテ会戦は帝国軍の圧倒的大勝利に終わった。

 原作以上の敵艦を撃沈できたが、結果としてヤンを倒すことは出来なかった。まあ、それはそれでいい。僕にも、好敵手がいるということだから。

 それ以上に大事なのは、ラインハルトが元帥に昇進したことだ。二十歳の元帥なんてほんとにすごいんだなって実感した。

 その影で僕も中将に昇進し、ローエングラム元帥府に提督として迎え入れられた。


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