とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント

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第二十話

 統帥本部では来るべきイゼルローン要塞奪還作戦の準備が行われていた。

 遠征軍司令官ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将、副司令官アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト大将とナイトハルト・ミュラー大将。

 参加艦艇は、メルカッツ艦隊8000、ファーレンハイト艦隊8000、本土より出撃するミュラー艦隊12000(僕の艦隊)の合計28000。また、ガイエスブルグ機動要塞が投入される。

 僕はこの戦いでイゼルローンを陥落させるつもりでいる。そのため、予備兵力として、ミッターマイヤー艦隊14000、ロイエンタール艦隊14000、キルヒアイス艦隊16000の44000隻の出撃準備も一応整えた。

 合計すると、72000隻という大軍となる。だが、60000近い大軍をもってしても第五次イゼルローン攻防戦ではイゼルローンを陥落させられなかった。ガイエスブルグがあるとはいえ、油断は禁物だ。

 そして、メルカッツとファーレンハイトはフレイア星系のガイエスブルグ要塞へと工兵部隊を引き連れて出発した。

 

 夜、ジークフリードはラインハルトの元に行った。

 「どうした、キルヒアイス?お前がそんな顔で来ることなど珍しいじゃないか」ラインハルトは椅子を勧めていった。

 「はい。実は、かなり重大なことでして・・・」ジークフリードは口ごもった。

 ジークフリードはアンネローゼに婚約する許可を求めに来たのだった。別に必ずしもラインハルトに許可を求める必要はなかった。だが、彼にしてみればラインハルトが望まぬ場合、結婚したジークフリードがラインハルトに仲を切られることは当然だと思っているので、こうして許可を求めに来たのだった。

 「なんだ?俺とお前に、そこまで重大なことでもあるのか?」ラインハルトはいぶかしげな顔になった。

 ジークフリードは首を横に振った。「いえ、ラインハルト様とではありません」

 「ならばヒルシュフェルトか?それとも・・・」

 「アンネローゼ様です」ジークフリードは早口で言った。

 ラインハルトは笑った。「とすると、さてはお前、姉上と結婚したいのだな?」

 ジークフリードは衝撃に身をすくませた。ラインハルトの洞察力は他の人の比ではない。それを実感した瞬間だった。

 「・・・はい」

 「で?俺はどうすればいいのだ?」ラインハルトは聞いた。

 「・・・ラインハルト様に、アンネローゼ様と結婚させていただく許可をいただきたく思って・・・」

 ラインハルトは唖然とした表情になった。「許可?許可だと?なぜお前が姉上と結婚することに俺が許可を出さなければならない?お前の人生計画は、全て俺が管理しなければならないのか?」

 「ですがラインハルト様・・・!」ジークフリードはラインハルトに嫌われた気がした。

 「それにだ、俺がお前と姉上の結婚に反対する理由があると思っているのか?俺はあの汚ならしい皇帝が姉上を誘拐したのは許してはおけん。

 だが、お前が姉上を幸せにすることに、俺がなぜ反対しなければならない?それとも俺は姉上があのまま一生を終えられることに喜びを感じているとでも言うのか?」

 ラインハルトの遠回りかつ高圧的かつわざとらしく怒りっぽい言い方で、ジークフリードは全てを察した。

 ラインハルトは僕とアンネローゼ様の結婚を望んでおられるのだ。

 だが、それを正直に言えず、まるで無能な臣下を叱り飛ばすような口調で彼の結婚を肯定しているのだ。

 ならば、ここはあえて低姿勢でいこう「申し訳ありませんラインハルト様。私が間違えておりました」

 ラインハルトはそれ以上高圧的でいられなくなった。「とにかくだ!俺にお前と姉上の結婚を阻止する理由はない!」そう言い終わってラインハルトの顔に朱がさした。

 「はい、ラインハルト様、ありがとうございます!」ジークフリードは最大限の感謝の気持ちを込めて感謝の言葉を述べた。

 「で、姉上には言ったのか?」ラインハルトは聞いた。

 「いえ。まだです」ラインハルトに肯定されて嬉しくてしかたがなく、表情を保つのに苦労しながらジークフリードは答えた。

 「そうか。早く言うことだ。俺が宇宙を手にいれてからでは、遅いぞ」

 ジークフリードは頭を下げた。「分かりました。早い内に、婚約させていただきます」

 「キルヒアイス・・・あの日を覚えているか。俺とお前と、ヒルシュフェルトが王朝を倒すと誓ったあの日を・・・」

 ジークフリードは頷いた。「もちろんです、ラインハルト様」

 「あの時はただ姉上の苦しみを和らげるために王朝を倒すと誓った。

 だが、それだけでは足りないのだ。姉上には、幸せになっていただかないといけない。キルヒアイス。お前は、姉上を幸せにして差し上げるんだ。それが、姉上を真に解放して差し上げることになるだろう」

 「はい!」ジークフリードは頷いた。

 

 「アンネローゼ様、いらっしゃいますか?」ジークフリードはアンネローゼの部屋のドアをノックした。

 「ジーク。どうしたの?入りなさい」中から優しい声がした。

 「はい」ジークフリードはドアを開け、中に入った。

 アンネローゼは編み物をしていた。「どうしたの?何かあって?」

 ジークフリードは心臓の鼓動を感じた。

 多分、僕の人生で一番緊張した瞬間だろうな。

 彼は後にそう思った。

 

 ジークフリードは、自分の心の内を全て語った。

 

 そして、

 

 「結婚・・・して頂けませんか?」

 

 

 「ジーク・・・」アンネローゼは涙が出ることを感じた。

 「それは、ジークの希望なの?それとも・・・」

 「私の、希望です、アンネローゼ様」

 ジークフリードの言ったことに、嘘偽りは1パーセントも含まれていない。

 それを悟ったアンネローゼは、ジークフリードに抱きついた。「私こそ、結婚・・・してもらえますか?」

 ジークフリードは何度も首を縦に振った。「はい。もちろん」

 

 二人の唇が近づき、触れあった。

 

 この瞬間、アンネローゼは「真に解放」され、ジークフリードは人生を通じて最も幸せな時を得ることができた。


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