とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント

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第十七話

 僕は艦隊司令官に復帰した。

 この間ガイエスブルグ要塞攻略作戦の準備が整えられ、要塞攻略作戦が開始された。

 作戦はこうである。

 まず、少数の無人艦を連続的にガイエスブルグに特攻させる。

 もちろん、大半は対空砲台によって打ち落とされるが、それでもガイエスブルグにダメージを与えることはできるはずだ。

 そして、ダメージを与え、敵が無人艦戦法に恐怖を抱き始めたタイミングで大規模に無人艦を突っ込ませる。

 要塞は、ガイエスハーケンを撃つだろう。そして撃ったらラインハルト、ジークフリード、ミッターマイヤー、ロイエンタールの艦隊が突入する。陸戦部隊を下ろし、数の力で要塞を陥落させる。オフレッサーもそれほど苦労せず殺せるだろう。

 

 そして艦隊は配置につき、要塞攻略戦が開始された。

 「ようし、無人艦第一陣突撃!要塞に風穴を開けてやれ!」無人艦を率いるビッテンフェルト提督が指示を出す。

 無人艦100隻がガイエスブルグに突進した。

 「オフレッサー上級大将!敵艦が接近してきます!」オペレーターが恐怖の声をあげた。

 「奴等は戦いを知らぬようだな。浮遊砲台で迎撃しろ!」オフレッサーは命じた。

 命令通り、浮遊砲台が浮上し、接近してくる敵に砲撃を浴びせる。

 「たとえ奴等が逃げ出そうとも逃がすなあ!」

 敵艦は次々と轟沈していく。多くの火の玉が宇宙を明るく照らし出した。

 だが、ガイエスブルグの対空砲撃能力には限界があり、敵艦が接近してくる。

 「敵が揚陸してくるぞ!白兵戦用意!」オフレッサーは置いてあった専用のトマホークを手に取ったが、

 「変です!敵艦、止まりません!このままですと、要塞に激突します!」

 「なにい!?」

 敵艦が砲火を抜け、要塞に衝突する。その度に要塞は激しく振動した。

 「ぬうっ」オフレッサーは呻いた。

 「第二波、来ます!数、およそ200!」

 「閣下!ガイエスハーケンを使用しては!?」

 オフレッサーはあり得んと言った顔で提案した男爵を睨み付けた。「黙っておれ!俺には俺の考えがあるのだ!」

 再び対空放火が放たれる。だが、特攻してくる敵の数も増えており、要塞はますます激しい振動に襲われた。

 「第2ブロックに損傷!」

 「第7ドック、爆発!」

 「第2ブロックを放棄しろ!全ての隔壁を閉鎖!」オフレッサーは指示したが、そこにはまだ3000人の兵士がいる。

 「ですが、第2ブロックにはまだ兵士がいます!そのような命令は・・・」

 「黙れ!平民が何人死のうと知らん!早く実行しろ!」

 さらに第三波、第四波と特攻が繰り返される。その度に損害は増えていった。

 「ぬうっ・・・」オフレッサーも狼狽する損害が出た。

 「敵の第五波接近!数、2500!」

 「ふふん!今度はそんな数で来たか!ガイエスハーケン発射準備!」

 ガイエスハーケンが流体装甲上に浮上し、攻撃準備を整える。

 「撃てえい!」オフレッサーは右手を突き出した。

 青白い閃光が宇宙を横切り、2500隻の無人艦が光のなかに消える。 

 「見たか!平民どもめが!」

 

 「敵、主砲を発射」

 「よし。罠にかかった。オフレッサーめ。腕っぷしは強くても、頭はないと見える」ラインハルトは嘲笑した。

 「全艦攻撃に移る。前進せよ」

 「よし、前進!」ミッターマイヤーが命ずる。

 「突撃!装甲擲弾兵部隊降下準備!」ロイエンタールが命ずる。

 「前進。要塞の攻撃を避けつつ接近する」ジークフリードが命ずる。

 「要塞本体への強襲揚陸作戦を開始する。攻撃開始!」僕が命ずる。

 後の「獅子帝」ラインハルト・フォン・ローエングラムと後に「帝国の四天王」と称される「赤毛の剣」ジークフリード・キルヒアイス、「獅子の剣」ルートヴィヒ・フォン・ヒルシュフェルト、「疾風ウォルフ」ウォルフガング・ミッターマイヤー、「ヘテロクロミアの勇将」オスカー・フォン・ロイエンタールの艦隊が前進する。その姿は、壮観と言うにふさわしい光景だった。

 そして、ガイエスハーケンの砲撃ができない隙に大艦隊が浮遊砲台を掃射しつつ要塞表面に取りついた。

 「よし、全艦陸戦隊を降下させろ!要塞を数の力で叩く!」戦艦「ベイオウルフ」に座乗しているロイエンタールが命じた。

 「さて。これからが大変だ。あのオフレッサーがいるとなるとな」ロイエンタールの隣に立つミッターマイヤーが言った。

 「ああ。あいつは人を殴り殺すために生まれてきたようなものだからな」ロイエンタールは苦笑した。

 

 要塞通路を帝国軍の装甲擲弾兵が駆け抜ける。

ラインハルト軍の部隊とオフレッサー軍の部隊が激しく斬りあった。この時点では優劣は決しかねていたが、

 「ええい、下がれえ!」オフレッサーが姿を表した。

 「オフレッサーが、オフレッサーが来たぞ!にげろお!」ラインハルト軍の兵士が慌てて後退する。

 オフレッサーは驚くべき敏捷さでラインハルト軍の兵士に襲いかかると、トマホークで一刀両断にした。

 「ぎゃああ!」兵士の断末魔の叫び声が通路にこだまする。

 「後退!こうた・・・ぐあああ!」指揮官も首を吹っ飛ばされた。

 「うはははは!」オフレッサーは嗤いながら死体の山を築き上げて行く。

 一人の兵士が負傷して歩けなくなっていた。トマホークを杖がわりにして、よろよろと歩いている。

 オフレッサーはニヤニヤと笑いながらその兵士に歩み寄ると、無慈悲にも足を切り落とし、絶叫する兵士にトマホークを振り下ろして胴体を真っ二つにした。

 「オフレッサーめ、許さん!」ミッターマイヤーはその光景を見て言った。

 「第二隊突入!如何なる犠牲を払っても通路を確保しろ!」ロイエンタールが命じた。

 一方、ジークフリードと僕の陸戦隊もオフレッサーと戦っていた。

 「た、助けてくれ!」慈悲を乞う兵士を斬り殺し、オフレッサーは笑い声をあげる。

 「貴様ら平民がいくらかかってこようともこの俺の敵ではないわ!」

 

 戦艦「ブリュンヒルト」に通信が入った。

 「誰からだ?」ラインハルトは聞いた。

 「オフレッサーです!」

 「ほう?降伏でも申し込みに来たか?」

 「金髪の小僧!」声が艦橋に響き渡った。「スクリーンを通してでも俺をまともに見る勇気はあるか!?」

 オフレッサーの挑発はとどまることを知らない。「若造が、運にだけは恵まれて、元帥になったからって思い上がるな!」

 ラインハルトからしたら不本意きわまりないことだったであろう。彼は運ではなく、自身の実力でここまで来たのだ。 

 そして、オフレッサーは致命的な文言を発してしまった。「姉ともども陛下を色仕掛けでたぶらかしおって!恥を知れ!」

 ラインハルトは怒りの炎を燃やし、立ち上がった。「ヒルシュフェルト、キルヒアイス、ミッターマイヤー、ロイエンタール!あのゲス野郎にこれまで流させた血の量と同じ量の血を流させてやれ!絶対に生かして返すな!」

 「はっ!」全員が敬礼した。

 僕も憤慨していた。実際にこの世界にいるからわかることである。アンネローゼ様を侮辱しやがって。

 「よし、ミュラー参謀長。第四波を突入させろ。この場合、犠牲を気にしている場合ではない」

 「はっ!」ミュラーは敬礼した。

 一方、ミッターマイヤーとロイエンタールは自ら戦場に乗り込んだ。

 「金髪の小僧め!俺の前に出てきてみろ!」オフレッサーは挑発を止めない。

 「威勢が良いな、オフレッサー!」低い声が響いた。

 ダークブラウンと蜂蜜色の髪が立っている。

 「ほう。偉そうな口を叩くのは誰かと思えば、金髪のミッターマイヤーとヘテロクロミアのロイエンタールか。少しはやると聞くが」

 「やってみなければ分かるまい。今にあの世へ行くことになるぞ」

 このミッターマイヤーの台詞はオフレッサーを激発させた。「なにい・・・」

 オフレッサーは走り出した。「うおおおおおれええええ!」

 と、そこには落とし穴があった。「わああ!」

 足元が崩れ、オフレッサーは落ちた。

 ロイエンタールは走り、オフレッサーのトマホークを蹴飛ばした。「オフレッサーは捕らえた!後は雑魚だけだ!けちらせ!」

 「おう!」装甲擲弾兵が突撃し、敵を蹴散らした。

 オフレッサーの殺害方法は文にするに耐えない。ともかくも、ミッターマイヤーとロイエンタールがオフレッサーの方を向いたら、オフレッサーの五体はあちこちに散らばり、赤い鮮血を吹き出していた。

 オフレッサーを失った貴族軍はあえなく瓦解。ここに、ガイエスブルグは陥落した。


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