とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した 作:フェルディナント
「はっ!」僕は飛び起きた。
僕は洲崎竜。18歳の大学生「だった」。
早くに親を失い、独り暮らしをしていた「はずだった」。
だが、今日起きてみれば、外はまるで違った世界ではないか。しかも、外の町並みは、まるで中世ヨーロッパのようだった。
どうなってるんだ、一体!?僕は、タイムスリップしてしまったのではないか?と、突然轟音が響いた。腹に来るゴゴゴゴという音。僕は、それをエンジン音だと解釈した。
だが、中世にエンジンなんて聞いたことがないぞ、と思いつつ部屋に一つだけある窓を開ける。どうやらとある建物の2階のようだ。
そして、空を見上げると、
「はあっ!?」
宇宙戦艦だ。紛れもない、宇宙戦艦だ!
長方形の艦体の後部には、3つのエンジンがついている。それを見て、僕はあることに気づいた。
これ、銀河英雄伝説に出てくる標準型戦艦ではないのか!?
いやいや、そうにしかみえない。あれは、絶対銀河英雄伝説の戦艦だ。その後方からは、巡航艦も見えるし。
ってことは、もしや僕は、銀河英雄伝説の世界にいるのか!?
僕はますます訳がわからなくなった。だが、ここがどこかをはっきり示す光景が、僕の下で繰り広げられていたのだ。
「ラインハルト!」その声に、僕はギクッとした。ラ、ラインハルト!?
しかも、この優しそうな声の主は、
ア、アンネローゼ様!
紛れもない、まだ10代の、アンネローゼ・フォン・グリュ・・・じゃなくてミューゼルだ。
そして、今姉の方を振り返ったのは、
後のローエングラム王朝第1代皇帝、ラインハルト・フォン・ローエ・・・じゃなくてミューゼル!
な、なんと、ここは本当に銀河英雄伝説に出てくる銀河帝国首都星、オーディンだ!
「ラインハルト、忘れ物よ」アンネローゼがノートを金髪の少年に渡す。そして、
「あら、ジーク。おはよう」
燃えるような赤毛、振り返ったラインハルトより少し背が高いこの少年は、
「キルヒアイス!」ラインハルトが手をふる。
ジークフリード・キルヒアイスだった。
やった!憧れのキャラが、勢揃いだ!
僕は小躍りした。
そして、なにも考えず、窓を飛び出してしまい、
落ちた。
「わあああああああ!」
どしゃ。下に積み上げてあった藁の山に落ちた。
「あら!大丈夫!?」アンネローゼが駆け寄ってくる。
僕は自分がピンチであることを悟った。銀河英雄伝説キャラに、何て説明したらいいんだ!?まさか「朝起きたらここに飛ばされてました」何て説明できる訳がない。自分の名前すら知らないんだぞ?てか僕の転生したキャラの戸籍あるのか?
僕はとりあえず藁の山を降りた。良かった、藁があって。
アンネローゼと二人の少年が来た。「大丈夫?痛いところはなくって?」
「あ、はい」僕はアンネローゼの言葉に赤くなりながら答えた。
「君・・・」キルヒアイスが思案顔になる。「今日転校してくるルートヴィヒ・フォン・ヒルシュフェルト君?」
「え?」僕は唖然となった。「どうして?」
「いや、そのヒルシュフェルト君の写真を見たから。似てるなって。間違えてた?」
どうしよう。でも、ここは。「そうだよ。僕が、ルートヴィヒ・フォン・ヒルシュフェルトだ。ジークフリード・キルヒアイス君と、ラインハルト・フォン・ミューゼル君だね?」あれ、何で話せるんだろ。僕はドイツ語を知らないのに。
「そうだよ。よく知ってくれてるね」
「ぼくがラインハルトだ。よろしく」そう言ってラインハルトが右手を出した。
この頃のラインハルトはまだこんなだったんだ。そう思いつつ、僕は彼の手を握り返した。「よろしく、ラインハルトって呼んでいい?」
ラインハルトは頷いた。
やった。ラインハルトと友達になったぞ。
「ルートって呼んでいい?」アンネローゼが聞いてきた。
僕は頷いた。アンネローゼ様のお頼みを断ることなんて絶対にするか。
「弟をよろしくね、ルート」
「あっ!もういかないと!」キルヒアイスが言った。
「えっ!?」
「急ごう!遅れる!」ラインハルトが走り出す。キルヒアイスも続く。
僕は一瞬迷った。この二人と一緒に銀河を駆け抜けるのか。一人で行くのか。
僕の脳は一瞬で結論をだし、肉体に伝えた。
僕は、全速で走り出した。
あとがき
ARC170と申します。別のサイトに「日本機動部隊」という小説を書いています。
銀河英雄伝説ものは初めてなので、ちゃんとかけるか心配です。キャラ崩壊も激しいと思いますが、ご容赦ください。