とある科学の解析者《アナライザー》   作:山葵印

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第二章 レベル6とダークヒーローに関するレポート
紛い物の瞳は何を見る


「んー?誰の仕業なんですかね、これは。」

 

 自販機を触りつつ、そんなことを呟く悟。『幻想御手』事件からおよそ2週間。132支部は相変わらず普通の風紀委員とは言えない、割りと平凡に近い日常に暮らしていた。

 変わったことと言えば、177支部との提携が強化された事ぐらいだろうか。と言っても、元から様々な情報を流したり、貰ったりしていたためにあまり変わることはなかったのだが。

 

「『電撃使い(エレクトロマスター)』とか学園都市に大量にいるだろうしな…」

 

 そう言ったのは海人だ。彼…と言うか彼ら132支部は今日私服での見回りをしていたために、彼は白黒の横ボーダーのTシャツにジーパン、白のスニーカーに黒の斜め掛けカバンをしている。

 二人が今何をしているのかと言うと、警備ロボから入った通信で自販機に電磁波を流し、中身を盗むという手口で飲み物を盗った窃盗犯を探しているのだ。

 これが出来るのは電撃使い。レベル1からレベル5まで、幅広い人物がいる、ポピュラーな能力である。数十万の犯人候補がいることを想像し、顔をひきつらせる海人。

 悟は黒いリストバンドのついた右腕でコンコン、と自販機を叩く。彼の服装は水色の、七分袖のポロシャツ、灰色のハーフパンツと言ったもので、グラサンはつけずに帽子のみをつけている。

 相も変わらずぐるぐると、不自然に動く銀色の瞳は変人の楽園とも言える学園都市の中であっても異質に思われるものであるが、先日能力を発動したくないが故に不審者ルックになり、死にかけていた後にシスコン軍曹の有難いお話を受けたので、今日は普通に涼しそうな服装をして来ている。

 それに最近、始末書の書きすぎにより多少解析の『対象』を操作することが出来るようになったため、このような格好をしていても大丈夫になった、と言うわけである。

 

 

 

 その後、夜ぐらいまで犯人を捜索したがなにも見つからず、132支部の2人は大通りを歩いていた。

 

「んー、結局手詰まりかあ…」

「犯人が多すぎますしね…」

 

 そんなことを言い合いながら町を歩いていく2人。そう言えば、と辺りを見渡して、悟は言った。

 

「華先輩はどこにいらっしゃるんでしょうか?」

 

 そう、最近132支部の3人目こと凪川 華が支部に来なくなっていたのだ。海人はああ、と頷いて言った。

 

「アイツなら最近実験とかでいなかったがな、そろそろ来るんじゃね?」

「…大丈夫何ですかね?」

「大丈夫だろ」

 

海人は適当に、やけくそ気味にそう呟く。

 

「かーいとっ♪」

「うげっ…おい、離れろ‼」

 

 噂をすればなんとやら、華が海人に抱きつく。青ざめた顔をしてそれを引き剥がそうとする海人。悟は頬をかいて、それを見ていた。

 

「(…ん?常盤台の人か?)」

 

 と、そこで違和感に気づく。普通は気づかない、人々が目を向けることのない筈の裏路地への道。そこに茶髪のショートカットに常盤台の制服をした少女が入っていくのを見た。

 

「(オイオイ…ありゃ上条か?)」

 

 それだけならまだしも、彼の目で解析できない人物、すなわち上条当麻もその中へと入っていっている。

 先程、その路地からはAIM拡散力場が高濃度で観測されており、鼓動をしていない人影も見える。それはここ最近、具体的に言うと幻想御手事件の前からずっと調べていた案件であり、心を痛めながらも見過ごしてきた物であった。

 

妹達(シスターズ)』。それは学園都市第三位、『超電磁砲』こと御坂美琴の体細胞から産み出されたクローンであり、ひいては悟の友人である一方通行が絶対能力者…レベル6、通称『system』へ相成る為の実験で『使用』されているクローンである。

 悟はその実験を知った日からレベル6になることは不可能である、ということを証明し、一方通行、ひいては『妹達』を救おうとしている。しかし既に一万体以上のクローンが殺されており、ポーカーフェイスで押し込んでいるものの内心では焦りを募らせていた。

 

「…先輩。」

「どうした?」

「知り合いを見つけたので、声を掛けてきます。」

「…わあった、無茶だけはすんなよ?」

 

 はい、と短い返事をして路地裏へと踏み込んでいく悟。上条はすでに先に進んでおり、「1人か?」「御坂妹はどうした?」と言った会話が聞こえてくる。

 

「上条、そっちに行くな‼」

「ミサカ…?」

「クソッ‼」

 

 遅かったか、と舌打ちしつつ呟いて駆け出す悟。ザザリ、と音を立てて止まり、茫然自失と言った様子の上条の右肩に手を置き、押し退ける。

 

「…何だこりゃ」

 

 そこにあったのは、一言で言うと『惨劇』であった。ズタズタに引き裂かれた体、裏路地を染める、大量の赤い血。仰向けになって死んでいる『ソレ』。ぬちゃり、と音を立てて壁から離れるアカイナニカが、目の前のソレが死んでいるのだと、能力が、ソレがクローンであると、必死に告げる。

 

「…」

 

 無意識に、奥歯を噛み締めていた。傷口から見て、恐らく一方通行の能力であるベクトル変換によって血流を逆流させ、こんなことになったのだろう。()()()()()から

 

「悟‼」

「警備員に連絡、俺はここで待ってる‼」

「…分かった‼」

 

 そう力強く頷き、駆け出していく上条。しばらく後悟は唐突に立ち上がると、暗い裏路地に向けて口を開いた。

 

「そろそろ出てこいよ、『妹達』。」

「私達を知っているのですね、とミサカは驚愕の声とともに返答します。」

「貴方は実験の関係者ではないようですが、とミサカは確認をとります。」

「そうだとしたら、貴方を『乱入者』として処理しなければなりません、とミサカは脅しをかけます。」

「貴方はあの少年の友人でしょうか、とミサカは問いかけます。」

「瞳孔、脈拍変化なし。ミサカ達に対するストレスを受けていない、とミサカは報告します。」

 

 彼の言葉に呼応するかのごとく、同じ顔、同じ服をした少女達が路地裏からぞろぞろと出てくる。悟はポケットに両手を突っ込み、言った。

 

「…一方通行の所に案内してもらおうか。」

「お断りさせていただきます、とミサカは間髪入れずに返答します。」

「貴方が『実験』に参加することはできません、とミサカは理由を説明します。」

「…『絶対能力者』へのシフト計画。」

「何故貴方がそれを?とミサカは警戒レベルをあげつつ答えます。」

「『超電磁砲』御坂美琴のクローン、『欠陥電気(レディオノイズ)』、通称『妹達』2万体を、2万通りの戦場で戦闘させることにより、一方通行を『レベル6』へと進化させる計画、だったか?…つくづくふざけた実験だぜ。」

 

ゆったりと、一切気負うこともなくそう言って足で地面をトントン、と叩く悟。そして、もう一度同じ台詞を言った。

 

「『レベル6』へと至るのは不可能だ。ソレを証明するために、俺を一方通行の元へ連れていけ。」

「不可能です。とミサカは貴方の言葉を両断します。」

 

 

 

 

 

 

「こっちです、こっち!」

 

 上条当麻は急いでいた。先日卵1パックをくれたお陰であの銀髪シスターからの噛みつきを回避させてくれたあの少年、悟がさっきから返事をしなかったからである。彼があの曲がり角を曲がると…

 

「ッ‼悟‼」

 

 息も絶え絶えに、路地に横たわる悟がいたのだった。上条の呼び掛けに、悟は目を開ける。

 

「上条…やられた‼」

「君、大丈夫か!?」

「はい、何とか…」

「犯人は!?」

 

その言葉に悟は口を開いた。

 

「死体を見たのですが…何者かに空気を薄くされたようで…」

「空気を薄く?」

 

 それに悟は頷いて説明する。曰く、酸素に何らかの形で放電することによって酸素(O2)がオゾン(O3)になり、その影響で酸素が薄くなる。そのせいで酸素が少なくなり、気絶してしまった、と。

 

「しかし、死体が見当たらないが?」

「僕が気絶した後に、死体を持ち去ったのではないかと。」

「随分落ち着いているね?」

「僕、風紀委員132支部のスタッフですから。人よりは、そう言ったことの対する耐性ができているんでしょうね。」

 

その言葉に、ああ、といった具合に反応する警備員の2人。風紀委員132支部、と言えば警備員では比較的有名な支部だ。よく黄泉川以下の面々が他の隊員に自慢しているからである。その影響で、色々と『そういった』任務にも連れ出されているのだろう、と2人は判断する。

 

「とにかく、今日は気が動転していて思い出しにくいこともあるだろう。明日、警備員の…そうだな、黄泉川さんのいる支部に顔を出してくれ。」

「はい、分かりました…」

 

 

 

 

 

 その後、上条は帰ると言ってバスに乗った。常盤台の学バスだったことから、超電磁砲のいる常盤台の寮に向かったのか、と結論付ける。きっとあのお節介焼きのことに定評のある上条のことだ、きっとこの『実験』にも顔を突っ込むに違いない。

 そうならば『アレ』を持ってこなければ、と呟き、彼は夜の町に消えていく…

 

 

 

 

 

 

「お前が…お前が助けたかった『妹達』ってのは──

「…やめてよ」

「そんなちっぽけなもんじゃねえだろ!?」

「っっやめてよ‼」

 

 その言葉に激昂する御坂。右手に大量の電気を集め、こちらに放つ。ソレを受けようとして両手を広げる。

 

「──ッ‼」

 

 

 

「バカタレかテメエは」

 

 しかし、それは俺に届く前に何かに防がれる。カツン、カツンと響く足音。そして、ソイツは俺の前で止まった。

 

「さ、悟…?」

「『超電磁砲』御坂美琴だな?」

 

 底冷えするような声で御坂に質問を投げ掛ける悟。上条がそれに驚く暇もなく、御坂は返答した。

 

「…だったら何よ。」

「頼みたいことがあるんだが。」

 

 ポケットに手を突っ込み、悟は右手を上げて言った。

 

「なーに、ちょっとバカを一人、手助けしてやってほしいだけさ。」

 

 

 

 

 

樹系図の設計者(ツリーダイアグラム)』。それは学園都市が世界に誇る超高性能スーパーコンピューターである。それの試算によると20000体の欠陥電気を殺すことによって一方通行はレベル6になることができる、という訳であった。

 そして、悟は1年半、という月日をかけ、それが間違っていると証明するためのレポートを作っていたのだ。

 

「で、このレポートがレベル6になることが不可能だ、ってことを証明する物なのね?」

「ああ…まだ未完成だがな‼」

 

 御坂の言葉にそう答え、夜の学園都市を駆ける3人。上条は真剣な顔で悟に問いかけた。

 

「それで、どうやって救うつもりだよ?」

「…」

 

 悟は、そっと目を反らした。

 

「なにも考えてねえのかよ!?」

「いやあるけど…相当キツイぜ?何せ5分間一方通行から逃げ続けるんだから。」

「そんな…無茶よ!」

 

 悟は鉄パイプを握りしめ上条に返答する。御坂はそれを否定し、上条は頭に『?』マークを作った。

 

「そんなに強いのかその…一方通行ってやつは」

「ああ。奴の能力はベクトル変換。速度、力とかの、『方向を持った』力を操作する能力だ。」

 

事も無げにそう言いきる悟。上条は驚きに目を見開き、質問をする。

 

「俺の右手なら?」

「オメーが消せんのはあくまで異能の力だけだ。コンテナとか飛ばされたら愉快なスクラップになっちまう。」

 

上条の右手…『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は確実に一方通行の反射装甲を破壊し、倒すことができる。

しかし、彼はそれ以外、例えば身体能力等は普通なので、確実に上条の右手をヒットさせる必要がある。

そのためには悟と御坂が協力して彼の意識から上条を外さなければならない。そのために必要な時間、5分。ソレを学園都市第1位を倒すためには短すぎると形容するか、彼ら2人が引き付けるには長すぎると言うべきか。

 

「(…コレを使うしかねえのかなぁ…)」

 

 左手の、鉄パイプを持っている手と反対の手には1つのデバイスが。ソレは悟が生まれた理由でもあり、存在意義にもなる、『あるもの』へとなる鍵。

 

「ここだ…第17学区の操車場‼」

「(ま、使わないに越したことはない、か…)」

 

 そして、英雄とヒロイン、そして()()はその場所に足を踏み入れた。

 

 誰も傷つけたくないがために、狂った実験を遂行し、『無敵』へと相成ろうとする、一流の悪党の元へ。

 

 

 

 

 

「テメエが今度の実験に使われるダミー人形って事でいいンだよなァ?」

「はい、私はミサカ10032号です、とミサカは返答します。」

 

 ここは第17学区の操車場。世間一般からは『非人道的』で、学園都市では『いたって普通の』実験が行われる場所である。被験者…一方通行はコンテナの上に腰掛け、ミサカを見下ろしている。

 

「ハン、いっつもいっつも似たような答えを返しやがって。テメエらヤル気あるンですかってンだァ。」

 

 ミサカの答えが相変わらずなので、一方通行はフン、と鼻を鳴らして吐き捨てるように呟く。彼は既に一万体を超えるクローンを殺しており、彼の殺すクローンの番号も4桁に突入している。

 ソレがクローンだと、人形であると自分に言い聞かせなければ、もう自分の心は壊れていたのかもしれない、何て悪党に似つかわしくもない事を考える。しかしソレを直ぐに追い払い、一方通行は何時ものように話しかけようとする。

 

「チェストォ‼」

「あァン?」

 

 しかし、どこからか何か、銃弾のようなものが飛んでくる。ソレを反射すると、コンテナに穴が開く。そして、3人分の話し声か聞こえてきた。

 

「オイ悟効いてないぞ‼」

「あー…そういやアイツ装甲だけは無意識だったな。」

「アンタ達よくこんな状況で会話する気になれるわね!?」

 

 そこにいた3人。一方通行にとっては『オリジナル』の少女、御坂美琴と、黒髪のツンツン頭。そして…

 

「オイオイ…よっぽど愉快なオブジェになりてぇみたいだなテメエ‼」

「ケッ、それはテメエの方だろうが…」

 

 帽子をくい、と下げ、何時ものように、人を小馬鹿にしたような、不敵な笑みを浮かべ、その銀色の瞳を、しかとこちらに向け。

 

「拾い上げに来てやったぞ、一方通行‼」

「だったらテメエから愉快なオブジェにしてやるよ悟ゥ‼」

 

 『天地解析』…山峰 悟が、鉄パイプを右手に構え、そこにいるのだった。

 

 

 

 

「オリャ‼」

「(チッ…)相変わらず無駄に高え演算能力してんなァ‼」

「ソレだけが取り柄何で…ねっ‼」

 

 鉄パイプを幹竹割りの要領で降り下ろし、ソレを一方通行が反射する『前に』手放して、拳をつき出す悟。一方通行は舌打ちしてソレをバックステップで回避する。

 

 悟の演算能力は、レベル3という彼の能力レベルにそぐわないほど高いものである。何せ学園都市、ひいてはその能力の名の通り『天地』を解析するものだからだ。では何故悟の能力はレベル3なのか。それは彼の能力の『欠陥』が原因である。

 

 能力に欠陥がある能力者というのは、案外多い。

 例えば、能力で大怪我を負ったり、格上の能力者に、完膚無きまで叩きのめされ、自分の能力に自信を持てなくなった時。投薬や洗脳等によって、『自分だけの現実(パーソナルリアリティー)』が歪められ、演算が出来なくなった時。その能力者は『欠陥品』と呼ばれ、疎まれ、竦まれるものである。しかし、悟にあるのはそう言った欠陥ではない。単純に彼の能力が学園都市という都市にとって望ましくないものだからだ。

 

 最近少しだけ解析する『対象』を選べるようになったとは言え、元々彼はサングラスに帽子をして視界を遮っていなければ何でもかんでも解析してしまう能力なのである。

 能力を開発する研究を行っている、と言う人は必ず1つや2つ、後ろ暗いところがあるのだ。ソレを分かってまで一々彼に話をつけにいくのはリスキーな賭けと言える。何せ相手は『軍神』。下手にこちらの研究成果を握られ、暴露されるのは避けたいと思うのは、不自然なことではない。

 又、彼の能力の『測定』は非常に行いにくい。前述の理由から専属の研究者がいない彼は、何時も同じ測定方法で能力を測定している。そのため、レベル3、と言う結果を『暫定的に』機械が弾き出しているのだ。

 機能がたくさんついているパソコンが、計算に特化したスーパーコンピューターより好まれるように。

 ゲームでの極振りキャラより、多少尖っているだけのキャラが好まれるように。彼の能力とは、得てしてそう言う物なのである。

 

「ちぇりや‼」

 

 そんな、気の抜けた掛け声と共に、一方通行の命を奪いかねない拳が迫る。悟が一方通行に『触れられる』理由と言うのはいたって単純。『演算式を解析して、ソレと相反した結果を引き起こす演算を組み込んで、神経伝達をしている。』字面にすると簡単そうに見えるかもしれないが、コレは凄まじい、ともすれば悟クラスの演算能力がなければ無理な話だ。

 

 まず、能力者というのは、能力を使用する際に『演算』を行う必要がある。悟はソレを解析することを第1段階にしているのだが、コレが案外難しい。

 

 演算には、人それぞれの『クセ』が顕著に現れる、と言うのが悟の持論であるのだが、コレは今まで行われてきた学園都市での『能力開発』の分野にある基礎を、そのままひっくり返しかねないものだ。

 何せ、他人の演算領域と言うのは解析することは不可能と言われていて、『レベル1の能力者の演算を解析するのにすら500年かかる』と言うのがもっぱらの常識だからである。しかし、悟の能力はご存知の通り『答え』を先に解析する。その『答え』に当たる部分が人によって違う。よって、演算には、人それぞれの『クセ』が顕著に現れる、と言う持論を持つに至ったのだ。

 

「このやろッ…」

「させない‼」

 

 しかし、いくら解析できると言え、コンテナや線路を飛ばされるとどうしようもない。その場合は御坂がその代名詞たる『超電磁砲』や電流を用いて迎撃する。そして、5分が経過した…

 

「今だ上条‼」

「はああああああっ‼」

「なッ…!」

 

 悟の掛け声に応じ、唐突に、上条が一方通行の死角から飛び出す。一方通行は驚きに目を見開き、そして…

 

「食らえッ‼」

 

 上条の右手が、一方通行の頬を捉えた。一方通行は驚きの雰囲気を漂わさせたかと思うと、錐揉みしながらコンテナ群に突っ込む。

 

「やったか!?とミサカは確認をとります‼」

「おいこらァ‼何勝手にフラグたててやがんだこのやろッ…!?」

「く…かか…」

 

 ガラ、と崩れ落ちるコンテナ群。そこから現れた一方通行は、どこか狂気と狂喜を身に纏って。

 

「マズイ、逃げ…」

「くかっ、くかきけこかかきくけききこくけきこきかかか───

「「ぐあああっ‼」」

 

 逃げようと上条に呼び掛けるも、もう遅く。2人は何かに押されるように吹き飛んでしまう。

 

「風…空気…大気の流れ…あンじゃねェかよォ、カカ、目の前のクソ共をブチ殺すタマが、ここに。」

 

 ギィヤッハッハァ、と一方通行は、狂喜の笑みを浮かべる。自らの能力に陶酔するように。自分の能力が最強だと、知らしめるように。…親友との別れを、その心の奥底に隠して。

 




8/9 加筆修正を行いました。

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