とある科学の解析者《アナライザー》   作:山葵印

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初投稿です。よろしくお願いします。


プロローグ

 ──何度だって──

 

 

 

 ──何度だって──

 

 

 

 ──俺はやり直してやる──

 

 

 

 ──皆が笑って暮らせる、()()()()のようなものを、もう一度──

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった‼どうしてこうなった‼」

 

 自業自得という言葉を既に溝に投げ棄てているかのような発言をしつつ、少年…山峰 悟は裏路地を走っていた。

 彼は先程まである事件を追っており、無能力武装集団、即ちスキルアウトに接触することに成功したのだが自らが風紀委員(ジャッジメント)という治安維持組織の一員であることがばれてしまったため、こんな情けない姿を晒しているというわけである。

 

「明日から夏休みだというのに、この仕打ちはあんまりだと思うんですよちくしょー‼」

 

そう毒づいて、角を曲がっていく少年。後ろから沢山の足音が聞こえてくる。それに焦りを感じつつ、彼はひたすらに走っていく。

 

「チイッ‼」

 

 しかし逃げた先は袋小路。大きく舌打ちをして後ろを向くと、下衆な笑みを浮かべるスキルアウトの内一人が右手に火球を出した。

 

「発火能力者!?」

 

 ギリ、と歯を噛み締める。事前の情報からこうなることは分かっていたハズなのにどこまでも楽観的な過去の自分を殴りたい衝動に駆られるが、それで現在が変わるわけではない。

 そして、発火能力者が生み出した火球を投げ付けようとしたところで…

 

「そこまでですわ。」

 

凛とした、声がかけられた。

 

「風紀委員ですの。器物損害、傷害の現行犯で逮捕させていただきますわ。」

 

 右腕の緑色の腕章を見せつけるようにして、その少女は立っていた。

 茶色の髪の毛をツインテールにし、制服…常盤台のものに身を包んでいる。そして少女は厳しい、睨むような目をしてスキルアウトに視線を投げていた。

 

「プッ…ギャハハハ‼こんなガキがジャッジメントたぁ笑わせやがる‼」

「ジャッジメントも人手不足かぁ!?」

 

 先程と同じ、こちらを嘲るような笑い。少年は先程逃走を選択したが少女は…攻撃を選択した。

 

「ハハハハハ…は?」

 

 次の瞬間、既にスキルアウト達は壁に縫い止められていた。少女はもう一度、凛とした声で言う。

 

「聞こえてなかったようですのでもう一度自己紹介を。風紀委員第177支部所属、白井 黒子と申しますの。一応、これでも学園都市で空間転移者の大能力者(レベル4)として、末席を汚している者ですわ。」

 

 その台詞を聞き、初めて余裕を持っていたスキルアウト達の顔が青ざめる。大能力者。それは人口230万人の学園都市でも一握りしかいない存在。しかもテレポーターはそのなかでもさらに希少な能力で使いこなすのにも一苦労である。

 

「抵抗すると言うなら容赦は()()しませんけれども…どうされますか?」

 

 細い、棒状の針をとてもイイ笑みとともに見せつけられた彼らには、降伏以外の選択肢は与えられていないのだった。

 

 

 

 

 

 

「スマンな、助けてもらっちゃって。」

 

 苦笑しながらそう言った少年。彼は一応この少女…白井の先輩にあたる立場だ。しかし、能力があまりにも戦闘向きでないという理由から闘うことは難しい。

 

「本当ですわ。全く…悟先輩は初春と一緒で戦う手段を何にも持たないのですから、このような無茶は控えていただけませんと。」

「そいつぁ厳しいねぇ。」

 

 かか、と言って笑う悟に白井は目を吊り上げようとする。だが、ソレを携帯の着信音が遮った。

 

「あら、いったい誰ってお姉様!?」

「反応はやっ‼」

 

 若干引き気味にそう言って後ずさる悟であったが、目をこれ以上ないくらいに輝かせた──尋常ではないともいう──白井の様子に口を閉じた。

 

「はいお姉様なんのご用事ですのこの黒子お姉様のためなら何からなんでもお任せくださいなぐへへそうそう本日そちらに荷物が届いていると思いますがお姉様へのプレゼントではなくこの黒子がお姉様のお姿を撮影するために使う隠し──

「それ以上はいかん」

「あうっ」

 

 またいつもの病気を発症したか、と呆れながらも頭にチョップを叩き込み白井を黙らせる。頭を抑えながら通話をしていた彼女だったが、

 

「どうやらお姉様、また夜の町を歩き回っていたようですの。お先に失礼いたしますわ。」

「おう、また今度。」

 

 一礼して、ヒュンという音と共に白井は消え去った。悟は頭をかくと足で地面を踏み鳴らす。そして、彼もまた夜の町に消えていくのだった…




8/7 加筆修正を行いました。

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