赤い森のイリス   作:ぬまわに

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九話

 そこは、霊廟にしてはきらびやかに過ぎ、仏堂にしては積み上げた時間が足らなかった。

 白木の床、白木の壁、大木を一本丸々使った柱は朱も新しく、堂に座す神仏を(かたど)る像は金と極彩の赤に彩られ、眩しさを通り越し目に痛みすら感じさせる。

 熊のような、と形容すれば丁度良いだろう、堂々とした体格の男がその中央に立ち、煙草の煙を口の中で揺らし、遊ぶように口を丸め、ふ、とドーナツ型の煙を吹いて見せた。

 

「……出ねーな」

 

 アナクロな携帯電話を耳に当て、そうぼやく。

 長くコールが続き、留守番電話サービスにつながってしまった所で通話を切り、再度かけ直すと、やがて通話がつながったのか、おっとつぶやく。

 

「よぉ摩周(ましゅう)、どうだ怪我の具合は」

「ああ、こんにちわ。まーまー順調ですよ、標津(しべつ)さんはオフですか?」

「いや仕事中よ、新興宗教の皮被った悪ぃーのが居てな、異能者としちゃ凄いぞ? 洗脳系でな、百人くらい一辺に操ってみせる」

「うわ、こわ! 絶対に僕は矢面に出たくないですね」

「大丈夫だ、お前が操られたら心からのお悔やみを込めて肝臓殺し(レバーブロー)から顎砕き(ガゼルパンチ)のコンボを決めてやるよ。今ならおまけで反則の肘打ちもプレゼントだ」

「殺しにかかってますよねそれ、朱里さんだったらもっと優しく膝枕からのニッコリ笑いで目を覚ませてくれるのに」

「この前の一件で頭ぁやられてるな……可哀想に、脳CTをとっといた方が良い。あいつは無言でハイヒールで踏む系だ」

「……えらい実感篭ってるッスね?」

 

 やられた事あるからな、と標津は電話をしながらへの字に口を歪め、額の傷を掻いた。咥えたショートピースの長さが短くなっていることに気付き、最後に一息吸うと、吐き出し、ごつい皮靴で踏み、火を消す。

 ふと一瞬動きを止め、思い出したように携帯灰皿を懐から出し、少々きまり悪げに吸い殻を拾って入れた。

 

「ところで、この間の一件は結局どうなったんだ?」

「あー、あのあと報告書は見てないッスか? 一応標津さんにも送っておいたんですけど」

「老眼で見えなかったんだ」

「お爺ちゃん無理しちゃ駄目ですよ」

 

 冴えないネタのやり取りに二人は一瞬押し黙り、無かった事にした。何しろ年齢的にはそろそろ本当に危ない。

 

「えーとまあ、どっから説明すればいいか、駒ケ岳市の霊地の不安定化自体が偉品(レリック)絡みの一件だったって事は聞きました?」

「……いんや。なんだよ、そんなでかい話になってたんか」

「なってたんスよ、引き継ぎの夕張さん最初半狂乱になってました。標津さんとっとと行っちゃったんで、小さい国の人口くらい死ねって言葉が出てましたね」

「仕方ねえだろ、代わり寄越すからお前動けるなら来いってんで早速駆り出されたんだ。信じられるか? 俺まだ包帯巻いてんだぜ?」

 

 そう言い、申し訳程度に巻かれた首の包帯を摘んだ。

 

「僕は入院中で、朱里さんも通院して自宅待機ッスけどね」

「若い奴は軟弱で困るぜ」

「『俺以外は』に訂正しといて下さい、若い奴がいなくなります。んで、まあざっくり話すと――」

 

 駒ケ岳市の霊地の不安定化は葉山直人に受け継がれた偉品(レリック)、“ゲオルギウスの心臓”である事、またそれを付け狙っていた『ゾシモス』の名を冠した稀代の錬金術師。ラファエロ・コーテッサが佐藤夏希を人工生命(ホムンクルス)として()()()()偉品(レリック)を押さえる為の手駒とした事。

 そして、嗅ぎ付けた黒縄(こくじょう)(ヤン)の襲撃をきっかけに、精神的な負荷からか、覚醒を始めた“ゲオルギウスの心臓”。それを確保するために現れたラファエロ。

 そして完全な覚醒を果たした“ゲオルギウスの心臓”の持ち主の前に、聖ジョージの竜殺しの逸話のごとくラファエロは討たれ、最後に逃げ込もうとした一体のホムンクルスの中で自らの術で自縄自縛に陥ってしまった事。

 摩周はそれを話し、説明を続けた。

 

「揉めたらしいですけど、結局葉山君と夏希ちゃんは日本支部(うち)での預かりになるみたいですよ、特務課に配属だそうです」

「あー、まあ妥当なとこだな。偉品(レリック)とかあの手のは色々尖りすぎて使いどころが難しいし、ラファエロのホムンクルスとか運用以前に泥棒を心配した方が良いだろうしな」

 

 秘跡協会日本支部、特務課は名前こそ厳しく、いかにも何か裏で動きそうでいて、まったく動かない課だった。飼い殺しであり保管庫扱いとして作られた課だ。多少の自由は制限されるが、所属と少々の義務を果たしていれば良い。

 いかにも日本らしい、とふと場違いな感想を標津は抱いた。

 触らぬ神に祟りなし、であり同時に臭いものに蓋というものでもある。

 

「アメリカさんみたいに暴走許す土地も無いってのはあるけどな」

 

 制すか制す事ができないか、ギリギリまで試す。時には倫理をかなぐりさって試す。

 そういう部分でのある種の潔さ。好き嫌いはともあれ、大したものではあるのかもしれない。

 標津の小さな独り言は相手に聞こえる事はなかったらしい、摩周は若い子増えるのは楽しみですねえ、とのんきな事を言っていた。

 標津はそういえば、ともう一人の関係人物を思い出した。

 

「あの金髪のお嬢ちゃんはどういう扱いになったんだ?」

「あー、イリスちゃんですか? 乙種協力者(サポーター)という事で収まりました、色々特殊な環境の子ですが、今回の重要人物二人に親しい人物という事で」

「んー、そうか。個人的にゃあの嬢ちゃんも怪しさ満点というか、こっち寄りの人間だと思うんだがなあ」

「ええ、これ以上なく怪しいんですが、検査しても聞き取りしても過去洗ってもおかしな点が無いらしいですよ、おかしいって言えばこれ以上なくおかしい経歴ですけど」

「判断保留って事か、まー、悪い事はしそうにねえから良いけどな」

 

 標津のその言葉に、摩周は不意に黙り込んだ。数秒し、どうでしょうね、と答える。

 

「色んな女の子に会ってきた感触なんですけど、あの子今思うとカモっぽい気もするんスよね」

「カモだぁ?」

「ええ、何というか、一度惚れさせちゃえば後は手間かからずに稼がせてくれるような」

「悪党だなあ、でそのネギ背負ったカモさんが何で危ないんだ?」

「んー、何というか、何でもしてお金を稼いでくれるんですよ。売春(ウリ)どころか親騙してもね。怖いですよ、迷わないでそういう事しちゃう女の子って」

 

 標津はふむ、と唸り煙草の箱を取り出し一本咥えた。

 火を付け、同時に何かに気づいたように顔を上げる。

 

「おう、まあ大体の顛末は分かった。あんがとよ、回収班も来た事だし、またな」

「回収班……って、もしかして現場で仕事中でした?」

「おお、もう後始末だけつけて帰るけどな」

 

 うわぁ、と若干引いたような声を聞き流し、標津は電話を切る。

 入ってきた数人に向かい、煙草を持った手を上げ、声を掛けた。

 堂は気絶した信徒達が無造作に寝かされていた。

 十人、二十人では足らない、所狭しと。死屍累々という言葉のように。

 

 ◆

 

 梅雨も中ほどへ差し掛かり、夏の訪れを前に紫陽花(アジサイ)が雨に映える紫とはまた別に葉を大きくし、蔓を伸ばす。

 先日まで降り続いた雨は止んだものの、立ち上るような湿気が包み、気温だけで言えば適温だと言うのに、じっとしているのが不快になるような教室で、何人かの生徒がどうにもやる気の無い様子で、これまてどうにも疲れた様子の教師から授業を受けていた。

 放課後の補習授業だ。

 いつもはうるさいぐらいのグラウンドも、雨上がりのぬかるみのためか活動している者はいない。

 ただテニス部は早速動き始めたのか、ボールを打ち、打ち返す音と、プロ選手を真似てか、やたらと気合の入った掛け声が開け放った窓から入ってきた。

 やがてチャイムが鳴り、教師も時間を見計らって早めに一区切りをつけていたのか、時間ぴったりに授業を終わらせる。

 ばらばらとそれぞれのペースで帰り支度を始め、教室を出る。

 直人もまた同じく補習を受けていた夏希を待ち、一緒に教室を出た。

 

「……あー、二週間休むだけで結構判らなくなるもんだな」

 

 あ、に濁点が入ったような発音で直人は疲れたような声を出した。

 あはは、とこちらはどことなく余裕そうな苦笑を漏らす夏希。

 身体検査、調査、あるいは現地での調査協力、手続き諸々、事態がひとまず収まってからもその後の始末が一段落するまで結局二週間ほど学校を休む事になってしまっていたのだ。二人とも一応はまっとうな学生をやっていたので、その分を取り戻すべく、補習授業をしばらく受ける事になりそうだった。

 もっとも、ことがことだけにまだ調整の進んでいない話もあるらしく、場合によっては日本から一時的に離れる事になるかもしれず、パスポートを作っておけとも言われている。

 協会側も接してみれば別にフィクションでありがちな人体実験も辞さない秘密結社じみたものではなく、半官半民の組織であり――表向きはNPO法人の一つという事にもなっていた。高校生という立場も考えてくれて、所属はしていても拘束時間は週に一日の定期講習、義務は定時連絡と緊急時の招集には応じる事、身分証明書の携帯義務程度のもので、非常にゆるい。これで支援金として一人月二十万が入金されるのだから、時給三桁でまともにバイトをしていた直人などは貰っても良いのかと躊躇さえ覚えてしまった程だった。

 当初の担当者だった夕張という職員が言うには、このぐらいゆるい首輪と、手放すのがちょっと惜しい程度の餌が丁度良いのだと、甘そうな名前とは逆にひどく苦みの入った言葉を聞かされ、直人の躊躇もどこかに行ってしまったのだったが。

 二人はいつもしているような、いつもできるような雑談を交わしながら階段を上がり、一年生の教室の前を通り、奥まった感のある場所にある図書室に足を伸ばす。向かいは屋上に向かう細い階段だ、場所柄もあって利用頻度はあまり高くない。三年生にもなると離れすぎて尚更だ。

 扉を開け入ると、蔵書を整理しているらしい図書室担当の定年間近の教師と、それを手伝いつつ、話し込んでいるイリスの姿が見えた。

 

「だからね鉢盛先生、今時の子っていう一括りで考えちゃ駄目なんだよ。揃える分野は幅広くだ、ボッカティオ、シェイクスピア、ゲーテからボードレール、ランボーみたいな鉄板は分かる。明治大正の文学に推理小説やSFもいい、それに加えて80年代から十年刻みで漫画やライトノベルも揃えれば比較にもなるし変遷も分かる。どう偏向するかは個人に任せて提供側は満遍なく与えるべきなんだよ」

「しかしな吉野君、個人個人の裁量に任せるにはまだまだ感性が子供なんだ高校生というのはね。ネット小説の普及で尚更その傾向は強くなっているし。子供も大人も楽な方へ楽な方へと向くから、ちょっと難解だけど奥深い、味わい深い文学が見過ごされるようになってきている、だからこそそれを目につく場所に多く配置し、一人でも多くの目に触れさせるというのは大切なんだ」

 

 直人と夏希はお互いに目配せをし、くるりと背を向け退室しようとし、そして上手く行かなかった。

 

「丁度いいところに来た、二人とも、現代高校生としての意見をこの先生に聞かせてあげてくれよ。このままじゃ図書室の品揃えが固いもの一辺倒になってしまう」

 

 イリスの言葉に、大体何が起こっているか把握した直人は溜息をついて答えた。

 

「悪い。道長から渡されたのを読むくらいなんだ……よく分かんねえや」

 

 そして夏希もまた誤魔化すような笑いを浮かべて言った。

 

「いやー、あはは。あたしは雑誌とマンガくらいで」

 

 まったく頼りにならない支援に、イリスはがっくりとうなだれ、長い髪が温州みかんのダンボールにかかり、金色の模様を描いた。

 

 三人は連れ立って学校を出て、駅の方に歩みを進める。

 途中の曲がり角で西側に曲がり、田や畑の多い方向へ。以前直人は来たこともある、イリスの住んでいる、工事現場の事務所を彷彿とさせるような家に来ていた。

 ただ、昼の明かりの下で見れば、その家の姿はすぐに見てとれた。

 船などに積む、貨物を運ぶ用のコンテナだ。

 屋根などもなく、四角い形状のまま敷地の真ん中にドンと置いてあるようにも見える。

 もっとも本当に持ってきてぽんと置いたというわけでもないらしい、電気も引かれていれば、エアコンの室外機も組み付けられ、ざっくりと切り取られたような窓からはレースのカーテンが覗いていた。

 夏希は物珍しげに見回し、言った。

 

「おおー、これがコンテナハウスって奴だね。なんだかカフェみたい。ペイントしたくなってくるよ」

「出来合いのものが安く出てたからね、外装はこのままでグリーンカーテンっぽくしようかとも最初は思ったんだけど、それはそれで面倒かと思ってさ、結局そのままになっちゃってるんだ」

 

 入って入って、と言うイリスに二人は続いた。直人は無骨な外装からすれば、意外なくらい普通な内装に少し落胆する。打ちっぱなしのコンクリートの部屋や、無機質な内装というのにはそこはかとないロマンも抱いていたのだ。

 

「適当にくつろいでてよ、飲み物でも持ってくるから」

 

 玄関から入ってすぐのダイニングキッチンに二人を通す。

 ダイニングと言っても、テーブルと椅子というものは置いてなく、なにやら通気性の良さそうな、麻を太く編み込んだようなラグ・マットの上にいかにも普通な四角い座卓が置かれている。

 間もなくイリスがグラスを持ってきて、ポットの中身を注いだ。グラスの中の氷がからりと涼やかな音をたてる。

 

「時期だし、麦茶でいいよね。ちゃんと煮出した奴だよ」

 

 そう言い、自分のグラスをぐいと飲み、半分を減らし、はー、と息をつく。

 

「いやー、しかしなんだ。普通だな」

 

 直人もまたグラスを傾け、氷の音をさせると、そう言った。

 イリスは長い髪が湿気で煩わしくなったかのように、頭を小さく振り、髪を後ろで結わえてポニーテール状にしていた。くつろいだ様子で足を崩し、後ろ手で体を支え、笑う。

 

「そりゃそうさ、私だって住処は普通に住みやすい方が良い。どんなのを想像していたんだい?」

「……えーと、こう大鍋でグツグツと頭蓋骨とかトカゲとかが、緑色の煮汁で煮られてな」

「んんー、そんなに魔女イメージかなあ」

 

 直人の言った冗談に、悩むように目を瞑り、額をこんこんと指で叩く。

 そんなイリスに夏希は首を振って言った。

 

「それはない、それはないよ、むしろこうね、イリスはお城に閉じ込められたお姫様とかそういうイメージがぴったり来るよ、可憐だし、細くて可愛いし」

「お、おう……お姫様かあ、いやあ……ええ? 夏希の方こそ、ねえ?」

 

 二人の間で互いの呼び方が変わっていた。

 それに直人が気づいたのはつい先日の事だ、何やら直人の見えない所で話し合いがあったらしく、イリスと夏希、二人の間にあったちょっとした距離は狭まり、結構親しくやっているようだった。

 イリスの前身が直人の幼馴染である堂平望である事を夏希もまた知っている。夏希の体の事情もイリスは知っている。互いに複雑な事情持ちなだけに、友達として打ち解けられたのは直人としてもまた嬉しい事だった。時にどうにも入れない話をしていて寂しい気分になったとしても。

 

「ね、ねえイリスは甘ロリ系の服とか着てみない? ん、でももしかしたらクラシカルな方が良いかな、ヴィクトリアンのしっとりしたのとか。今度そういうお店行ってみようよ」

「ま、ちょっと、夏希。服はいいから、私の服とか適当なので済ませてるから」

「駄目だよ! せっかくこんな良い素材なのに。人類の損失だよ?」

 

 本当に話に入れない。というかイリスも困っているのではないだろうか、ここは助け舟を出した方が良いのだろうか、夏希がここまで可愛い物好きとは思わなかった、いや、そういえばぬいぐるみ好きでもあったなあ、などと直人が散漫な思考を頭に巡らせつつ、グラスを傾ける。

 

「そういえば、うちの妹がそういうの好きでな」

 

 ぼそっと言うとなんやかんやと言っていた二人は止まった。

 いや、と直人はぼりぼりと後頭部を掻いて言う。

 

「丁度年頃ってのもあるんだけど、ゴスロリとかそういうのにハマってるらしくて、なまじ器用なもんでさ。自分で作っちまうんだよあいつ」

「それだ」

 

 夏希が反応して顔を近づける。

 

「は……直人(なおと)、くん、妹さんって体格どのくらいかな」

「……ああ、まあ、イリスと同じくらいだよ」

 

 よっし、勝った、とどこか照れ隠しを含めたようにハイテンションにガッツポーズを決める夏希。

 力なくうなだれるイリス。

 直人は、なあ、と夏希に言った。

 

「慣れなかったら無理して名前呼びしなくても」

「……やだ!」

「やだってお前なあ……」

「だってイリスだけ直人(なお)って呼んでてずるい」

「いやまあ、それはそれで子供っぽいから俺的にはどうかと思わないでも」

 

 そう言うとイリスは頬杖をついて、寂しそうな笑いを浮かべた。

 

「私のかろうじて残ってる繋がりなんだよ、あまり取り上げないでほしいかな」

 

 もっとも、と寂しそうな笑みがまるで嘘であるかのように悪戯げな顔になると言った。

 

「ご主人様、とか直人様、とか呼ぶのもそう悪くないね。私の奴隷根性がうずうずと疼くよ」

「変なモン疼かせんな」

 

 また唐突にギリギリのネタに走ってきたイリスにびしりと手の甲で突っ込みを入れる。

 二人の様子を少し羨ましそうに見ていた夏希はグラスの麦茶を一口飲み、あ、美味しいとつぶやいた。

 そしてイリスはそれまでのぐだついていた空気を払うように、穏やかな、ゆったりとした口調で、それで、と言った。

 

「どうするか決めたかい?」

 

 一息二息置いて、直人は答える。

 

「決めた。背負うよ」

 

 きっぱりとした端的な物言いに、イリスは微笑み、君らしいねと言った。色々言い分もあるだろう、理由もあるだろう。悩みもあっただろう。それを表に出さず、決めた事は決めた事とし、それのみを言う。

 次いでイリスはもう一人に視線を移すと夏希は嬉しそうに頷いた。

 イリスは分かった、と言い二人に手を出させる。

 二週間、引き伸ばしにしていた夏希の問題の事だった。

 結局協会側にも、少なくとも気軽に貸し出せるような範囲で都合よく夏希の魂の隙間を守れるような物は無く、イリスの術で応急処置的に塞いでおくのは安定しない。それを何とかするための使い魔契約の事だった。

 座卓の上に手を出した直人は、ふと思い付き、言った。

 

「なあ、背負うって言っといて今更だけどこれって俺じゃなくイリスだと機能しないのか?」

「……君ねえ、私で何とかなるなら最初に提案してるよ。ただそれだとずっと不幸な事になるよ?」

 

 まずは乙女心が、と夏希を指差すと背景にガーンと擬音が描かれでもしているかのようにショックを受けていて直人は慌てた。

 

「いや、別にそう嫌なわけじゃなくてな、俺みたいな素人だと逆に良くない事になっちまうんじゃないかって」

 

 言葉がだんだん勢いを無くす。直人が自分に言い訳をしていたから、というわけでもない。

 夏希の表情がだんだんおかしげに、笑みの形に崩れてきたからだった。

 はあ、と溜息をつき、呆れたように髪を掻いた。

 

「夏希まで俺を引っ掛けるとか……イリスに悪い影響でも貰ってんじゃねーか?」

「心外だな、女は天性の役者っていう言葉が使い古されるほど使われてるだろう?」

「そうそう、せっかくの一世一代の告白がうやむやにされかけてるからねー、このくらいやっても罰当たらないかなーって」

「ぐ……」

 

 ぐうの音はまだ出るんだね、もっとやれ、と夏希をけしかけ、弛緩した空気の中、不意にイリスは直人の出している手に触れる。

 人差し指にわずかな切り傷が付き、血が溢れた。

 そして垂れ落ちる前に吸い上げられるように空中に浮き上がり、小指の爪ほどの球体になる。

 イリスが直人の手を離すと、切り傷は無かったかのように塞がり、血は止まった。

 

「使い魔の術式は色々やり方があるけど、今回は血を媒介にする。これはどちらかというとこっちの世界の象徴的な意味合いが強いんだけどね」

 

 目を丸くする二人の前で、イリスは宙に浮かんだままの赤い球体の前で指を指揮棒(タクト)のように複雑に動かした。

 血の雫は指揮者に合わせて演奏でもするかのように動き、躍動し、形を変える。

 

「……魔法陣とかそんな感じでもねーな」

 

 直人がそうつぶやくと、イリスは頷いた。

 

「これは直人に使った制御紋とはまったく違うやり方だからね。こっちで言う異能者の仕事に近いんだ。分類の出来ないそれぞれの形質が持つ特性(タレント)。実は当然ながら人間だけが持ってるわけじゃない、時には亡霊も、神霊、悪魔みたいな高位存在も。果ては動物の思念が集まりたまたま織りなすなんて事もある」

 

 やがて雫は複雑な意匠を刻みながら、それでいて対照的な形へと変わる。

 それは雪の結晶、そのものの形だった。

 

「まあ形にはあまり意味はないよ、直人の思った夏希へのイメージとか印象が強く作用してるだけで」

 

 なるほど、と直人は微妙に気恥ずかしい感覚を覚える。

 夜の草原の中、目に焼き付いた真っ白な夏希の姿は確かに雪を感じさせるものだった。ラファエロを好きになる事はできないとはいえ、(ネーヴェ)というセンスだけは認めざるを得ないらしい。

 やがて指の動きにもその結晶の反応が見られなくなると、イリスはよし、とつぶやく。

 

「安定した。夏希、胸元の服が邪魔になるから前をはだけて、ブラはいいから。直人はせっかくの脱衣シーンを目に焼き付けるように」

 

 その言葉に直人は慌てて目をそむけた。窓の外ののどかな畑の風景を見ながら、少し乱れてしまった動悸を静めるためグラスの氷を口に含む。きんと冷える感覚が思いのほか気持ちが良かった。

 

「残念だったね、でもまあチャンスはこれからも結構あるだろうから。あいつの記憶見た事もあるけど結構釘付けだったから強調すると良いと思うよ」

「……うん! あたし、頑張るよ」

 

 直人は意識を向けないように頑張った。

 旬の時期は過ぎたのか青々とした(ふき)が伸び放題に伸びている。その大きな葉っぱの上をカエルがのそのそと這い出て跳ねるのが見えた。雨のためか、低い場所を飛ぶ燕が横切り、何の鳥の声かも分からないが、チチチと楽しげな鳴き声も聞こえる。空はあいにくの曇り空だが雨に育まれた緑は今にも飛び上がりそうなほど力を溜め込んでいるようで、ああ夏になるんだなあ、という予感をひしひしと感じさせるものだった。

 

「直人ー、もう大丈夫だよ直人ー」

 

 そんなイリスの声にはっとして振り返ると、服を直し、不思議そうな顔をする夏希と、喉を湿らせるように麦茶を飲むイリスの姿があった。

 

「もう済んだのか?」

「ん、問題なく処置できたよ。まだ実感も何もないだろうけどね」

 

 直人は意味もなく首筋を掻き、そうだなあとつぶやく。

 何か変わったようなところもなければ、変化したと思うようなところもない。

 イリスはそういうものだよ、と言った。

 

「魂魄を接合したわけだから、あるとすれば無意識下での意識の結合、夢を一緒に見るとか。何となく同じ方向向くとかそのくらいかな。それと訓練するとよくある念話とかその手のが出来るようになるから後で教えるよ」

 

 日常生活を送る分には問題ない、と太鼓判を押す。

 ただ、とイリスはとても複雑な思いの混じった目で直人を見た。

 一瞬の事だ、気のせいだったのかと思ってしまいかねない須臾の間だった。

 

「前言っておいた通り、君の生死に彼女も左右される事になる。その偉品(レリック)のおかげで滅多に死ぬこともないだろうけど、気をつけなよ」

「お、おう」

 

 言っている事と思っている事は違う。

 直人はそう感じ、しかしどう言って良いものか判らず、口を閉ざした。

 

 ◆

 

 フランスの北東部、アルザス地方、子供に読み聞かせるようなおとぎ話に出てきそうな町並みがある場所だ。

 ただし当然ながらそんな観光に適した場所ばかりではない。街から離れれば田園風景が広がり、山にゆけば草原と岩原が視界いっぱいに広がっている。

 ヴォージュ山脈の麓、人の手もほとんど及ばなくなった、忘れ去られて原生林のようになった木々に隠れるように、緑に飲み込まれるようにその修道院跡はあった。

 新月に近い月は夜を(ひら)いてはくれない。

 鬱蒼とした森に覆い尽くされた修道院跡は、闇に閉ざされている。

 何の前ぶれもなく、青白く揺らめく光が灯った。

 

松明持ちのウィリアム(ウィル・オ・ウィスプ)ね、こっちだと随分ホラーに見られてるなあ」

 

 苦笑じみた言葉が廃墟に響き、消える。

 揺らめく青白い光に照らされ、どこか幽玄じみた色合いを見せるイリスが何かを探るように手をゆらゆらと揺らせると緩やかな風が吹いた。

 

「ん、そこか」

 

 躊躇いもなく、知っている場所であるかのように廃墟を歩く。

 人の気配に怯えたのか、崩れた石壁の下からトカゲが這い出し、音も無く逃げて行った。

 やがてかつては礼拝堂だったらしい場所に来ると、祭壇の、打ち棄てられ、朽ちて滅びようとする修道院を見守るようなキリスト像の近くまで歩き、足を止めた。

 

「なるほどね、こっちの魔法とか魔術ってのも味がある。特性(タレント)のみで突き詰めるとこういうのも出来るんだ」

 

 経年劣化もものともしない、とつぶやき、目を閉じ、幾つかの単語を唱えて足を一つ踏むと、それまであったはずの石の床が消え、突如として穴が開いた。

 

「無秩序、無意味に見えて象徴や概念で縛るか。トライアンドエラーをどれだけ繰り返したんだか……」

 

 闇に閉ざされたそこは地下への入り口であるようだった。

 青い光を伴い、イリスは無造作に階段を降りて行く。

 岩盤をそのまま削り、支えを作っただけの簡素な階段だ。ゆるやかな螺旋状に渦を巻き、地下へ地下へと伸びている。

 やがて階段を降りた場所に小さな部屋があった。

 雑多な道具、ロープだのカンテラだのが無造作に置かれている。ただの倉庫らしい。

 それを通り抜けた先、円形状に掘り抜かれたフロアの中心に人影があった。

 白い髪、白い肌。赤い瞳を持つ姿。滑らかな絹のような髪をゆるりと後ろで結んでいる女性だった。

 服装にこだわりというものがないのか、男性用の黒のスーツを着込み、ただ立っている。

 イリスが近づくと、女性は見本のような一礼をし、言った。

 

「ただいま主は不在にしております。急な来客には応じる事ができません。伝言でよろしければ承ります。それ以外はどうかお引き取りくださいませ」

 

 イリスは、知っている、と言い頷いた。

 

「ラファエロは既に協会に収容されたよ。私は痕跡から辿ってここを見つけたけど、協会だってそういう事のできる人材はいるだろう。じきにここも発見され、君たちも収容されてしまうはずだ」

 

 女性は数秒、思考するようにわずかに視線を下げ、やはり無感動に言う。

 

「そうですか。お伝え頂きありがとうございます」

「協会は、きっと君たちを放っておかない。少し探っただけでも分かった。その心臓の賢者の石だけでも非常に価値が高い。場合によっては君たちは解体され、サンプルとして保管されるだけになるかもしれない。嫌じゃないかい?」

「……嫌、ですか?」

 

 初めて不思議そうな顔色を見せる彼女に、イリスは微笑を向けた。

 

「そうじゃないかと思ってた。夏希は確かに特殊だけど、きっと夏希だけじゃないだろうなって。それなら君たちも――」

 

 言い出しかけた言葉を切り、小さく笑う。

 なんか違うな、と首を振り言った。

 

「私もかつてただの器にされていた事があるからね。勝手に同情してしまっている。ついでにちょっとの感傷もね。だから、そう。押し付けがましい話で恐縮だけど、君たちにはラファエロの代わりに私に従ってもらおうと思う」

 

 言葉の終わりと同時に、イリスの瞳がこの世のものならざる何かを映した。

 

 ◆

 

 駒ケ岳市巳浦町、駅の北口、目抜き通りからは外れた、少しばかり入るのを躊躇してしまうような路地裏に、そのバーはひっそりとある。

 80年代アメリカをイメージしたのか、裏路地にそぐわない鮮やかで少し下品な色合いの看板がかかっており、そこにはBOM HUMOR(よい気分)と太いゴシック体で書かれている。ポルトガル語だ、聞きようによってはボンホアとも聞こえるだろう。

 地下一階にある、いかにも常連しか入らなさそうなバーは、ここ数日のところ今までとは違った客層が増えてしまって対応に少々苦慮しているらしい。

 同じビルの一階、つまりすぐ上に何か魔法でも使ったかのように急ピッチでオープンした喫茶、ジュントスの人気の煽りを受けてのものだった。

 なにせその喫茶、内装は急ごしらえ、料理や飲み物に際立った特色はないものの、ウェイトレス、ウェイターの容姿が飛び抜けている。

 日本人離れ、というより日本人ではないのだろう。ラテン系が中心だが北欧系の顔立ちや中東のエキゾチックな容姿の店員も居る。共通しているのは、造ったものであるかのように、誰もがおそろしく容姿が整っているだった。

 開店から一ヶ月しか経っていないというのに、見ごたえのある店員というだけで口コミで広がりを始めている。九人の店員では十分な対応が出来なくなる日も近いのかもしれない。

 

 喫茶、ジュントスの一日の営業も終了し、店員のあらかたが勤務時間を終えて店から出た時間。

 店内のテーブル席にイリスは座っていた。

 出されたグラスのアイスコーヒーを傾け、かろころ、と氷が転がる音を響かせる。

 やがて髪を後ろでまとめた黒髪(ブルネット)の女性がバックヤードから出てきた。着ていた衣服を畳み、大きなスポーツバッグに詰め込みファスナーを閉じる。小規模なのでユニフォームのクリーニングも持ち込みだ。

 

「お疲れさま、カレン」

 

 イリスが声をかけると女性ははい、と無表情に返事をし、軽く一礼をした。

 印刷したものらしい、一枚の紙を手に持ち、イリスの横に付き人のように控え、差し出す。

 

「今月の損益計算報告です、ご確認ください」

「……ん、てかすごいな。初月で黒字出すとか君たちスペック高すぎだよね」

「基本的な人とのコミュニケーションについては教育されておりました、またロドリゴ様のお助けも大きかったと感じております」

「あいつ意外と世話焼きだしなあ、良かったらで良いんだけど、あいつが困ってたら助けに行ってやってくれよ。命令じゃないよ、本当に君の気がむいたらね」

 

 イリスは不思議な言い回しをし、コーヒーを一口すする。

 カレンと呼ばれた女性は少し戸惑うような色を表に浮かべていたが、やがて、あの、と口を開いた。

 

「疑問があります、オーナー」

「ん、なんだろう?」

 

 イリスが聞くと、胸のポケットからメモを取り出し、イリスに見せ、言った。

 先日、何度も顔を見せていた客から渡され、どんな意味なのか計りかねているのだと。

 目をやり、なるほどとイリスは頷いた。そこには名前とSNSのアドレスが書かれている。

 

「カレンを好きになった客が、客と店員じゃなくもっとプライベートな関係になりたがっているんだよ」

 

 カレンはそれを聞くとしばし黙り込み、考えるように二つ三つ瞬きをした。

 これでいいのか、と言うように小首を傾げる。

 

「私と繁殖したいという事でしょうか?」

 

 直人がいれば吹き出していたかもしれない言葉に、イリスは動じることもなくうん、と頷いた。

 

「根底にはそれがあるんだけど、人の感性は複雑に出来ているからね、そこに至るまでの経緯、それを過ぎてからの事に色々な遊びをもたせるんだ。そして感情を大きく揺らせる。その振幅が多様性を生む」

 

 カレンは困惑したように眉尻を下げた。

 

「どのように対応すれば良いでしょうか」

「カレンが不快に思わない人物なら、不快に思わない程度まで話してみると良いよ、情報漏れとかは気にしなくていい、私が何とかする。不快な人物だったり一足飛びに性交しようとする短気な奴だったらゴミ箱に物理的にポイで。でも殺しちゃ駄目だよ?」

 

 承知しました。と頷くカレンに、イリスは笑顔を向けて言った。

 

「最近疑問が多くて嬉しいね。他の子達は?」

「疑問とは違いますが……」

 

 一拍置いて続ける。

 

「カーリサとローザが店内の飾り付けの花の事で意見が違い、言い合いになりました」

「最初から性格がちょっと違うっぽかったしね、好みも別れて来たんだ」

「また、スヴェン、ベルティーナはもう少し体を動かしたいようです」

「……身体能力高いからなあ、後でどこか暴れても良さそうな場所を探しておくよ」

 

 一通りの事を聞き、イリスは穏やかな表情で目を瞑り、開いた。

 ラファエロの拠点から九人のホムンクルスを引き取り、偽装させ人として暮らさせてひと月と少し。

 たったそれだけの期間だったが、少しずつ変化が現れ始めている。

 

「マスター」

 

 カレンがそう呼んだ。『主人』の事を人口に膾炙(かいしゃ)された言葉で何と呼ぶのがふさわしいのか、それを聞かれた時に教えた言葉だ。

 

「私は、私達があなたに連れて来られた事を、未だ良くも悪くも思えません。理解の外にあります。ただ、あなたがそれを理解させたがっているのは知っているつもりです」

 

 そしてカレンはやや躊躇ったように口をつぐみ、本人は気づいているのかいないのか、おずおずと、怖がるように口にした。

 

「それを理解した時、もしかしたら私はあなたを恨みに思う時が来るのかもしれません」

「うん」

 

 イリスは頷く。そして思った、カレンは本当に賢いと。

 賢者の石を核に、一番最初に造られたホムンクルスなのだと言っていた。それゆえなのだろうか。

 そうではないだろう、造られた生命といえど、存在を始めた瞬間からそれは一つの個性と揺らぎを備えている。

 知らない事を、知らなくとも知識の積み重ねで推察出来る。

 もしかしたらカレンは彼女たちの中ではもっとも臆病な性格になってしまうのかもしれない。

 それも良いのだろう、臆病は決して悪い事でも良い事でもない。

 

「その時は存分に恨んで殴りかかっておいで。私は私の我儘で連れ出したんだ、それはしっかりと受けるよ」

 

 ラファエロ・コーテッサは夏希の感情を見て驚き、成長だと言った。

 きっと娘と言いながら、やはり道具にしか思っていなかったのだろう。

 だからこそ驚く、自分に歯向かった程度で驚く。

 しかし、錬金術師としての腕は、創り手としてはやはり超一流だったのは間違いないようだった。わずかな期間でこうまで感情を育て上げられるのだから。

 ラファエロは残した道具たち、道具だと思っていた最高傑作が人間により近づいているのを見たらどう思うだろうか。

 ふふ、とイリスは含み笑いをこぼす。

 堂平望、その父母の敵討ち――というには強弁に過ぎる。

 既にイリスは違う存在であるし、年月の無情な重みでそんな記憶もかすれがちだ。結局イリスがやりたいからやってるという部分が多いのだろう。

 ただそれでも――

 

「何も知らない間に全部終わってたなんて嫌だ、みたいな事言ってたな」

 

 以前、直人が漏らした一言を思い出す。

 ほんとに君は勘所だけで要所を押さえてしまう、イリスはそう思い、あまり意味もなくテーブルにつっぷした。

 何もできなくても、あるいはもう終わった事でさえも。

 自分がこの世界から流出した原因、父母の事、大切な幼馴染、新しい友人、面倒を見ようと思ったホムンクルス達。その全てについて、知る事ができて良かったと感じた。

 

「ああ、なんだ」

 

 私は帰ってきて良かったと思ったんだな。

 イリスはすとんと、心の中で何かが落ち着く感覚を覚える。

 テーブルの冷たさが、頬に気持ちよく沁みた。


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