パダップ君達との試合もなんだかんだもう後半戦残り10分となり、ラストスパートといったころ合いなわけだが⋯⋯
「必殺技が効かない⋯素手で止めるってなんだよ⋯⋯」
「ゴールからシュートっておま⋯⋯」
「分身で10人分補うってなんぞ⋯⋯」
「追い抜いたんだ、なのになんで目の前にいるんだよ⋯⋯」
「もうだめだぁ、おしまいだぁ⋯⋯」
「笑え⋯笑えよ⋯⋯」
「もう一回!今のもう一回見せて!!」
初めの面影が嘘のようだ、一人だけ他とは違った意味だが⋯⋯それにしてもバダップ君が酷いな。
「⋯⋯⋯」
FXで有り金全部溶かした人の顔になってやがる⋯⋯また、やり過ぎてしまったな。
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デススピアーとは、バダップにとって強力な必殺技というだけでなく実力の象徴でもある。
それはバダップだけでなくオーガ全体の認識である。そのデススピアーがいま目の前にいる久遠沙我にいともたやすく止められてしまった、その事実がオーガ全体に衝撃を与えた。
「チッ⋯フォーメンションを変えるぞ」
だがオーガは無能ではない、確かに衝撃は大きかったがそれで混乱することなどない。事実を事実として受け止めることができる、故にキーパーの前にDFとMFを五人配置しゴール前を固め、残り全てを前方に配置した。
『デススピアーを素手で止める守備力、誰もが反応できなかった程の攻撃力』
この課題を解決するためには力技ではいけない、『デスブレイク』というデススピアーを超える必殺技があるが、これも止められてしまうだろう。また素手で止めるかもしれないが、必殺技を使われる可能性がある。ただでさえ止められる可能性があるのに必殺技を使われてしまっては確実に止められてしまう。
そのため手数で隙を作り攻める戦法に出たのである。
ゴール前に配置されたメンバーは言うなれば肉壁だ、彼らの役目は二つあり一つは相手ゴールから放たれるシュートを体を張って止めること、二つ目は止めきれない場合キーパーが反応できるまでの時間を稼ぐことである。
だが、正直この役目を果たすのはかなり難しいだろう。大方のシュートコースは予想できても完全には無理だ、三分の一でガードできるかといったところだ⋯⋯
「だからどうした」
我々はオーガだ、敗北などありえない、あってはならない。我々が求めるのは勝利のみ、勝ってサッカーを捨てさせ任務を達成する。そのためにも⋯⋯
「失点などもうない、あるのは我々の勝利だけだ!」
その宣言はオーガ全体に響き、下がりかけた士気を大いに上げた⋯⋯のだが
「あ、ちょといいかい?」
この時バダップに電流走る。
背筋に汗が流れたのを感じた、冷や汗というのだろうが何故それを感じたのか理解できないでいる。まだ何もしておらず声をかけてきたというだけなのに、本能と呼ぶべきものが全力で脳に信号を送り出した。
『やめろ』『言うな』『聴くな』
ふと、後ろにいるメンバーに目を合わせると自分と同じように顔を青く染めたのが見えた⋯⋯
「流石にこの人数差はきついから増やすけどいいかい?」
一瞬何を言っているのか理解できなかったが、それを理解した瞬間の反応は人生で一番速かったと確信している。全員が全力で『やめろ!?』と言おうとした、ただ一人を除いて⋯⋯
「やm「何それ見たい!!」!!!???」
『何故だ!?』と声の主であるミストレを見た『な、なんて顔してやがる?!』、まるで憧れの人を見るかのようなその顔に戦慄した⋯⋯『女顔だからっておま、しかも相手そいつかよ!!?』この時以上にオーガの意思が一つになったこともないだろう。
「ありがとう。なら10人分増やすな、これで人数同じになるから丁度いいだろ」
「え」
久遠沙我が10人増えた。自分でも何を言っているのか分からないから安心してくれ。
「分身技を覚えておいてよかった、やはり役に立つ」
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残り10分も終わり試合終了、バダップ君達の目から光が消えてえらいことになってる。
「さっきの見せてよ!」
この子以外、あとさっきから何かと必殺技をねだってくる。ああもう袖ひっぱちゃダメだって、伸びちゃうから。
「分かった、見せるから袖を引っ張るな」
「え?ああ悪い、ちょっと伸びちゃったか?」
シュンってなるなもう可愛いな。なんか冬花ちゃんみたいだ、この子のほうが活発的だけど。
「大丈夫だから気にしなくていい。で、さっきのって何見せればいいんだ?」
「星がバァー!ってなるやつが見たい!!」
身振り手振りで一生懸命アピールしてくる⋯⋯うん、尊い。
「よし分かった、スターダストレボリューション!!」
ボールを蹴り上げ空中からシュートを放つ、それは幾千万もの光を描く流星となりゴールに降り注いだ。下ではあの子が目を輝かせて何かを言っている、聞こえはしないが喜んでいるようでよかった。
それと反比例するかのようにバダップ君達は体を震わせ始めた⋯⋯
俺が悪いのだろうが、別に傷つかないわけじゃないんだぞ?
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バダップ君達が帰るときに教えてくれたけどあの子、ミストレちゃん⋯⋯女の子じゃないのね。『女の子は君一人なんだね』と聞いたら『男だよ?』と返され変な声出た。
ミストレちゃんにすごい笑われてしまったよ。
その後自然とちゃん付けで呼んでしまった時は起こられると思ったんだがね?
『べ、べつに嫌じゃないから⋯その呼び方でいいよ』
⋯⋯男なんだよね?なんかもう見た目といい仕草といい女の子にしか見えんのだけど。
『また会いに来るからね!さっきの技教えてよ!!』
嗚呼、尊い⋯⋯
「で、遅くなったと?」
まさか公園に戻った時にはすでに夜だったとは、聞いてないよバダップ君⋯⋯
「いや、あの「言い訳ですか?」なんでもありません」
このヒルダさんとリフィアさん笑ってるのに笑ってないや!
「私達もあまり怒りたくはないので今日はもういいです」
「ただし」
『次はありませんよ?』
「⋯⋯はい」
おまけ:その後のオーガ
「ヒビキ提督、任務失敗です⋯⋯」
「バダップ」
「はい⋯⋯」
「ラーメン、食うか?」
「ありがとう、ございます!!」
「なあなあエスカバ!」
「なんだよ」
「今度会う時はどんな服がいいかな、軍服は論外だとして⋯⋯か、かわいい系の服がいいかな?」
「⋯⋯知らねぇよ」
男の娘ヒロインについてアンケートだオラァ!?※なお必ずしもアンケート通りになるとは言ってない。
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鬱丸絶望太
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亜風炉照美
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フェイ・ルーン
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ユーリー・ロディナ
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ちくわ大明神