「君の両親死んじゃったんだってね!」
俺がそう言うと冬花ちゃんの表情がだんだんと悲痛なものへと変わっていった、呼吸も荒くなっていき、虚構を見つめる暗い瞳には怯えが見える
「いや~、大変だったね、辛かったろうね、まあ僕にはそんなの分かんないんだけどさ?」
それにしてもよく回る口だな。
「さっき外で聞いちゃったんだけど君さ、記憶消してもらうって本当?」
「⋯⋯っ」
冬花ちゃんの雰囲気が怯えながらも怒りを含んだものに変わった
「なんで消すの?辛いから?悲しいから?苦しいから?逃げたいから?それとも⋯⋯」
俺はそのまま冬花ちゃんを追い詰めるような質問を続けた、そして⋯⋯
「やめて!!」
冬花ちゃんの悲痛な叫びが病室に響き渡った
▼▼▼▼▼
冬花ちゃんの叫びは病室の外にまで響いたようで、廊下で話していた二人が慌てて入ってきた
病室の俺と冬花ちゃんの状況を理解した久遠さんが表情を厳しくして俺を問いただそうとしたが、それよりも先に冬花ちゃんが動いた
冬花ちゃんは俺のほうに近づくと、俺の両肩を揺らしながら抑えていたものを語り始めた
「なんで、なんでそんなに苛めるの⋯⋯」
「辛いことから逃げちゃダメなの?悲しいことから逃げちゃダメなの?苦しいことから逃げちゃダメなの?」
「別にいいじゃない逃げたって!そんなもの覚えてたって何も良いことなんてない!!」
「そんなもの覚えてたってパパもママも帰ってこない!!」
冬花ちゃんの心の叫び、とても脆くて今にも崩れてしまいそうなそれは、こんな少女が持っていていいものではない
そして久遠さんや冬花ちゃんが選んだ記憶を消すという選択は、決して間違いではないのだろう
でも、それでも⋯⋯
「それでも、記憶を消すなんてしちゃいけないよ」
「どうして、どうしてよ!?」
冬花ちゃんは顔を歪ませ、瞳から涙を流しながら問いかける
「記憶が消えるっていうのは、今までの思い出を全て無かったことにするってことなんだよ、嬉しくて楽しくて、幸せな、忘れたくない大切な思い出が、自分にはないっていうのか?」
「ちがッ!?⋯⋯でも、でもでもでも!!!」
「人が死ぬ時は、誰かに忘れられた時だと俺は教えられた」
「あ⋯⋯」
「もし君が忘れたら、君の中で記憶として生きている両親は本当の意味で死んでしまうことになる⋯⋯君は本当にそれでいいのか?」
「私は⋯私は⋯⋯」
▼▼▼▼▼
◇月◇日
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯疲れた。
いや流石にこれだけ書いて終わりなんてことはしないよ?
取り敢えずここ数週間のことだがまずは冬花ちゃんの件、記憶消去をする催眠療法は少し考える時間がほしいと冬花ちゃん自身が二人に言った。本人の気持ちを尊重するということで二人はそれを承諾した。
やり方は最悪だったが俺の言葉は少しだが伝わったらしい。因みに久遠さんからはめちゃんこ怒られました、無表情で淡々と怒られるってやっぱキツイね、四時間も怒られるとは思わなかったよ。
それから二週間後、もう一度冬花ちゃんに会いに行ったのだが、久遠さんから『前のようなことはするな』と注意されてしまった、まあ当然だよね。
病室に入ると冬花ちゃんは読書をしており、俺の姿を見ると気まずそうな顔をした。
しょうがない、逆の立場なら俺だってそうなる。
てか久遠さん挨拶済ませたらすぐ出ていくんじゃないよ、冬花ちゃん読書に集中しようとしてたけど横目でチラチラ見てくるし目が合うと本で顔隠すし、気まずさカンストだよ。
その日は久遠さんの用事が終わったらすぐ家に帰ったんだけどさ⋯⋯
何故か家の住人が一人増えました。
どうやら久遠さんの用事が冬花ちゃんの引き取りだったらしく、一週間前からすでに準備はしていたらしい⋯⋯
おっふ。
◇月▼日
冬花ちゃんが一緒に暮らすようになってから数日、軽い挨拶や会話程度なら出来るようになったが目を合わせようとするといまだに逸らされる⋯⋯まだまだ道は長いらしい。
◇月◆日
以前から久遠さんに『何かスポーツをやれ』と言われていたので町内のサッカーチームに入ることにした。
⋯⋯ごめん訂正させて、サッカーチームに入らざるをえなくなった。
言われた当時は水泳にしようと思っていたのだが、久遠さんが『サッカーはどうだ・サッカーはいいぞ・etc』と何度も繰り返し勧めてきて気づいたら時には逃げ場はなくなっており、昨日の夕飯を三人で食べていたとき『明日からサッカー頑張れよ』と突然言われた。
思わず『うん⋯⋯え?⋯⋯え”!?』と聞き返した俺は悪くないと思う。
◇月●日
今日からサッカーチームでの練習が始まったのだが⋯⋯
ドリブルって分身したりするものなのか?ブロックって自分の影を伸ばしたりしてやるものなのか?シュートってあんな上空から打つものなのか?キーパーってジョ〇ョ並みのオラオララッシュができにゃならんのか?
俺もできんことはないが、普通の子供達まであんなことできるとは思わんかった。
神様が俺に『これ絶対必要になると思うから持っときな、あとそれを十全に扱えるようにちょっと鍛えようか?』と言って鍛えてくれたのが何故か分かったよ。
だからこの世界に生まれて初めて少し本気だしてみたんだが⋯⋯
『⋯⋯⋯⋯』
なんかドン引きされた、解せぬ。
▼▼▼▼▼
今日の朝、珍しく『沙我』から相談を受けた
正直な話、私は沙我が何を考えているか分からない、初めて会った時から子供にしては落ち着きがあり、大人らしい子だと思った
引き取ってからは朝食や弁当、はてには夕飯などの炊事は何時の間にか沙我の担当になっていた
沙我の作る料理は私が作る物よりも美味い。包丁や火の扱いはお日さま園で覚えたらしい。沙我はそういった炊事や洗濯、掃除といったものをちゃんと出来る子だ、だが⋯⋯
沙我はあまりにもちゃんとし過ぎている
この年の子供なら、大人が言ったことに反発するものだ、反抗期に多少個人差はあるのだろうが、お日さま園にいた頃から沙我は一回も文句を言ったことがないらしい⋯⋯
私はそんな、大人らしく子供らしくない沙我が心配だった。
だから初めて沙我が反発してきたときはとても嬉しかったんだ⋯⋯それと同じぐらいへこんだがな、これが親の気持ちというやつか
沙我を冬花と合わせた時はまさかあんなことになるとは思わなかった
『人が死ぬ時は、誰かに忘れられた時だと俺は教えられた』
あの言葉が頭から離れない、まだ八歳の子供が言う言葉か?それにあの沙我の寂しそうな顔⋯⋯
私はお前の過去について詮索するつもりはない⋯⋯だが、仮にも私はお前の父親だ、父親は子供の支えにならなければならない
お前が弱音を吐ける、そんな父親になってみせよう
そう誓った私にとって今日の沙我からの相談はその第一歩と言えるものだ。今まで私に相談なんて一度もなかったからな、若干私は気分が高揚している
どうやら沙我は自分の必殺技が、周りの子達から引かれてしまいどこかおかしいのか見てほしいらしい
なるほど⋯⋯ん?ちょっと待て、沙我はまだサッカー始めて一日のはず、なのにもう必殺技を持っているのか?
『あ”⋯⋯お、お日さま園の皆でよくサッカーしてたからその時に覚えたんだよ!うん!』
なんだか酷く焦っている気がするが気のせいだろう、因みにポジションはキーパーだそうだ
近所の公園に移動した私達は軽めの体操で体をほぐし位置についた
『いくぞ沙我』
『はい!』
久々のシュートだが、『お父さん凄い!』ってところを見せてやろう。現役時代のままとはいかないが、なかなかのシュートだと思う⋯⋯あ、でもこれじゃ必殺技が見れな『聞け、獅子の咆哮を!!』なんだか沙我の様子が⋯⋯
『ライトニングプラズマ!!』
瞬間、無数の光がボールに炸裂し、私のシュートはいとも簡単に止められてしまった⋯⋯
⋯⋯おっふ
名前:久遠 沙我 〈クドウ サガ〉
性別:男
容姿:まんまサガです。
男の娘ヒロインについてアンケートだオラァ!?※なお必ずしもアンケート通りになるとは言ってない。
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鬱丸絶望太
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亜風炉照美
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フェイ・ルーン
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ユーリー・ロディナ
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ちくわ大明神