弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
さて、これからどうしようか。依頼は達成。毛皮は持って帰るとして・・・。
「ギルに何かお土産でも持って行った方がいいのかな」
私がウルク離れるって言ったら凄く渋ってたし、でもやっぱり帰らない方がいいかな。
私もギルももうそろそろ子どもじゃなくなる。特にギルは王様だから四の五の言わず世継ぎ問題に直面するだろう。そうなるとはっきり言って私は邪魔者である。ギルとの関係性がはっきりしていない女。それがお妃様にとってどれほど苦痛になるか。それなら素直に「愛人です」とか言われてたほうがマシである。
「私の場合、ギルと同じ半神半人っていうだけで後ろ盾とかさっぱりないからなあ」
元々この世界にいたわけじゃないのだから当たり前といえばその通りなんだけどね。あーあギルが結婚かあ・・・きっと国一の美女とかをもらっちゃったりするのだろう。それで私以上にその人のことを着飾って、褒めて、極めつけに「好き」っていう。お似合いの仲睦まじい夫婦になっていく。ギルを好きな身としては嫉妬してしまうのだがその反面、ギルが幸せならいいかなとか思っているところもあったりする。ばかだなあ、私。
そんな風に思っているとリオ(子ライオンの名前)が何かを引きずって帰ってきた。実はこの子は前科持ちであり、珍しいものをよく引きずって持ってくるのだ。どっかの誰かさんの死体に嚙みついてた時なんか、「NO、ヒューマンミート!リリース!」なんて言いながら引っぺがしたのだ。
そして今回引きずられてきた哀れな被害者を見るとそこには――――――目を回している美の女神様がいた。
****
「本当に、うちの子がごめんなさい・・・」
「ええ、本当に!全く、誰に似たのかしらね!」
女神様、お怒りモード。話によるとやや離れたところからこちらの様子を窺っていたらしいのだが、気配に気づいたうちのリオが天舟から引き摺り下ろすようにして強引に連れてきたらしかった。というかリオ、仮にも君の元ご主人様に何してるの?
「もう最悪よ!どう落とし前つけて・・・・て、あら?貴女が持ってるのって・・・・」
「ああこれ?さっきこの子を倒したときにドロップしたの」
綺麗に纏めた大きな毛皮と「この子!」とさっき仲間になったウサギを見せると女神様・・・ええと、イシュタル様は目を輝かせる。
「お父様にごねた・・・んん!おねだりした白の毛皮!覚えていてくださったのね!」
「え」
アヌ神よ・・・あんた娘のために私をパシリにしたんか。娘に対して甘過ぎなんじゃ・・・
「と・に・か・く!その毛皮は私がお父様に譲り受ける予定のものよ。なんならこの場で直接引き渡してもいいのだけれど」
「いいですよ、はい」
私が素直に渡すとイシュタル様は意外そうな顔になった。
「案外渋らずに渡すのね・・・まあ、私もその方が楽だしいいのだけれど・・・」
「何か?」
「いいえ、なんでもないわ・・・・あと、その、戦ってる貴女の姿、悪くなかったわよ」
「え?」
「あーもう!用は済んだし私、神殿に帰るから!さよなら!」
「うん、またね」
「!、ふん!」
そしてそのまま女神様が遠くなるのを私たちは見送るのであった。そのとき見えた女神様の顔がやや赤かったのは黙っておこうと思う。
イシュタルは素直じゃないけど主人公のことを認めてます。どうしてもツンデレっぽくなっちゃうのは仕様。