弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」   作:紗代

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教会大集合からの停戦通告回です。
ちょっといろんなフラグ建て過ぎた気もします・・・回収しきれるかな・・・・


停戦決定!~でもすべてが終わったわけじゃない~

大聖杯の元に行って汚染の確認に行くと、いや確認するまでもないほどの有様だったけど、とりあえずこのまま戦争を進めてはまずいと思い雁夜さんと話し合った結果、教会に声をかけて停戦してもらうことにした。教会に報告しに行った時点で綺礼さんは二つ返事で同意してくれたものの、監督役である璃正神父は認めたくなさそうな険しい顔をして渋っていた。なのでなら一緒に確認しに行けばいいということになり、連れて行ったら血相を変えて他の陣営のマスターたちに招集をかけ始めた。そして全陣営が揃ったのを確認して本題に入った。

聖杯が汚染されていること、そのせいでこのまま優勝者が出たとしても歪んだ形で叶えられるため破滅願望者でもない限り碌なことにはならないこと。

 

そこでライダーのマスター(ウェイバー・ベルベットくんというらしい)が手を挙げた。

 

「質問なんだけど、その歪んだ形で叶うっていうのは例えばどんな風に?」

「・・・前当主に聞いたところによると願いを叶える手段が「何かを殺す」っていうことになって回りまわって叶う、ってことらしい。だからよく聞く「金持ちになりたい」とか「世界平和」っていうのを願ったりすると前者なら世の中の金持ちや貴族とその相続人や後見人を全員殺して財産を独占するとか、後者は――――――――――――世界平和の考え方にもよるかもしれないけど、たぶん願った本人以外の生物がみんな死ぬ」

「みんな、死ぬ?」

「ああ、「争いがなくて誰も傷付かない」ことを願うならほぼ確実だと思う。だってほら、誰かと関わったら絶対に何処かでぶつかるだろ、価値観も生い立ちも嗜好も宗教もそれぞれ受け取り方や考え方が違うんだし、もし仮に全て一致する、全てを受け入れてくれる存在がいたとしてもそいつだって一人の人間で自分じゃないんだ。途中で考えが変わるかもしれない。たとえ同じものを見ていたとしても同じものを感じているとは限らないんだから。「生きている限りみんな傷付く」なら「これ以上誰も傷付かず、争いがない=死」っていう方程式になりかねない。となると起きるのは「全人類の虐殺」に行き着くんだ」

 

この場の空気がより一層凍り付いた。セイバー陣営のアイリスフィールさんと黒ずくめの男性・・・衛宮切嗣さんはその中でも一際沈んでいるように見えた。

そんな中一人だけ声を上げる人がいた――――――遠坂さんだ。

 

「待ってくれ。それはあくまでも俗世的な願いだった場合だろう、なら我々の魔術師特有の願い、「根源への到達」ならば叶うのでは?」

「それについては俺がお前に答えてもお前は納得しないだろうから交代する。シールダー、頼めるか?」

「はい。まず、根源に行くことは可能です。サーヴァント七機をくべればその膨大な魔力で世界に穴を開けてそこから根源の渦に入ることができます」

「なら「ですが、あなたは根源に到達した後、一体どうやってこの世界に帰ってくるおつもりで?」え?」

 

希望を見出したような目をしていた時臣さんだが私の言葉に固まった。

 

「え、っと。たぶん聖杯に溜まった魔力くらいだと行きの片道切符くらいが精々で帰りの分はゼロですよ?」

「そんな、馬鹿な・・・」

「貴方がよく根源や魔術に関して語っていたので、てっきりもう準備ができているからこの戦争に臨むのかと、思ったんですけど・・・・」

 

この前のことが効いているのか前に会った時より結構やつれているように見える。だからと言って容赦なんてしないけど。

 

「そういえば、あなたのサーヴァントから伺いましたが、ご息女は今意識不明の重体なのでしょう?なぜその回復を願わないんですか?根源到達できる可能性はご息女が一番高いのでしょう?同じような理由で下の子をろくに下見もせずにホイホイ他の家に押し付けたのでしょう?父親らしさを少しでも持っているなら根源なんかよりまず子供の方を優先すべきだと思うのですが」

「こ、根源なんか?!」

「そうですよ、根源なんかより、です。仮にもしあなたが到達し魔法使いになったとしましょう。けれど、永遠なんてものはない。だから次の世代に引き継ぐのでしょう?確か第五魔法の蒼崎は代々魔法を後継者に引き継いでいますし、第三魔法だってそのものは失われていてもその系譜であるアインツベルンがこうしてその一部を活用しているから忘れられていないんですよ。はっきり言いましょう。魔法使いだろうが魔術師だろうが身内を犠牲に利己的な行動に走った人は大抵破滅します。そのいい例があなたが頼りにしていた間桐のご老体ですよ。拘束されて魔力を根こそぎ浄化・吸収されて、蟲になってマスターと桜ちゃんを乗っ取ろうにも私の力と魔術講座で力を付けた二人に敵うはずもなく、ついこの間までヒエラルキーの頂点だったのにほぼ一瞬にして最底辺に転落。少し前に成仏するまでずっとそのままでしたから」

「しかし・・・」

「根源到達は魔術師の悲願だから何をしても許される。ですか?・・・・・ふざけるのも大概にしなさい。一体何人の人があなたたち魔術師のその狭い狭い尺度で犠牲になったと思ってる。凡俗なぞ知ったことかみたいな風に思っているのなら思い直しなさい。その凡俗を守るのはあなたたち貴族なのよ?ノブレス・オブリージュを知っているでしょう。むしろ責任を負うべき存在が何をしているの?土地の管理者は神秘の秘匿だけしていればいいの?魔術師を管理していればいいの?ちがうでしょうが!!」

「あ、うぅ」

「いいですか?貴方も私たちも魔術師や英雄である前に人間なんです。たかが魔術回路たかが伝説それがなくなればただの人間。貴方の軽蔑する凡俗なんですよ。あなたのやってることは「家庭を顧みない父親そのもの」。凡俗が当たり前のようにしていることさえできない貴方にマスターを見下す権利も義務もありません!そんな貴方より毎日を必死に、一生懸命に生きている人の方が立派です!」

「わ、私はただ・・・・」

「言い訳無用!!」

 

遠坂さんの反論を聞くことなく私は後ろに回り込みジャーマンスープレックスを決めた。だってこの人ここまで言っても弱ってるくせに「自分は間違ってない」みたいな目してるんだもん。私が説得したところで無駄だろう。だから肉体言語で沈んで・・・・コホン、納得してもらった。ちょっと頭が床にめり込んで某○神家ポーズになっちゃったけどどうしようこれ・・・・そう思って振りかえると雁夜さんはいい笑顔でサムズアップ、ギルは大爆笑、ウェイバーくんは真っ青、ライダーはなぜか感心しており、なんだかもうカオスだった。

とりあえず言わなくちゃならないことは言ったし、璃正神父が停戦を宣言してくれたのでお開きになった。

ただやっぱり私がいろんなことを言ったのに納得いかない人だっているわけで。それが目の前にいるケイネス・エルメロイ・アーチボルトさんである。

 

「たかがサーヴァント風情が我々魔術師の事情にしゃしゃり出るなど身の程知らずめ」

「主、シールダーは・・・」

「うるさい!発言を許可した覚えなどないぞ、ランサー!!」

 

ランサーにつらく当たるケイネスさん。この人聞くところによるとこの中で一番強い人(魔術師として)っていう話なんだけど・・・なんでこんなにヒステリック・・・というより余裕がない感じなんだろう。

 

「あの、失礼を承知で反論させていただきますが、我々サーヴァントをどのような存在だと思っていらっしゃるんですか?」

「ふん、ただの使い魔に決まっているだろう、そんなことも分からんのか」

「ではなぜそんな使い魔であるランサーにつらく当たるんです?機械的に接すればいいのでは?」

「部外者は黙っていろ!!こいつのせいで私の聖杯戦争は散々なものでな、そのうえ聖杯は呪われているときた。これでは名声を手にするどころかマイナスではないか!まったく・・・」

 

ケイネスさんはぶつぶつと文句を言い始めしばらく止まりそうにないのでランサーに原因を教えてもらうことにした。なんでも召喚の際それに付き添っていた婚約者がランサーを見て呪いがかかり、彼の虜になってしまったのだと、そのためケイネスさんはランサーにつらく当たるようになりそのままここまで来てしまったらしい。うわー、本物のドロドロ愛憎劇じゃないですか。でも魅了を解除すればすべて丸く収まるんじゃないのそれ?

 

「なら私がその人に掛けられたチャームを解除すればいいんですね」

「「は?」」

 

こうして、私たちはランサー陣営の拠点に向かうことになったのだった。




ちなみに床の修理代は間桐の方から教会親子に出ます。一応自分のサーヴァントがやったことですから・・・でもそれより時臣ザマァでm9(^Д^)プギャーなのでごきげんです。
次はランサー陣営とセイバー陣営の回にしようかなーと思ってます。

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