弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
今日は桜ちゃんの修行最終日。基礎から応用、発展までのテストをクリアした桜ちゃんは嬉しそうにこちらにやってくる。
「先生!全部終わったよ」
「うんうん、綺麗に出来てるしこの分なら問題ないわね。おめでとう桜ちゃん、これで晴れて免許皆伝です。というわけでご褒美にこれをあげる」
「白い、リボン?」
「うん、ちょっとした礼装。これからも精進するように!」
「ありがとう、先生!」
そんなふうにほのぼのとしていると雁夜さんが真剣な面持ちでやってきた。
「シールダー、ジジイが話があるらしい。俺だけだと嘘や出任せ言われるかもしれないし、一緒に来てくれるか?」
「分かりました」
*****
所変えて蟲蔵。と言ってももう蟲はおらず染みついた魔力も何もかもを私が浄化しもう形だけになったそこには、黒い鎖で繋がれ抵抗する気力すらなくなり項垂れた間桐臓見の成れの果てがいた。
「来たぞ、ジジイ」
「おお、ようやっと来たか」
こちらを見るとかすれた聞き取り辛い声で話す。もしかしてこの人、顎の修復に全ての力を使ったんじゃないのだろうか。確かにその鎖から逃れるよりは遥かにやりやすいと思うけれど、それどころか鎖に蝕まれたままの状態でここまで持つとは・・・このじいちゃんの執念、侮ってた。
「とりあえず、話がある、とのことですから顎の方、直しますね」
「ああ、頼む、シールダー」
雁夜さんから許可をもらい顎を治しそれでようやくまともに声が出せるようになったじいちゃんは話始めた。一応私は録音するものを複数装備し聞きに徹する。
「話というのは他でもない。聖杯戦争のことよ」
「今、キャスターが脱落したとこだ、まだまだかかるだろうが順調なんじゃないのか?」
「果たしてその余裕がいつまで続くことやら」
「なんだと?」
「まあそうカリカリするでない。実を言うとな、聖杯は汚染されておる可能性がある」
「はあ?」
「ワシら御三家は創始者たちの家系という事もあって他の外来の者たちよりも聖杯を欲しておる。特にアインツベルンなんぞはこの話を持ち掛けた張本人。何としてもワシらを出し抜こうとしたのじゃろう。まさかあのような反則に走るとは、ワシも遠坂も思ってもみないことじゃった」
「おい、もったいぶらずに言え、過去の聖杯戦争で一体何があった?」
「この第四次より前の第三次の時。アインツベルンは反則的技術を用いて本来召喚されぬはずのサーヴァント。俗にいうエクストラクラスを召喚した。その結果召喚されたのが復讐者のクラス「アヴェンジャー」名は確か、「アンリマユ」と言ったか」
「アンリマユってのはゾロアスター教の神の名前だろ、半神半人でもない純粋な神霊が召喚されるはずない」
「その通り、どうやらアインツベルンは質の悪い偽物をつかまされたようでな。結果は見るに堪えんものじゃった。しかし、そのアンリマユとやらは能力こそないものの、「呪う」という事に関してはとびぬけていた。むしろ存在そのものが「呪い」そのものじゃった。ゆえに―――――それを取り込んだ本命の「大聖杯」は既に穢れていると考えた方が妥当じゃ。無色透明ではなくなり「呪い」により「殺す」ことによって叶えられる願望とは見物じゃのう。ククククク」
「ジジイ手前・・・」
「待ってください雁夜さん・・・ご当主、何故今になって私たちにこの話を話してくださったのです?」
私が問いかけると少し黙ってから答えが返ってくる。
「ふん、不甲斐ない愚息を混乱させたいがための暇つぶしよ」
「左様で・・・マスター、桜ちゃんが修行の成果を見てほしいって言ってましたから行きましょう」
「ああ、大聖杯とやらの確認にも行かないとな」
「はい」
そう言って先に出ていく雁夜さんの後に続き扉に手をかけて振り返る。
「ありがとう、マキリ・ゾォルケン。あなたのおかげで私たちはまた進める。・・・どうか、安らかに」
そして扉を閉じた。
「ユスティーツァ・・・・」
これが、間桐臓見。――――――――マキリ・ゾォルケンとの最後の記憶である。
間桐のお家はこれで心配事ゼロになりました。遠坂さんたちどうしよっかなー。
アサシンはたぶん出ないんじゃないかなー、言峰さん願い無くなちゃってるから。ごめんね!(変更する可能性もあるよ!)