弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」   作:紗代

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という訳でついにきました聖杯問答。
ちなみに前回の話で言及していませんでしたが凛ちゃん生きてます。そこらへんは時臣さんのサーヴァントのギルあたりに触れてもらいます。
なんか肝心なところの解説役をほとんどギルに回しちゃってる気がしないでもない。


三者三様の王+王妃&マスターinアインツベルン城 チキチキ大暴露大会~過去の因縁も拳で解決!~

キャスターの工房、水路から出る際にライダーに誘われたのでせっかくだし彼主催の宴会に顔を出すことにした。場所はたしかアインツベルン城だったか。手ぶらで行くのもあれなのでとりあえず色々作っていくことにした。これでも花嫁修業と称してお母さんに色々躾けられてきたので、料理だってその一環としてお母さんの肥えた舌を満足させるほど鍛錬を重ねた。前は王妃だったのであまり作れなかったけど遠出したときお弁当作ったらギルとエルゥに気に入ってもらえたし、今回だって雁夜さんと桜ちゃんの食事を作ってるんだしたぶん大丈夫なはずだ。

 

「お重でいいかな・・・あ、バスケットの方には洋食を入れて・・・・あと悪酔いしたとき用に水と、飲まない人のためにジュースとお茶でしょ、それから・・・」

 

そうやって準備するうちに結構な量になってしまい

自分たちだけでは持っていけないのでリオにもくくりつけた。

そろそろ時間かな、と思っていると雁夜さんが帰ってきたので私、雁夜さん、桜ちゃん、リオそしてバーサーカーでアインツベルン城へ向かうことになった。

 

*****

ということでアインツベルン城の庭?広場?を貸し切っての宴会。料理を取り出したり配ったりでてんやわんやだったが大体並べ終えたので一息付いていた。

 

「おい、シールダー。酌をしろ」

「はいはい、今行きますよー」

 

こんなときでもギルは変わりなく暴君である。よいしょ、と重い腰をあげギルのもとに行き酌をする。

 

「お前もここにいろ」

「え、いいの?私王様じゃないよ?」

「よい、我が許す」

「じゃあ失礼して」

 

するとライダーがにやけながら煽る。

 

「随分夫婦仲がいいのう、英雄王」

「あれ?もう私達の真名にたどり着いたの?」

「おうとも。余以上に態度のでかい王など一人しかおらん。そこに魔術と守護に強い親しげな嬢ちゃんときた。ならば確信したも同然だろうよ」

「ほう、言うではないか征服王。では我とこいつがなんなのか当ててみるがいい」

 

こいつ何 勝 手 に と ん で も な い 爆 弾 投下してんだよ。

 

「あ、アーチャー!?何言ってるの!!あなたのマスターが聞いたら卒倒ものよ!?」

「時臣ならばここにはいない。なんでも「錯乱したあの女が跡取りの子雑種に手を上げた」ようでな、一命はとりとめたがしばらくはそちらに掛かりきりだ。女の方が原因なだけに任せておくわけにもいくまい。まあ、世間では「連続誘拐魔の手から逃れたものの大怪我をして入院している」になっているらしいが。どちらにせよあやつは来るまいよ。つまらぬ男だからなあれは」

「そう…」

「お前が気にすることなどない。言っただろう、いずれああなると」

「…うん」

 

ギルが私の頭を撫でる。それでほんの少し落ち着いた。

そして改めて見回すとセイバーが力なく俯いていた。・・・・これは・・・・

 

「もしかして、二人してセイバーのこといじめたの?」

「なに、「国に全てを捧げた」などというやつを笑い飛ばしたまで」

「はあ・・・セイバー、辛いかもしれないけど私にも話してもらっていい?何事も相手の話を聞かないことには始まらないからさ」

「・・・・いいだろう」

 

そしてセイバーは淡々と話す。自分の考え、まっすぐでとても高い理想、そして聖杯への願いを。

 

「そう、あなたは正し過ぎたのね。自分の理想に沿うために王としてに徹した、個人の幸せを捨ててでもみんなの思う理想の王の体現でありたかった、みんなに幸せでいてほしかった」

「そうだ・・・・しかしこの二人の話を聞いて思うのだ、私が王として行ったこと、王になったことそのものが間違いだったのではないのかと」

「うーん、あのさ。そもそもあなたの貧しくて蛮族がいっぱいのところと豊かな彼の国とじゃ前提も求められていることもちがうしさ。あんまり気にしない方がいいと思うよ。あなたは失敗しただけで間違ってたわけじゃない。あなたは正しいの。人間らしいかといわれるとそうじゃないけどね。」

「それは・・・「褒めてるよ、でも誰かに心の内を打ち明けないと皆あなたの事が分からなくなっていく。そしてあなたもそんな彼らに気付いて益々自分を責めていく。その悪循環」

「ならばあなたは、あなたは過去に悔いがないと言い切れるのか?」

 

グッと切羽詰まったようにセイバーがこちらを見る。

 

「そうね、私も確かに悔いがないわけじゃない。私だってもっと生きていたかったし、彼と一緒にいたかった・・・・我が子を抱きしめたかった。でもそのために聖杯を使おうとは思わない」

「なぜだ!そう思うのならばなぜ聖杯を求めない!なぜやり直しを求めない!?」

「充分だからよ」

「充分、だと」

「そう、私は昔彼らに充分以上に愛してもらった。私はもっと愛していたかったけど、いや今も愛してるけどそれでいいの。それに未練はいーっぱいあるけど我が子を産むこともできた。女としても人としても充分すぎる幸せを私はもらったの。そのうえそんな私の人生が物語になって語り継がれてる。これって私がいたってことをみんなが認めてくれているってことじゃない?」

 

そのまま私は続ける。

 

「みんなに認められて、語り継がれていく。ひょっとしたら感銘を受けてそれを片隅に置きながら人生の指針の一つにしてくれているかもしれない。そう思ったらそんなふうにやり直しはできないよ」

「っ」

「それにね、あなたはやり直しを望むけどたぶんだれもそれを望んでないと思うよ。人生は一回きりだし、みんな好きにやりきった、そう思った方がいいと思う。あなたを慕ってあなたのために命懸けで仕事してきた人だっていたはず。その人の忠誠心も偉業もなかったことにするつもり?」

「!!」

「誇りなさい、騎士王。あなたは正に民にとっての目標であり誇りであり理想だった。あなたの美しくも気高い理想と行いは間違いなどではない。女神の名においてあなたを王として認めよう」

「!そう、か。私は、私の人生は間違いなどではなかったのか・・・・逆に今回で間違おうとしていたのだな・・・・・ありがとうシールダー。私に気付かせてくれたこと、礼を言う」

「いえいえ、私は事実を言っただけ。それに自分で国を崩壊させたって言ってたけどそういうやらかしやった人なんて世界にはごまんといるよ。ねー、アーチャー?」

「・・・・まあ、そうだな」

 

つんっとするギルを見てかわいいなあなんて思いながら少なくなった酒を注ぎ足す。

 

「しかし、それではお主の戦う理由がなくなるのではないか?」

「いや、私にはまだ戦う理由がある。そうでしょう、アイリスフィール」

「セイバー・・・」

「あの男は正直気に食わないが、護衛を任された以上それをやり切ってから消えます」

「!ええ、ありがとうセイバー」

 

こうして感動的な空気に水を差すようで悪いがこの人とバーサーカーのためにもバーサーカーを現界させる。

 

「バーサーカー!?」

「大丈夫。鎖で抑えてるから、ただ私の予想が当たってるならあなたたちは話さなきゃならない」

「しかし、狂化がある以上意思疎通は・・・」

「その辺も、ね。バーサーカーに命じます。狂化を解除し兜を脱ぎなさい」

 

バーサーカーの制御用(契約ではない)の疑似令呪で命じて外させる。解析して作るの結構面倒だったから効いてもらわなきゃ困る。

そして私の予想が当たったのかセイバーは目を見開いた。

 

「あなたは――――ランスロット卿、なのか?」

「お久しぶりです、我が王よ」

 

魔力をある程度供給する都合上バーサーカーの過去を見たことがあるためセイバーを見てもしやと思ったけど、やっぱり二人は生前から縁のある存在だったのか。

二人の会話・・・ランスロットの話を聞くに彼はどうやら王妃との浮気をセイバー自身に責めてほしかった、けれどセイバーは王妃の幸せを願い二人を許し身を引いた。そんな「理想的」な彼女に「人間らしさ」を求めたランスロットはいつしか彼女を憎むようになっていったらしい。なんじゃそりゃ。

 

「だったらさ、いっそのこと殴り合いでもすれば?」

 

そんな私の提案により庭はセイバーVSランスロットの素手の殴り合いによる決闘場と化した。

 

「あなたがあのとき彼女を連れて行っていれば――――!!」

「ぐは!!」

 

・・・・勝敗は言うまでもなくセイバーのほぼ一方的な勝利だったけど、終わった時に二人ともすっきりしていたようだったからいい、のかな?

そのあとひとしきり語った後夜が明ける前に解散することになった。




本当はキャスター戦でバーサーカーVSギルガメッシュ空中戦をしてたんですが・・・どうしよっかなこれ・・・あ、あと時臣さんに余裕がないのでアサシンも登場させられてない!
とりあえずセイバーとバーサーカーは吹っ切れたので結構イノリちゃんに好意的です。

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