弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」   作:紗代

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 ギル君との出会い編です。ここで会うっていうことは叙事詩とかにも登場する・・・とか期待されている方には申し訳ありませんが、私は叙事詩をほぼ知らない人なのでほぼオリジナルになります。


運命の出会い(個人情報って大事だよね)

あのアヌという天の声、そして女神としての自分を理解してから早数ヵ月。私は子ライオンと一緒にこのメソポタミアを旅していた。

 自分のことは分かった。けど見ておきたかったのだ、自分が愛するものを。ちゃんと自分の目で見て触れて、自分の意志で愛するかどうかを決めたかった。

 ちなみに、なぜ付いてきたのが子ライオン一匹かというと、あの群れは女神イシュタルの随獣。いわゆるイシュタル管轄の神獣だったのだ。なぜその一団が私の元に来たのかというと、生まれて日の浅いこの子ライオンがイシュタルの気配に触れる前にトリップさせられてきたばかりで理解していなかった私の無意識に放つ気配やら魔力やら神気やらを察知してしまい、私を主だと思い込んでやってきたのを追っかけてきたのである。即座に気に入られたのでそのまま和気藹々と過ごしていたが、もし気に入られなかったらその場で即殺されていたのだろう。今振り返ってみると背筋が凍る思いである。結局一団はイシュタルの元に帰っていったものの、この子だけは私から意地でも離れようとせずイシュタルからしぶしぶ譲渡された。旅のお供が出来た嬉しさで全力でイシュタルにお礼をいうと「別に、あ、あんたのためにあげるわけじゃないわ!その、そう、私に懐かない髄獣が混じってたら士気に関わるから!それだけよ!」と言いながらも耳まで赤かった。女神様のデレかわいい。

 そして話を戻すとその結果、私が最後に向かうのは都市国家ウルク。王が直接治める活気あふれた国である。

ウルクに着くまで実に一週間かかった。私が方向音痴なのではなく、単に世の中甘くないというだけの事である。主に騙されたり、所持品を盗まれそうになったり。改めて日本がどれだけ治安がいいのか身に染みるところである。

「ここが、ウルク」

道すがら聞いていた都。けれどやっぱりこうして直に来てみると圧倒されるものがある。

「どこから回ろうか・・・・いや、まず泊まるところ探そうか」

「キュウ・・・」

しかし、当の私たちはこの一週間かかった道のりでやや疲れてしまっており、とにかく今日は休んで明日から満喫しようと思っていた。ひとまず、道行く人に尋ねることにしよう。

「どうしたんですか?」

おお?いきなり声掛けられた!背後からのその声に振り返るとそこには―――――とてつもない美少年がいた。太陽みたいなサラサラの髪にルビーみたいな、ひょっとしたら血よりも濃い色の赤い虹彩が印象的な子。

「えっと、辺りを見回していたので何か探しているのかと思ったんですけど」

「あ、あー。その、泊まれるところ探してるんですけど、どこかに宿とかってあります?」

その子は私をしっかりと認識すると同時に目を見開いていたけどすぐに笑顔になった。

「ええ、正確には宿じゃないんですけど・・・・そうですね、寝心地と食事の美味しさの保証くらいは出来ますよ」

「?、宿じゃない?それって・・・」

「どういうこと?」と言い切る前に「ついてくればわかります」と少年に遮られ、他に行く当てもないのでついていくことになった。あ、そういえば大事なこと聞くの忘れてた。

「ねえ、わたしの名前は祷(いのり)。あなたの名前、聞いてもいい?」

「僕ですか?・・・・僕はギルガメッシュ。あなたと同じ神に造られた半神半人です。」

え、MAZIで?正体もバレちゃってるし。なんか初対面の人に一方的に正体バレてるって怖いんだけど。反射的にやや距離をおこうと思ったけどさせないとばかりに手を握られた。これで普通に個人情報握られてなかったらキュンとかドキとかしたのに、今はその屈託のない笑顔が逆に恐怖だ。

「なに百面相してるんですか?行きますよ」

そして私は彼と王宮までの道を歩いていくことになったのだった。

 

 

 




 ギルくんの方は元からちょっと面白い出会いありそうっていうのを察知してわざと知らないふりして主人公に声かけました。で、直接対峙して自分と同類であることを確信して正体を明かしてます。逆に主人公にとっては恐怖になってしまいましたが。でも主人公も主人公で慣れてくるとこれと言って余程の事でない限り気にしなくなるので問題にはなりません。慣れて適応するのも早い主人公です。

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