弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」   作:紗代

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今回はシリアスです。本当はシリアルにしたかったのに気が付いたらこうなってた。
/(^o^)\ナンテコッタイ


作戦会議2~偶像~

「それで、雁夜さんのこの戦争に参加する目的、いえ理由は?」

「ああ、話せば長くなるんだけど・・・」

 

雁夜さんは話し始めた。自分の家の魔術、ひいては魔術そのものが嫌になってこの家を飛び出したこと。久しぶりに幼馴染とその娘たち・・・桜ちゃんたちに会いに帰ってきたらそこに桜ちゃんがいなくて跡継ぎのいない自分の家に養子に出されたこと。そのことで幼馴染が涙ながらに桜ちゃんのことを頼んできたこと。案の定桜ちゃんは家の魔術の修行として蟲に蹂躙されていたこと。その桜ちゃんを解放するために聖杯戦争で優勝しなければいけないこと。

 

「なるほどね、じゃあマスターは生かしつつサーヴァントだけを倒すっていう形でいいの?」

「いや、マスターも殺す。少なくとも遠坂時臣・・・あいつだけは絶対に殺す」

 

意気込んでいるのはいいことなんだけどなんで矛盾に気付かないかな・・・・。

 

「それは何故?」

「なぜって、おまえも分かるだろ!こんな環境に桜ちゃんを放り込んで、あまつさえ葵さんを泣かせて!こんなふうになったのは全部時臣のせいだ‼あいつさえ、あいつさえいなければ…っ」

「ストップよ、マスター。私はあなたたちの身体を診たしこの家の酷さもある程度は理解出来る。その時臣っていう人にも言いたいことはあるわ。でもね、あなたは話し合いのなかで言ったわよね?『普通の一般人と魔術師の価値観は根底から違う』って、だからその人と分かり合えないと思うのも分かるんだけどさ、せめて理由を聞いたの?魔術師だろうがなんだろうが自分の子を養子に出すって結構大事よ。王族なら国際問題に発展したりもしかねない。その遠坂もこの家も元々貴族なのでしょう?その辺は何かしらの事情があってのことなんじゃないの?」

「でも、あいつは葵さんを泣かせて!」

「マスターの幼馴染みで大切な人?なんでそこまで執着するの?」

 

すると雁夜さんは 言い辛そうにした後、諦めたように話す。

 

「彼女は、葵さんは、俺の初恋の人なんだ。美人で優しくて…でも俺の家に来たらきっと蟲の餌にされると思ったら言えなかった。時臣は元々完璧超人みたいなやつで嫌味みたいな存在だけど、でもあいつは嫌味は言っても約束とかは律儀に守るし、葵さんにも優しかったからきっと俺と一緒になるより幸せになれると思ったんだ。けどその結果がこれだ。俺の選択は間違いだったんだ、だから」

「だから時臣さんを殺すの?」

「そうだ「マスター、あなた先のことを軽く考えすぎてない?」どういうことだ?」

 

いかにも納得いかない、と不満げな雁夜さんを見て私は内心溜息を吐いた。あーあ。なんとなく感じてたけど、この人からは私を殺した神様の匂いがするんだよなぁ。嘘か真かは知らないけど叙事詩だと私に恋して魂を手に入れようとしてたみたいな内容だったし。

 

「だってさっきの内容から察するに夫婦仲はよかったんでしょ?少なくとも桜ちゃんを養子に出すまでは。そんな人から旦那さん取り上げてただで済むと思う?マスターの口ぶりからするに恋愛結婚だったんでしょう?好きな人を奪われた人ってさ、ぶっちゃけ何するか分かんないよ。被害者兼原因みたいな私が言っても説得力がない気もするけど」

「?」

「私はある神様に殺されたんだけどね、その神様は私が欲しかったんだって。でもその当時私は既婚者でなんとかものにしようと画策しまくって、結果的に私を殺して魂になったところを狙おうと思ったみたい。でもね、殺した後が問題だった。私の死を看取った夫がそのままにしておくような人じゃなくて、結局その神様は夫に捕まって徹底的に痛めつけられた挙句殺された。まあうん。あの時は子供の出産も重なっててまさに幸せの絶頂!って時だったから余計に、だったんだろうね。それでさマスター、何が言いたいのかっていうと・・・」

 

真っ直ぐに、雁夜さんを見て裁定するように問いかけた。

 

「あなた、その葵さんにズタズタに殺される覚悟、あるの?」

「!え、な、なに言ってるんだシールダー、葵さんがそんなことするわけ・・・・」

「いくら優しくて完璧な人でもそれは人の一側面に過ぎないわ。どれだけ親しくても愛していても秘密はあるのよ。あなたが葵さんへの想いを隠して人の良い幼馴染を演じているようにね。」

「それは、そうだけど・・・」

「彼女を憧れの偶像として見るのをやめろとは言わない、でも時臣さんも葵さんも価値観は置いといて『今を生きる人間』だっていうことを忘れずにそれを自分に置き換えて方針をたてなよ」

 

やや混乱している雁夜さんはここで答えを出すことはせずに「少し考えさせてくれ」と言ってこの場は解散になった。




今回は雁夜おじさんの矛盾と葵さんについて掘り下げました。イノリちゃんとしては遠坂夫婦に物申す!みたいなイライラを抱えてたりするかも。

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