弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
喚ばれちゃった
声が聞こえる。とても必死な声が。
『誰でもいい、誰でもいいから助けてくれ!!』
蜘蛛の糸のようにか細いそれを私は受け取り薄く笑った。
「そう、なら貴方のその必死さに免じてその呼び掛けに応えましょう」
そうして今にも消えそうなその声を辿って
私は召喚された。
「サーヴァント・シールダー。呼び掛けに応じ参上しました‼」
なんとかうまくいった。サーヴァントっていう箱におさまるの結構苦労したしそのせいで出来ることも出力も抑えられてるけど。まあどうにかなるでしょう!
目の前にいる白髪でケロイド?のある人がマスターだろうか?
「バーサーカーじゃ、ない?」
「残念ですけど、私はシールダー・・・・盾兵のクラスです」
「そ、そんな・・・バーサーカーじゃないなんて・・・それも盾のクラスなんて」
なんか勝手に絶望してるんだけど、ていうか本人目の前にして失礼だなあんた。と、思っているとしわがれた声が響いた。
「どうやら召喚には失敗したようじゃのう雁夜。まあ急造のおまえにはこのあたりが限界だろうて、惜しかったのう。カッカッカッカッ!!」
「臓見おまえ・・・!ゴホ」
え、なんか自分だけ上の階で高笑いしてるじいちゃんいるんだけど。そしてマスターと思しき人はかなり睨んでる。そのうえなんか具合悪そうなんだけど。とりあえず死にかけてるマスター?を支えつつ上の階にいるじいちゃんに向き合う。
「この人とラインが繋がってるからきっとこの人が私のマスターなんでしょう。それで?あなたはどちら様?」
「何、おまえが思うような怪しいものではない。そこにいる愚息の様子を見に来たただの魔術師じゃ」
「へえ、じゃああなたはマスターの父親?実の子がこんな風になっても心配するどころか嘲笑えるなんて魔術師以上に人でなしなのね。まあいいや、とりあえずマスターがこんな状態だしここはジメジメして衛生的に悪いから私は行きますね」
そう言ってマスターを横抱きにして上の扉に手をかけたところで一旦止まる。
「ああそうだ、人の事を嘲笑うのもいいですけど、年を考えないと顎外れますよ?」
「なひほ、っ!??ひはは!」
明らかに私たちの事を馬鹿にしていたのでちょっと仕返しに顎の外れる呪いをかけさせてもらった。うーん、我ながら完璧である。ほんとはあの蟲の塊のじいちゃんを浄化してボン!でもよかったんだけどそうする前にマスターに回復してもらってこれからの方針を決めてからの方が良さそうなので、とりあえずこれで済ませた。まあ、私が解かないと解けないんだけどねこの呪い。
そしてその部屋から出るとそこには小さな女の子がいた。
「お姉さん、だれ?」
「お姉さんはこの人のお友達。あなたのお名前は?」
「・・・桜」
「そう、桜ちゃん。いい名前ね。ねえ桜ちゃん。今この人とっても具合悪そうだから寝れそうなところを探してるんだけど、案内してもらってもいいかな?」
「うん、こっち」
そうして私は伸びているマスターを運びつつ、桜ちゃんに案内されその場を後にした。
たぶん蟲爺が真名を聞かなかったのはシールダーが一切攻撃力を持たないクラスのイメージで自分への脅威になり得ないと勝手に位置付けたのと元々戦争に乗り気じゃなかったこともあって興味が薄れた(どうでもよくなった)ため。真名聞いてたらバリバリ警戒できたのにね!
そして雁夜さんは余裕がないこともあって結構出だしから失礼なこと言ってる。おじさんは戦争に関わるまであくまで一般人だった、というスタンスでいけたらな、と思います(変更しないとは言っていない)。