弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
ハロウ。只今絶賛ホームレス生活2のイノリです。いやなんていうか水が渦巻いてたから試しに腕突っ込んだらそのまま流されちゃったんだよね。
流されたのは、いや正確に言うと渦巻いてたのは昨日の雨で出来てた水溜まりだったんだけど、なんか魔力感じるなーと思って興味本位でやってしまった。
で、なぜか周りに誰もいない川にいたから自分で歩いて調べるしかないかー→あ、怪我人が倒れてる→こんなときは魔術でほあた★→なんか崇められちゃったYOである。
というかまず人の格好が日本じゃない。だって最初に助けた人はウエスタンな映画とかに出てくるエプロンと三角巾姿の女の人だったし。あと、言葉が日本語じゃない。古代メソポタミアの言語とも違う。とりあえず私は元々学問を司っていることもあり、一言二言言葉を交わせば理解し意思疎通ができた。うん、神様ってチートなんだって改めて知ったよ。
たぶん、ここは日本どころか外国、それどころか私たちのいた世界じゃない。これは予想ではなく確信。さっきのこともあるけど、何より決定的なのは大気にマナが満ち溢れていることである。現代社会では文明が進み過ぎて神秘がほとんどないような状態なのに対して、こちらにきて他のところも見てみたけど機械的なものがほとんどなく、移動にも遠出をするときは馬を使っているのを見るからに文明はそこまで進んでない。住人の話を聞いてみたところ「魔族」という種族や竜などの前の世界にはもういない幻想種が存在し、魔術と法術という力が発達しているようだった。
それと、人間と魔族は敵対しているらしい。異種族で同じような生命体にはよくあることだけど未だに埋まらない深い溝があるようだった。そして、魔術は魔族しか使えないらしく、法術は神に祈り修行を積んだ神官などが扱えるものらしい。なので最初に治療した女性は私を神官だと思いそのまますこぶる感謝して去っていった。・・・・これが魔術って言ったらきっと失神ものである。一度祀り上げられたことがある身としては非常にいたたまれないものであることを察してほしい。
「と、いうわけで。旅に出よう」
そう私が言うと付いてきてくれたリオとユキは「わかった」と一鳴き。
「ありがとね。・・・よいしょっと。じゃ、出発!」
ユキを抱き上げリオに跨り青空に飛び立った。
ゆーちゃんへ。おねーちゃんはちょっと異世界観光してきます。お土産はたぶんないから期待しないでね。時間は・・・いざとなったら前の日の夕方に巻き戻しできるだろうか?
前のメソポタミア時代の経験値とか能力とかがあるのであんまり動揺しない逞しくなったイノリちゃん。眞魔国のほうでユーリ呼ぼうとしてミスった結果、メソポタ式神様製チートおねえちゃんが呼ばれちゃったよっていう。今頃ユーリをちゃんと呼んで事情を説明しててんやわんやいってると思う。