弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
帰ってきちゃった
風の冷たさで目が覚める。
「!」
ガバッと起き上がるとそこは夕方の学校の屋上だった。
「なんで私生きて…?死んだはず」
ひょっとしたら神代で死んでそれを切っ掛けにして現代に戻ってきたのだろうか。
とりあえず自分の身体に異常が無いことを確認して立ち上がる。
あのあとギルとエルゥ、私の子はどうなったのだろうか。そんなふうに思っていると自分を照らす夕日で下校時間であることに気づいた。
「…とりあえず、帰らないと」
そしてそのまま夕日の光を浴びながら私は久しぶりのコンクリートジャングルを帰っていった。
*****
あれから数日経って、色々試して分かった。
魔術も権能もそのまま、というか女神⋅半神半人のままで見た目だけ女子高生に戻っただけの状態。
鏡を見るとまれに目が青く見えることがあるけど、これは魔術とか色々使えば誤魔化せるし、見た目はそのままだから普通は気付かれることはない。今までウルクでの生活に馴染み切っていたため時々戸惑うこともあるけどなんとか元の生活に順応しつつある。
これで元の日常生活には支障はない。
そして私がいなくなった後のメソポタミア。結局、ギルとエルゥはエレシュキガルの協力により私を殺した神様を殺してしまい、エルゥはその罰として死んでしまったらしい。残されたギルは私たちの子・ウル=ヌンガルがある程度育つと同時に不老不死を求めて旅に出る。世界の全てを見て帰ってきた賢王となったギルはウルクを再興させ王としての務めを果たし、成長したウル=ヌンガルに王位を譲り渡した。
「ギルとウルか・・・親子仲がよかったことを祈るけど」
なんたってギルの子育てとか未知数だし。子供たちには人気だったけどそれと実の子とは別だしね。ウルの性格も私はその場にいなかったからどんな子だったのか分からないし。
「できることなら、自分の手で育てたかったなあ・・・」
そんな叶わない願いをぽつりとこぼして。現実を受け入れるためにきつく拳を握った。
と、そういえば。帰ってきてからというものの、うちの家族、と言っても母親以外の父親・兄・弟なのだが、なんとなく気配がおかしい。いや、見た目は人間だし価値観も世間一般に通ずるものだし別にこれといって気にするほどじゃないとは思うんだけど・・・・うちってもしかして純粋な人間の家系じゃなかったりするんじゃ・・・?
その予想(疑問?)はあながち間違っていなかったことを私が確信するのは約半年後の春。弟が流されて異世界を行き来するようになってからのことである。
皆さん優しい感想をありがとうございます。おかげで今日もご飯が美味しいです。もぐもぐ。
FGOもZeroも予定に入っています。あと他の作品とのクロスオーバーなんかもしてみたいです。