弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
久々に王宮に戻ってきた。王宮仕えの人や兵士の人たちには泣きながら熱烈な歓迎をされた。ギル、あんた一体何したんや・・・。そろそろ私もギルに嫁ぐのでこれを機に日記でもつけてみようと思う。続くかわかんないけどね。
○月●日
ギルが目を覚ましたので前回あやふやになってしまった私からのお仕置き開始。どういうことをしたのかっていうのはここには書かないでおく。ギルの名誉と後世のために。
ただひとつ心配なのは……今回のお仕置きでギルが変な性癖に目覚めないかどうかだけど。
○月◎日
遠出したらうっかり穴に落ちた。落ちた先で綺麗な女神様に出会った。エレシュキガル様というらしいその人は世間話に付き合ってくれるどころか帰り道も教えてくれる超いい人だった!帰った後で知ったけどあそこは冥界だったらしい。それでも懲りずに何度も行き来する私はすっかりエレシュキガルと顔馴染みになってしまった。またバターケーキ持っていこう。
○月□日
ギルと私の式の日取りが決まってからというものの、王宮では兵士や侍女や役付きの人なんかが慌ただしく行ったり来たりしてせっせと働いている。元々活気があって賑やかなウルクが更にパワーアップした気がする。
これもギルのおかげなのかもしれない。そう思って寝所で褒めながら頭を撫でるともっとと言わんばかりに頭を押し付けてきた。人になついたライオンのように見えるのは私だけ?
△月●日
権力者とか神様からとかとにかく沢山のお祝いの品が届く。でも自分で開けることはない。開けるのは大抵ギルか侍女の人である。なんでも「何かあっては困るから」らしい。私も魔術に関しては結構分かってるつもりなんだけどなぁ、爆弾処理だって爆発する前に結界で覆って爆発させればいいだけなのになんでだろ?
△月◇日
式の準備が着々と進み後一週間ほどに迫ったある日。ギルがやらかしてくれた。朝起きると神殿があった。いや冗談じゃなく。聞けば私を都市神として祀っていた所から無理矢理移動してきたらしい。どうやってここまで移動してきたのだろうか?
嫁入り箪笥ならぬ嫁入り神殿。
ギルは「こうすればお前がウルクを離れる必要もなかろう!」とか高笑いしながら言ってたけどスケールの大きさに私達は硬直、エルゥが呆れてギルに関節技をかけてた。私の加護と都市神を続けることを条件に現地の人々から譲ってもらい、私の神殿はウルクよりちょっと外れに安置されることになった。
△月◎日
とうとう結婚式当日。侍女の人々に身支度を整えてもらい、ギルの元にいく。いつもと違う装いのギルがいつも以上にかっこよくて、差し出された手を取るだけでドキッとする。そうして二人で見つめ合ってほんの少し笑い合ってギルに手を引かれて一緒に歩み出す。
こうして私は今日から英雄王ギルガメッシュの正式な妃になったのだ。
というわけで嫁入り編でした。ちなみにお祝いの品の管理や確認をさせてもらえないのは惚れ薬とかギリシャ神話お馴染みの恋の呪い的なものがかかったものとかが多かったため。あんまり作中に出してませんがこれでもウルク一の美女。人にも神にも世界にも愛された人ですから、やっぱり結婚するって言っても略奪愛とかしようとする輩もいる、というわけです。