弟はマのつく自由業、私はメのつく自由「いえいえ、王たる夫に永久就職です!!」 作:紗代
ああ、文才ほしい。
エルキドゥが旅立ってから早1週間。黒幕との再会は案外早かった。
何故かって?エルキドゥが連れてきたのだ。いや、正確には・・・おそらくギルの宝のひとつであるのだろう黄金の飛行物体(いや舟っていうのかなこの時代では)に乗ってきた。エルキドゥの鎖で舟に縛り付けられながら、だけど。
「ただいま、イノリ!それと・・・ほら、ギル!連れてきたから好きにしていいよ。ああ、言われたことはきっちりやっておいたからね!」
言うのが早いか手が早いか、セリフとほぼ同時に鎖が解除されギルは空中から地面に蹴落とされた。それもうまく受け身が取れないような落とされ方をしたようで、顔面から地面にダイブし「ぐえ」という蛙が潰れたような声が聞こえた。
「何をするエルキドゥ!」
「何をするって、君を地面に降ろしただけだよギル。そのままじゃ話辛いだろう?それにさ、言わなくていいの?今回の事も含めてちゃんと言った方がいいよじゃないと彼女、わからないだろうから」
「うぐぐ・・・」
「じゃあ、後は当人同士の問題だからよろしく。イノリ、この子たち借りてくね」そういうとエルキドゥはユキを抱えリオの背に跨がって飛んでいった。エルキドゥは動物と会話ができるのでうちの子たちとも仲がいいのだ。なのでそっちに問題はない。問題は、このカッコ悪い登場をした王様である。
「……」
「……」
沈黙が、痛い。
でも言いたいことは全部言っておかないと。
「あのさ、暴君とか圧政とかは別にいいんだ、そんなの。王様なんだし。でもね……なんで初夜権なんて作ったの?あなたなら奥さんも妾さんたちも選り取りみどりでしょう?よそ様を巻き込むようなことしなくてもよかったんじゃないの?」
「・・・・おまえが帰ってこないからだ」
「は?」
「おまえがウルクに帰ってこないから、もう既にどこぞの馬の骨とも知れぬ輩と結ばれているものだと思ってせめて結ばれる前に、と思ってだな・・・」
何この乙女。
「・・・でもしっかり食べちゃったんでしょう?やめなよ、王妃様のことも考えてあげなよ・・・旦那さんが正妻の自分に見向きもせずいろんな人と不倫してるなんて体裁も女としてもあったもんじゃないでしょう」
「おまえは嫌なのか」
「嫌だね。そもそも私はそうならないようにするためにウルクから出たようなものなのに・・・あーあ」
「さっきから何を言っている?我は妻など貰っていないぞ」
「え、もうバリバリの適齢期でしょ?王様なんだしそういう話が持ち上がってもおかしくないなーって思ったんだけど」
「本当にやつの言う通りだったとは、さすがの我も想定外だ」
「?」
「イノリ、よく聞け。何を勘違いしているのかは知らんが、我は女を抱くことはしても室にしたこともしようと思ったことすらない」
「え、じゃあゲ「人の話は最後まで聞かんか」・・・はい」
ゲイ・・・いやこの場合バイだと思われる。でも言おうとしたら遮られた。なんで?
「我は我が心底惚れ込んだものしか室に迎え入れん。囲うのなどもってのほか。最愛はひとりで十分だ」
「あ、そういうところはちゃんとしてるんだね」
よかったよかった。なら後はしっかり吟味して結婚してお世継ぎ問題解決!まさに大団円だね!と思ってたらいつの間にか腰に腕回されてた。
「イノリ」
「は、はいっ」
「お前が望むのなら全て叶えてやる。前のように豪奢に着飾りたいというのなら世界中の宝石と最高の布地をやろう、居場所が欲しければ緑溢れる広大な土地をやろう。だから―――――――――――――我のものになれイノリ。」
「・・・・カッコいいけど20点」
「なっ!?」
「駄目よ、だって肝心なところが入ってないもの。ねえギル」
彼の頬を撫でながら目を合わせて微笑んだ。
「高級なものも肥沃な土地もいらない。だって私がほしいのはあなただけだもの。あなたをくれないなら私もあなたの物になるわけにはいかないな」
「なら「ギル。私ね、小さい頃からあなたのことが好き。大好きよ、愛してるって言葉も足りないくらい―――――――他にはなにも望みません。偉大なる王ギルガメッシュ。一人の人として、一人の女としての私にあなたの全てをください。」
「は、」
その後、真っ赤になって気絶したギルは私と呆れたエルキドゥによってウルクへ搬送され、熱を出して寝込んだ。私の告白の返事は一週間先延ばしになってしまったもののしっかりといただいた。・・・・前以上にギルが放してくれなくなったけど、それは別の話。
ここでのギルガメッシュはいろいろ乙女なところがあります。ちゃんと男前なところもありますが、慢心によるうっかりも含めてイノリちゃんには「かわいい」と思われることも。
でも基本、ZeroやStay nightの王様なギルガメッシュなのでしっかりと威厳や能力などはあります。単純にイノリちゃんへの惚れた弱みです。