そんな中書いた5話、出来がちょっと……とは思いますが、今はこれで精一杯なのです。どうぞ!
朝の六時、休日だと言うのに、何故か僕の家のインターホンが鳴っている。いつもなら休日は、もう一時間後に起きるので、ベッドから出るのが少し辛い。
仕方なく、ベッドから出て、パジャマから着替える。とりあえず、暑くないように、近くにあった青い半袖のシャツと、薄い生地のズボンを穿く。
そして、意を決して玄関に向かう。しかし、僕の家に今日は、というかいつも、人が来る事なんてないのだけど……嫌な予感がする。
「はいはい、今出ますよっと……」
胃痛に耐えながら、玄関の扉を開けると、そこには、大きめの袋を持った彼女がいた。どうやら、朝から予感が当たってしまったようだ。
今日の服装は、暑い陽気に合わせて半袖の白いシャツと、青いハーフパンツで、彼女の健康さを際立たせている。服装からして、恐らく、ジョギングの帰りか何かだろう。
「ようっ! この私が、休日に予定がない、可哀想な樹君に差し入れを持ってきてやったんだぜぇ。さぁ、ありがたーく受け取りなさい」
そう言って彼女は、僕の方に、持っていた袋を突き出した。この言い方からして、受け取らなければ彼女の機嫌を損ねるだろう。
「はいはい、ありがたや~、ありがたや~……で、これには何が入ってるの?」
「感謝の気持ちが足りないなぁ~、ほら、もっと心を込めて! じゃなきゃ教えなーい」
僕が適当に返すと、彼女は、その豊かな胸の前で腕を組んで、不機嫌そうな顔をした。朝なんだから、少しは手加減してくれてもいいと思うんだけどな……
正直、面倒だとは思ったが、彼女の機嫌を損ねた後の方がさらに面倒なのは、容易に想像がついた。
「はいはい、誠にありがとうございます……で、一体何が入ってるの?」
すると、彼女は物凄く得意気な顔をして、カレーだと言った。何もそんなに
「有り難く食べろよ~、後で取りに来るからな~、じゃあね!」
僕が何と返すかを、朝のあまり働かない頭で必死に考えていると、彼女は、何故か足早に走り去っていった。理由は分からないが、一応、彼女の姿が見えなくなるまで待って、僕は玄関の扉を閉めた。
それにしてもカレーか……そんなに好きでもないんだけど……まぁ、実際彼女の料理はとても美味しいので、少し悔しい気持ちもあるが、有り難く食べさせてもらうとしよう。
とりあえず、まずは洗面台の所で顔を洗い、居間に置いてあるスマホを持つ。何か連絡が来てはいないかと確認を終え、彼女から渡された袋を開ける。
中に入っていたのは一つのタッパー。普通のものよりも大きめではあるが、明らかに袋の大きさと合わない。彼女も
そして何より、彼女に限って、僕に対して
そんな事を考えつつ、僕はタッパーを電子レンジに入れる。三~五分くらいの時間にセットしておき、炊飯器の中から、温かなご飯を皿に半分くらい盛り付ける。
ご飯の少し甘いような香りが、僕の方へ漂ってくる。その香りを嗅ぎながら、同時に、温め終わった頃合いのカレーの入ったタッパーを、電子レンジから取り出す。今回は、丁度いい具合に温まっているようだ。
そして、スプーンを棚から取り出し、タッパーの
準備を終え、
スマホの画面をタップして、メッセージを見ると、メールの差出人の名前が出ていた。どうやら葵さんらしい。まぁ、僕に連絡を寄越す相手なんてたかが知れてるのだが……内容は、今日も国語の勉強を教えて欲しいとの事だ。
(頑張るなぁ……それだけ国語を出来るようにしたいんだろうか?)
まぁ、苦手なものを克服しようと、努力をしている人を手伝うのは、人とあまり関わらない僕にはよく分からないので、少し興味もある。
すると、再び彼女からのメールで、十時頃に行くと追加で送られてきたので、分かったと送り返す。彼女が来る前に、自分の分の飲み物でも買い足しておくか……
そう思い、僕は学校の側にある、自動販売機まで、飲み物をゆっくりと買いに出掛けた。
自動販売機の前に着くと、その中には色々な種類の飲み物が売っていた。普段から利用している訳ではないのでよく分からないが、皆はよくこの中から選ぶのに苦労しないな、と感心する。
「家にあるお茶とかを彼女に出せば良いと思うから……自分の分だし、これで良いか」
僕は考えた末に、カフェオレを買った。生憎コーヒーは、僕の舌には少し苦すぎるので、カフェオレから慣らしていこうという作戦だ。
たまにはこんな事に挑戦しつつ、僕は家に帰って、居間で勉強する準備を終わらせ、彼女が来るまでの残り三時間に、少し仮眠を取る事にした。
◆
私が勉強を教えてもらいに行く彼は、あまりモテる方ではないと思う。クラスメイトの子達からもそんな
でも、私は彼に興味がある。どうして、人の前で、あそこまで自分らしくいられるのか。
人と上手く付き合っていくためには、自分らしさは、ある程度犠牲にしないといけないと私は思う。
彼のように一人でいる事は私には出来そうもないけれど、だからこそ、私は彼に興味がある。私を真っ正面から見ても、動じなかったのは彼が初めてなのもその一つだ。
そんな事を考えていたら、いつの間にか彼の家の前まで、家の車が到着した。男の運転手の方にお礼を言ってから、笑いかけてみた。本来の私の笑いで。
その運転手の方は、私の笑顔に見入っている。普通の男の人ならばこうなるはずなのに……たまに女の子でもなるんだけどね。
そう思いつつ、私は、彼の家の扉を叩く。すると、彼はすぐに出てきて、私を招き入れてくれた。
勉強する場所は、前と同じ居間だったけれど、私を気遣ってか、エアコンがかけてあった。そして、机の前には、やはり前と同じように
彼は私の正面に座って、国語の課題であるプリントを白いファイルから取り出した。
「じゃあ、始めようか」
「う、うん……」
やっぱり彼は動じない。私も勉強のため、
私が分からなくて悩んでいると、彼は、その問題が解きやすいように、ヒントをくれる。私が漢字を間違っていれば、辞書を取り出して、丁寧に教えてくれる。
そうして、漸くプリントを終わらせたけれど、まだ終わりじゃない。今回はもう一枚、もうすぐある漢字検定に向けてのプリントがあるのだった。
最初は頑張って、自分で解いてみる。解けるだけ解いて、彼に見てもらうと、彼は自分のプリントと見比べて、答え合わせをしてくれる。
やはり、間違っている所がかなりあったようで少し落ち込むが、彼はその漢字の覚え方を分かりやすく教えてくれる。
「例えば、画数の多い漢字なら、少しずつ書いていく。分解して見てみれば、そんなに難しい字はないからさ」
「な、成る程……じゃあ、こうすれば……っど、どうかな?」
私がこう言うと、彼は私の書いた字を見てくれる。彼の表情から見て、今回は合っていた事に安心したし、嬉しかった。
何とかプリントを終わらせると、彼は私のために、冷たいお茶を持ってきてくれた。
「あ、ありがとう……!」
「どういたしまして、お疲れ様」
休憩を一時間程挟んで四時、私達が復習をしようとすると、彼が学校に忘れてきてしまったという。中々ない事なのか、いつも冷静な彼が焦っていた。
「ちょっと学校まで取ってくるよ、悪いけど、葵さんはここで待ってて!」
「あ、赤嶺君……!」
彼は私にそう言うと、急いで学校まで走っていった。彼を待ってるこの暇な時間は、この部屋を見て回る事にした。
そしてもちろん、彼に本当の自分を見せた時のリアクションにも期待をしながら。
◆
葵さんに国語を教え終わって、復習をしようとした時に、僕はプリントを一枚、学校に置き忘れてしまっていた事に気付いた。
彼女を待たせる訳にはいかないので、急いで学校に向かう。先生からの許可を取り、階段を駆け上がる。
教室に着くと、自分の机の中からプリントを発見しようと漁った。思いの外、早く見つける事が出来たので、プリントを持って、急いで外へ出た。
すると、僕が出てきた時、黒崎君を見つけた。相変わらず休みの日でも、身だしなみ等を徹底しているのが、遠くから見ても分かる。
そして初めは、彼が一人で散歩でもしているのかと思ったが、よく見ると、彼の隣には琥珀がいた。その時、僕は昨日の黒崎君の言葉を思い出した。
”落とす”と言っていたが、彼と琥珀が一緒に歩いている姿は、確かに釣り合っている。美男美女でお似合いだし、彼女も楽しそうにしているので、良かったと思う。
そうは思っているのに、自分の家まで歩いている間、ずっと僕の心には
家に着くと、葵さんが座布団に座って待っていた。少しボーッとしているため、一人は退屈だったのが分かった。
「葵さん、ごめんよ。今戻ってきたから」
「あ、赤嶺君……お帰り」
「うん、じゃあ続きを……!?」
僕がそう言った次の瞬間、僕の身体は、葵さんによって、床に押し倒されていた。
「あ、葵さん、一体何を……!?」
急な事で、思考が追い付かない。何故、葵さんが突然こんな行動に出たのか、その理由が全く分からない。
とりあえず理由を聞こうとすると、彼女の方から先に言葉を発した。
「赤嶺君……」
呼び掛けられ、僕は彼女の顔を見る。彼女は微笑みを浮かべていたが、今の彼女の顔は、いつもの物静かな彼女を象徴した微笑みではなく、見る人の心を誘惑する、
「赤嶺君ってあんまりモテないよね……」
その微笑みのまま、彼女は心に刺さる一言を僕に言い放った。僕が困惑している間にも、彼女は笑みを深めて続ける。
「でも、私は貴方に興味があるんだよ……?」
そう言って、彼女は僕の身体に覆い被さる。彼女の方が身長が低いので、苦しいという事はないが、彼女の胸が、僕の胸より少し下の辺りに、押し付けられている状況だ。
彼女の胸が、僕の身体の上で形を変えている。最早、目で見なくても、彼女が僕にぴったりと張り付いているのが分かる。
そして、僕が彼女に何とか、上から退いてもらう方法を考えている時にも、彼女は僕の首筋に舌を
正直な所、理性が持ちそうにないので、力ずくで彼女の身体の下から抜ける。
「はぁ……一体、何のつもり……?
「別に、手を出しても良かったのに……」
僕が必死で耐えたというのに、彼女は僕に聞こえるように、こう
何故ここまで大胆な事が出来るのか、不思議に思ったが、今は頭を使いすぎた事による疲労でそれどころではなかった。
「今日は残念だけど、これで帰るよ。これからもよろしくね、赤嶺君?」
そう言って、葵さんは帰っていった。彼女の姿が見えなくなった瞬間、身体から力が抜けてしまったらしく、足が震えている。
「はぁ……また胃痛の種が増えてしまった……一体、どうしたら良いんだろう……」
僕はぼやきながら、脱力した身体の力を何とか振り絞って、自分の部屋のベッドに倒れ込んだ。
(あ、そういえばタッパー……)
「琥珀に返さないとな……休み明けで良いかな、あいつは取りに来るとか言ってたけど……それに確か、休みが明けてすぐに、旅行とか何とか言っていたような……どうしようか……」
僕は琥珀の事を思い出し、あのタッパーをいつ返すか考えていたが、さっきの事の疲れでいつの間にか寝てしまった。
◆
「はぁ~、楽しかったぁ……彼もやっぱり男の子なんだねぇ……次の勉強の日が楽しみだなぁ~……」
彼でも私に
思ったよりも長く書けました。内容は駄文ですが……こんな作品にもお気に入りが徐々に増えていって嬉しいです!他の作品も人気が出る事を願ってます。
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