では、どうぞ!
僕が黒崎君と、彼女の会話を眺めていると、後ろから小さく声を掛けられた。そして、僕が後ろを振り向くと一人の少女が立っていた。
「あ、赤嶺君……」
「委員長さん。どうしたの?」
彼女は
髪は黒みがかったブルー、長崎は肩まで髪を伸ばしたセミロング位。身長は琥珀より少し低いから、150cm後半と言ったところだろう。
「あの、赤嶺君?」
「あ、ああ、ごめん。それで僕に何の用?」
考えに
そして、葵さんは言いにくそうにしながら、僕にこう言った。
「わ、私に勉強を教えてくれないかな?」
「僕に?君の方が成績は良いはずだけど……?」
「実は私、国語だけは苦手で……それで、赤嶺君なら言葉を沢山知ってるから、国語とか得意なんじゃないかって思って……駄目、かな?」
そういえば、いつも国語の授業の時は、彼女の質問に答える時のよく響くあの声が、聞こえてこなかった覚えがある。
彼女は目を少し
そして、彼女の顔も琥珀に負けず劣らず、かなり美人な部類には入ると思う。大抵の男子ならば、この上目遣いと胸などで、彼女に
とりあえず、いつから始めるのが都合が良いか。それを相談するために、僕は口を開いた。
「分かったよ、僕で良ければ。それで、いつから始めるのが都合が良いかな?」
僕が質問すると、彼女は、僕が予想もしなかった事を口にした。
「今日からで良いかな……?私が赤嶺君の家に行くからさ」
「は?」
僕は思わず聞き返してしまった。ほとんど話した事もない、ただのクラスメイトの男子の家に、女子が行こうと言うのか。
「本当に良いの?ほとんど話した事もないのに……」
「良いよ、教えてくれるだけでありがたいから……じゃあ、行こうか」
彼女の方に嫌な気持ちがなければ、僕としては構わない。こうして僕は、葵さんの国語の成績を出来るだけ改善するために協力する事になった。そして、琥珀と黒崎君を残して、僕達は帰っていった。
僕は家に着くと、まず葵さんを居間へ案内し、机の前に椅子を二脚用意した。そして鞄から国語の教科書と、ワークを取り出す。
「じゃあ、始めようか」
「うん、よろしくね」
僕は彼女の反対側に座り、自分の国語の課題を終わらせる。そして、彼女の質問に、出来るだけ分かりやすいように工夫して答える。
「赤嶺君、ここは?」
「ここは、作者の心情を考える問題だね。まずは文章をよく読んで、作者の気持ちを少しでも理解する事から始めた方が分かりやすいと思う」
「成る程……こんな感じ?」
「そうそう。問題と、それに対応している文章をよく読めば、国語は大丈夫なんだよ」
彼女は、僕が答えを導くためのヒントを教えると、そこから答えを予想していく。見たところ、そこまで大きな間違いはないので、ここは答え合わせの時に直してくれれば良いだろう。
(どうやら大丈夫そうだな……あっ)
僕が安心して彼女の解答を見ていると、ある事に気付いた。答えの意味はそこまで遠くはない。けれども、漢字を大量に間違えていた。
(意味は似ているけど、字が違うんだよな……)
「葵さん、もしかしてだけど、漢字がかなり苦手なんじゃない?」
僕がこう聞いてみると、彼女は一瞬驚いたような顔をしたが、自分の解いた問題を見て、気が付いたようだ。
「うん……意味は結構近いらしいから部分点とかはもらえるんだけど、漢字がほとんど駄目でテストの点が上がらないんだ……」
(成る程……けど、漢字は本を読んだり、書いて覚えるしかないからな……)
「葵さんはまず、漢字を少しでも改善した方が良いね。う~ん……どの位の漢字なら書けるの?」
すると彼女は少しの間考え込み、ゆっくりと、そして自信がなさそうにこう言った。
「多分、漢字検定は五級が限界かな……」
思っていたよりも不味い事態だ。これじゃあ、国語だけが妙に点数が低い事にも納得だ。
「葵さん、漢字はどうしても沢山本を読むか、漢字自体を書いて覚えるしかないから、それを努力していこう。僕に教えられるような事があれば、力になるからさ」
僕がこう言うと、彼女は一瞬
それから、僕は問題のヒントを教えつつ、彼女がワークの範囲を終わらせるのを待つ。
「ふぅ~……終わったよぉ……」
葵さんは机に突っ伏しながらこう言う。余程疲れたのだろう、彼女の顔色は悪かった。
「お疲れ様、大丈夫?」
「うう~ん……結構辛かった……でも、そろそろ帰るよ~、いきなり押し掛けてごめんね~」
「僕が良いって言ったんだから、大丈夫だよ」
「じゃあ、また明日ね~」
「うん、また明日」
とりあえず、彼女に少しはヒントになる事を教えてあげられたと思う。これからは彼女の努力次第だ。
(あいつにもこれくらい、
「あ、赤嶺君~!」
僕がそう考えていると、葵さんが居間に戻ってきていた。何か忘れたのかと思い、聞いてみる。
「どうしたの?何か忘れ物?」
すると彼女は少し恥ずかしそうに顔を赤らめ、
「忘れ物っていうか……その……連絡先、交換したいなーって……良い?」
訂正しよう。かなり大胆だ、この子。初めて男子の家に来て、しかも連絡先を交換しようだって?勉強のためなのか疑わしくなる位だ……
女子にもきっと色々あるのだろうが……正直、かなり面倒くさそうな世界な気がする。
「別に良いけど……どうして?」
「え、いや、その、いつでも勉強を教えてもらおうかなって!」
そう言うと彼女は、先程よりも一層赤くなり、まるでリンゴのようだった。
とりあえず僕は、彼女と連絡先を交換して、彼女は今度こそ、僕の家を後にした。一応、送っていこうかとも思ったが、迎えの車が来るらしい。
(はぁ~……葵さんはと接する時は、琥珀と違って気が抜けない。凄く嫌という訳ではないけれど、これがしばらく続くと思うとまた胃痛がする……)
そんな事を心配しながら、僕は夕飯を買いに近くのスーパーに出掛ける。スーパーは学校と反対の方向だが、丁度僕の家は、その両方の大体、中間の場所にあるお陰で、行き来はしやすい。
(とりあえず、簡単な物を作れれば良いか)
スーパーに着くと夕方のため、いつも通り人で
「う~ん、何にしようか……」
中々、簡単に作れそうな物がない。そんな事を考えて周りを
(ご飯を作るのも面倒だし、これにするか!)
こうして僕は、偶然残っていた豚カツを三枚と、胸焼け予防のためにレモンとサラダを買ってきた。
そして、また来た時と同じようにゆっくりと家に帰っていった。
家に着いて、まずは買ってきた豚カツを皿に乗せて、レンジに入れる。その後は、レモンを置く小皿とサラダのための皿、ご飯を入れるための茶碗を準備する。
豚カツがレンジで温め終わった頃、少し厚い手袋をして、机の上に置いた。味付けにはソースで良いと思うので、準備しておく。
そしていよいよ、豚カツを口に運ぶ。初めて口の中口に入れると、あげたてではないのでサクサクはしていないが、それでも味は
その後に、サラダと一緒に食べたり、レモンを豚カツにかけたりと、味や食感の改変も出来て、食べる時にはとても良いと、再認識した瞬間でもあった。
やがて豚カツもサラダも食べ終えると、皿を早々に洗って、風呂へ入った。少し呆けていたお陰で危うく溺れかけたが、何とか途中で意識を取り戻して帰って来た。
そして漸くベッドに入る。今日の葵さんの一件で、胃痛の種がまたしても増えてしまったのは正直、かなり大きな誤算だった。しかし、彼女も、誰も彼も皆、どこかで嘘をついている気がする。
(そういえば、明日は休みだったな……やっと胃痛が止むのか……)
一時は安心したが、どうせ二日後にはこの痛みは復活しているだろう……そんな悲しい予想をした後は、あまりの眠気に考える事が面倒になり、目を閉じた。
◆
「おっかし~なぁ~……今までは私が近付けば、大抵の男子は喜んだのに……やっぱり
ある屋敷の一室で、少女は彼を思い、笑う。その笑みはとても美しいものだったが、いつもの彼女が見せる
連続投稿は疲れますね、はい。きっとこれから先は中々出来ないでしょう。後、キャラ達の身長を乗せておきます。
赤嶺 樹 168cm
白沢 琥珀 163cm
黒崎 大翔 175cm
葵 雪凪 159cm
このような感じです。
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