僕と彼女の恋の色   作:AZΣ

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お久しぶりですかね、きっと。新キャラ登場!これくらいしか書く事が思いつかないので、本編、どうぞ!


3話 イケメンの宣言

僕が彼女を家に送ったその帰り道、一人の男子高校生とすれ違った。高校生だと分かったのは、彼の着ていた服が、僕の学校の制服だったからだ。

 

(彼女に何か用かな……それにしたってこんな時間に、女の子の家に近付くのはどうかと思うけど)

 

彼は、彼女の家の方向に真っ直ぐ向かったので、僕の予想は当たったようだった。そして、彼は彼女を探すのに夢中だったため、すれ違った僕には気付かずに通り過ぎていった。

 

(まあ、彼女の問題だし……僕が無闇に首を突っ込んで良いとも限らないな)

 

こうして僕は自分の家に帰り、明日の準備を済ませてからベッドの中に入って眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

朝になってから、僕はまず顔を洗い、軽食を取った。食べたのはコーヒー味のゼリー、この程よい苦味から、僕の日常が始まる。

 

こうして、僕はいつも通りに学校へ向かう。桜の花びらが散り始め、代わりに緑色の葉が生え出した木々を見ながら、今日、起こるであろう事態の予想を前もってしておく。

 

(今日は一体、彼女がどんな事を仕出かすんだろう、想像しただけでも胃痛がして……)

 

「おっはよー、樹ー!」

 

僕がこう考え始めたところで、まるで見計らったかのように、彼女は脇道から現れた。口は災いの元とはよく言ったものだ。今回は喋ってはいないけれども、本当に身に染みて分かった。

 

「どうしたの?元気ないじゃん」

 

そんな事を僕に言う彼女は、昨日と同じくエネルギーに満ち溢れている。その状況を見て、僕とはやはり反対なのだと自覚させられる。そして、彼女は素早く僕の腕を掴み、強引に教室へと引っ張っていく。

 

「ほら、行くよー!」

 

「はいはい、分かったから離して……」

 

何とか彼女の腕を振り払い、僕は教室へ入る。直ぐ様僕の方向に、クラスメイト達の視線が向く。しかし、彼等が見ているのは僕じゃなく、僕の後ろから入ってくる、彼女の姿だ。

 

「白沢さん、おはよ~」

 

「うん、おはよ~」

 

「し、白沢さん、おはようございます!」

 

「おう、おはよう!」

 

彼女の周りには瞬く間に人が集まる。いつもの事だ。そして僕は一人、平穏に席へ着く。すると、僕の方に一人だけ、歩いてくる男子生徒がいた。

 

「よう、赤嶺。こうして話すのは初めてかもな」

 

彼は僕にそう話し掛けてくる。自分の事を知っていて当然という、自信に満ち溢れた顔をしていたが、僕は彼の事を記憶に留めてもいなかった。

 

「そうだけど……誰かな?」

 

僕がこう聞き返すと、彼は唖然(あぜん)とした顔をした。思わずだったのだろう、彼は直ぐに元の自信に満ち溢れた顔に戻り、自己紹介をし始めた。

 

「まあ、そんな事もあるか。俺は黒崎(くろさき) 大翔(ひろと)だ。一応同じクラスなんだけどな……」

 

(ああ、そう言えば見た事はあるな。いつも女子達が彼を見ると騒いでいたような気がする。同じクラスだったのか……)

 

彼は確かに格好良く見える。薄い茶色に染めた髪を短めに切り揃えており、背も高く、175cm以上はあるだろう。そして、顔は程よくパーツが散っていて、鼻も高い。そして、その肌は運動をよくするのか、健康的な小麦色だった。

 

「それで?僕に何の用?」

 

「あ、ああ、そうだった。お前、白沢と仲良いよな?」

 

(何を言うかと思えばそういう事か……大体、彼女に関して聞く事はこういう事に決まっているしな……成る程ね)

 

「大体分かったよ。で、僕に何を?」

 

彼は前々から決めていたように、そして僕に悪戯をして楽しんでいるような顔をしてこう言った。

 

「いや、どうして欲しいとかじゃなくて、確認なんだ。

……白沢の事、落として良いよな?」

 

そんな事を言われて僕、が動揺するとでも思ったのだろうか。それとも動揺しない僕が異常なのだろうか。

 

「……そんな事、僕に聞く事じゃないよ。好きにしたら良いと思う」

 

僕がこう答えると、彼は何だか気の抜けた顔をしていた。まるで、僕が怒ると思っていて、期待が外れたような感じだ。

 

「何だよ、そうか……じゃあ、遠慮なくやらせてもらうぜ」

 

そう言って彼は去っていった。去り姿まで絵になっている。いや、絵になるように努めているんだろう、僕から見たら、自分を偽って無理をしているように見える。

 

(まぁ、どうでもいいか)

 

そう思い、僕は図書館から借りてきた、ファンタジー系の小説を読み始めた。そしてその時、隣に彼女が座った気配がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

(はぁ~、人と話すのは好きだけど、毎日あの調子だとやっぱり(こた)えるよな~……)

 

そう思いながら、私は樹の隣に座る。彼は集中して、一冊の小説を読んでいる。多分、この状態の彼は、私がいくら話し掛けても答えないだろう。

 

(そんなに面白いのかな?今度読んでみようかな)

 

そんな事を考えて、彼の読んでいる小説のタイトルを見る。いかにもと言った感じのファンタジー系だ。彼の家にも昔からたくさんあったので、趣味は変わっていないようだ。

 

結局彼は、ホームルームが始まる前まで一言も喋らずに本を読んでいて、休み時間でもそれは同じだった。

 

「樹ー! 一緒に帰ろうぜぇー!」

 

私が声を掛けると、彼は面倒くさそうに、前の扉側の席を指差した。

 

「えっ?何?」

 

私が困惑していると、彼が指差した方向から、一人の男の子が歩いてきた。

 

「白沢さん、送っていくよ」

 

その男の子は私にこう言った。確か彼は、他の女の子達に人気だったような気がする。

 

「えっ~と、確か黒崎君……だよね?どうして急に?」

 

「白沢さんって綺麗(きれい)だから、これを機会にお近づきになろうと思ってね」

 

私が聞くと、彼は笑って言った。正直キザ過ぎて若干引いたけれど、彼の笑い方は確かに格好良かった。そして、その笑顔には意外と可愛さも目立っていた。

 

(大抵の女の子達は、彼のいつもの格好良さと、このたまに見せる笑顔で好きになるんだろうなぁ……)

 

思わず見とれてしまったけれど、少し経つとその魅力も薄れてしまった。私には、何故か彼の表情が作り物のような気がして。

 

そして、私が隣にいるはずの彼の方に目を向けると、いつの間にか、彼はいなくなっていた。彼がいないと分かった時、私の心が一瞬揺れたような気がしたけれど、多分気のせいだろう。

 

そう思い、私は黒崎君の言葉に素直に甘え、自分の家まで送ってもらう事になった。彼はとても優しく、私を家まで送っていってくれたのに、彼が側にいると、何故か落ち着かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ここで良いよ、ありがとう!」

 

頑張って明るい声を出して、私は彼にお礼を言った。そして、彼もまた、教室で見たような笑顔を浮かべて、

 

「いやいや!俺も楽しかったぜ、ありがとうな!……っとメルアド、交換しないか?」

 

彼がそう言ってきたのは、正直予想外だったけれど、送ってもらった手前、断るのは気が引けた。

 

仕方なく、彼とメールアドレスを交換し、彼はしっかり出来たかを確認すると、私に手を振りながら、ゆっくりと帰っていった。

 

だけど、黒崎君に送ってもらうのは、正直、あまり嬉しくない。出来る事なら樹が良い。どうしてこう思うのかはまだ分からないけれど。

 

(ええい、細かい事を考えるなんて私らしくないぜ! うん、そうだ!)

 

そう思い直して、私は玄関に入り、台所に向かう。家の台所は居間と(つな)がっているが、広さはそこまでじゃない。多分、一般的な広さだと思う。

 

流し台の下は棚になっていて、調理器具を取り出すのにとても便利だ。そして、流し台の反対側には二つのコンロがついている。

 

まず、下の棚からまな板と包丁を取り出す。そして、冷蔵庫から玉ねぎ、人参(にんじん)、じゃがいも、豚肉を取り出す。

 

そして、フライパンで、玉ねぎを飴色(あめいろ)になるまで炒める。飴色になった頃に、豚肉を焼き始めて、もう片方のコンロには、水を入れたら鍋を置く。

 

それからコンロに火を着けて、鍋の中にじゃがいもと人参、玉ねぎ、豚肉を煮込む。今はまだ野菜スープだけど、味見をしてみる。

 

「うん、美味しい!流石は私だ!」

 

思わず口から自画自賛が飛び出す。少しずつスープから灰汁(あく)を取り除きながら、カレールーのパックを開けていく。

 

ルーを少しずつスープに溶かしていくと、香辛料の鼻を刺激する独特な匂いが居間中に広がっていった。

 

「良い匂い~……楽しみだなぁ~」

 

やがてルーが溶けきり、美味しそうなカレーが完成する。カレーが完成したら、大きめの皿にご飯を半分盛って、上からカレーをかける。そして最後にチーズを乗せて、机まで運んでいく。

 

居間の机に皿を置く頃には、チーズが丁度良い感じに溶けて、何とも食欲をそそる。

 

「よし、頂きまーす!」

 

私は机の前のソファーに座り、カレールーをご飯と共に、口の中に入れた。カレーのスパイスの辛味が、チーズど混ざりあってまろやかな味になっている。私の好みの味にちゃんとなっていて、素直に嬉しい。

 

「うん、美味しい!明日、あいつに持っていってやろうかなぁ~!」

 

彼の喜んでいる顔を見れるのを期待しながら、私はカレーを食べ終え、洗い物を済ませてからお風呂に入る。

 

結局、眠るまで彼のリアクションを期待していた。彼を(いじ)るのが楽しみなのか、それとも何か他の感情なのか。今の私には分からないけれど、とにかく明日の休日が楽しみだ。




たまには琥珀の視点で終わってみようと思って、こんな感じになりました。


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