1話 再会
僕は、
そんな僕は、次第に暑くなり始めたと感じる、5月のゴールデンウィーク明けに、対して楽しくもない学校へ向かって歩いていた。
学校は、僕の家から十分もあれば行ける距離にあるので、いつも通り、自分のペースに合わせて、ゆっくりと歩いていた。そして、学校に着く頃には、聞きたくもない同じ学生達の声が僕の耳に入ってくる。
「ゴールデンウィークどうだった~?」
「私は楽しかったよ~……」
チャラそうな男子と、大人しそうな女子が会話をしている。女子は、チャラそうな男子の押しの強さに負けているようだ。
その女子には多少、同情もするが、聞きたくもない話を聞かされる僕の身にもなって欲しい。
そんな事を考えながら、僕は早足で校門を通り抜け、いつも通りに、下駄箱から上履きを取り出して履く。そして、教室に行くために階段を上がっていく。
二階の階段側にある教室が、僕が在籍しているクラスだ。後ろの扉を開けて、窓際の一番後ろの自分の席へと向かう。
クラスメイト達は既にほとんどが登校しており、何人かで集まって話していた。恐らくはゲームやファッションの話でもして、ホームルーム前の退屈な時間を
そんな中僕は基本、人と会話をせずに、読書をして時間を過ごす。
人と会話をするのが苦手なのもあるが、正直面倒だと思っているし、そんな人に気を遣う作業をする位なら、僕に、多くの素晴らしい物語を提供してくれる本を読んでいる方が、よっぽど楽だし幸せだ。
「なぁ、聞いたか? 今日、転校生が来るらしいぜ?」
(よくある会話だな。そんな事を気にして、一体どうすると言うんだ、そもそも、人の好みというのはそれぞれ違うのに……)
そんな僕の
「聞いた聞いた! 何でも美人らしいぜ?」
「マジかよ!? 楽しみだなぁ~」
ほら、そんな話ばかりしているから、女子達からの殺気が凄い事になっているじゃないか。僕には全く関係ないが。大体、そんな美人がこんな所に何を学びに来ると言うんだ?
さっきまで、堂々と語り合っていた彼等だが、女子達の殺気に
しかし、転校生ねぇ……そういえば
そんな事を考えながら、僕は本を読み進めていき、いつの間にか、ホームルームの時間になっていた。
ホームルームのチャイムが鳴り響くと、体格のがっしりした短髪の男の先生が、教室に入ってきた。このクラスの担任の、
「おはようございます!今日から皆に新しい仲間が出来るぞ!」
彼はその顔と体格からは想像の出来ない、少々高い声で言った。
「では、入ってくれ!」
◆
日本の学校は久しぶりだなぁ~……懐かしいや……
そんな期待を胸に私は、教室の扉の前で待っていた。すると先生の声が聞こえ始めた。そろそろかな……?少し緊張してきたな……
「では、入ってくれ!」
先生からの合図が来た。私は覚悟を決めて、教室の扉を開けて、中に入っていった。
「うおおおおっしゃあああ!!!可愛い子来たぜぇぇぇぇぇ!!!」
「俺達は勝ったんだぁぁぁぁぁ!!!」
「あの子……凄い
教室に入って、教壇の上に立った私の耳に突然響いたのは、私を見た男子達の歓声と女子達の感嘆の声。しかし、そんな事は今の私のにはその全てがどうでも良く、私の視線はただ一人、十年前に別れた男の子に注がれていた。
(十年前と全然変わってない……! そのまんまで大きくなったみたいだ!)
彼は、十年前と変わらず、黒い髪を短く切り揃えた髪型で、顔は少し大人びたくらい。しっかりと
今の彼の顔は珍しく、目の前の光景が理解出来ないようだった。見た感じ、身長も今じゃあ私よりも大きいように見えた。昔は私の方が大きかったのに……身体はまだ弱そうだけど……
「おーい! 樹ー、久しぶりー! 帰って来たぜー!」
再会が出来て嬉しい私は、窓際の一番後ろの席の彼、赤嶺 樹に、満面の笑みで手を振っていた。
◆
扉を開けて、教壇の前に立った少女を見て、僕は見間違いじゃあないかと何度も自分の目を疑った。
少女の外見は、僕が知っている、十年前に別れた幼なじみ、
背中まで伸びた真っ白い髪、男子のみならず、かなりの数の女子すら魅了する、その端正な顔立ち。そして、完璧なプロポーション。身長は少し小さく見えるような気もするが……
(間違いなく彼女だよな……こんなに突然戻ってくるなんて、全く彼女らしい……)
顔は驚きのあまり、
(おいおいまさか……流石にここでは何も言わないだろうな……!?)
「おーい! 樹ー、久しぶりー! 帰って来たぜー!」
彼女が僕に、満面の笑みで手を振った瞬間、僕の小さな望みは跡形もなく絶たれ、クラス中の視線がこちらに集中した。
(何であいつはこうも昔から僕を面倒事に巻き込んでいくんだよ!? 僕は君とは違って、人に注目されるのが平気な訳じゃないのに……)
「おーい、皆静かに! では、自己紹介を頼む」
「はい!」
先生の一言で、生徒達の、僕への視線による
「白沢 琥珀です! よろしくお願いします!」
「うおおおおおおおお!!!」
彼女の挨拶を聞いた男子達のテンションが、また上がり始めたが、先生が再度それを
しかし、次に先生の口から発せられた言葉は、僕は止めを刺すに等しい内容だった。
「白沢は、赤嶺の知り合いらしいし、
「はい!」
……先生、何て余計な気遣いを……先生のせいで、僕は再びクラスメイト達に、好奇と殺意の
そんな僕の心中も
「またよろしくな? い・つ・き君?」
彼女は僕の隣で、僕の顔を覗き込むようにして、再び笑った。彼女の笑顔は確かに美しいが、それで僕のこれからの苦労が消える訳じゃない。
(全く……彼女と一緒にいると、どう頑張っても面倒事に引きずり込まれてしまう……彼女の側にいると、振り回される事が当たり前だ……また十年前のように胃腸薬を常備する
僕は観念して、彼女の顔を
そしてこれは、面倒事が嫌いな僕が、自分とは正反対の彼女と共に歩んでいく、そんな物語だ。
友達が書き始めたのと、欲望に負けて書いてしまいました。続きが思い付き次第投稿致しますので、気長に待って頂けると嬉しいです!