名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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7.北海道

 聡美はコナン、蘭、小五郎の四人で、夏休みを利用して北海道に来ていた。

 北海道が目前と迫ったフェリーが、船着き場に到着する。

 船着き場に着いたフェリーのハッチが開き、車が一斉に出て行く。その車両の一台が、聡美たちの乗った自動車である。

 四人を乗せた車は、ヒノキ荘という古びた旅館へと辿り着いた。

「ねえ、小五郎さん」

 と、聡美。

「なんだ?」

「そろそろ本題を話してくれないかしら?」

「本題?」

「私たちが北海道に来たワケを。ただ単に遊びに来た、というわけじゃないでしょ?」

「ああ、実はな……」

 小五郎は説明した。

 北海道に住む小五郎の友人から、妻の自殺を調査してほしいという依頼状が届いた。

 小五郎は依頼の内容を確認すべく、三人を連れて北海道にやって来たのだ。

「……というわけだ」

「なるほど」

 車から降りた四人が、旅館内へと入り、受付へ足を運ぶ。

「これはこれは毛利くん」

 と、口を開いたのは、受付担当の稲垣 洋一(いながき よういち)。彼は小五郎の高校時代の同級生である。

「久しぶりだなあ、稲垣!」

「お連れの三人は?」

「ああ、こいつらは娘とその幼馴染みと居候のコナンだ」

「娘の蘭です」

 蘭が言う。

「工藤です」

 と、聡美。

「コナンです」

 続いてコナン。

「それで? 依頼状のことなんだが……」

「ああ。そうだったな。まずは現場を見てくれ」

 稲垣が受付から出て来て、小五郎たちを現場の部屋へと案内する。

 現場は遺体発見時とほぼそのままの状態だった。

「妻はあそこで首を吊っていたんだ」

 と、稲垣が指を差す。

 聡美がコナンを肩車してロープが垂れ下がっていたと思しき場所を確認させる。

「うわ!」

 埃だらけだった。一部を除いて。

「ロープを擦り付けた痕だね」

 聡美はコナンを下ろす。

「これが妻の残した遺書だ」

 と、稲垣が小五郎に渡す。

「私にも見せて」

 と、聡美が遺書を覗き込む。

「生きることに疲れた。あなたを置いて先に逝く私を許して」

「妻はどうして自殺してしまったんだ……」

 稲垣は今にも泣きそうだった。

「ねえ、稲垣さん」

 と、聡美。

「なんだい?」

「この旅館にパソコンはありますか?」

「ノートパソコンなら」

「それってプリンターと繋がってる?」

「いや、プリンターは置いてないよ」

「なんでそんなこと聞くんだ?」

 と、小五郎は疑問符を浮かべる。

「遺書は印刷された文章じゃん。なのにプリンターがない。これが意味することは?」

「そうか! 奥さんはパソコンで書いた遺書のデータをコンビニのプリンターで印刷したんだ!」

(アホ……)

「毛利くん、君は本当に名探偵なのか?」

(名探偵の毛利小五郎は新一お兄ちゃんだよ)

「小五郎さん、これから自殺するって人がわざわざコンビニまで行って、遺書印刷して戻ってくると思う? 私だったら遺書なんて書かないで死ぬけどね」

「どう言うことだ?」

「奥さんは誰かに殺されたってことよ」

「こ、殺された!?」

 驚き戸惑う稲垣。

 


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