「それで、事件なんですか?」
「検視官の報告によると、死因は毒物によるものだということだよ」
と、赤峰。
「亡くなった女性の名は?」
「
(望美?)
聡美は立てこもり犯の言っていた人物の名を思い出した。
「あれ? コナンくんは?」
と、コナンがいないことに気付く蘭。
「コナンくんなら用事あるからって言っていなくなったけど……」
「なんだよ。寿司ご馳走してやるって言ったのに」
「赤峰刑事、我々以外の男性二人と女性に接点はあるんですか?」
「それはなかったよ」
「となると、怪しいのは、店長さん……あなたということになってしまうのですが?」
「待って下さい! 私はやってませんよ!」
「ご同行願えますか?」
と、志村刑事。
「だから、俺が殺したんなら証拠を持ってこい、証拠を!」
「志村刑事、待って下さい」
と、聡美。
「あ……ああ」
聡美はトイレを確認する。
「赤峰刑事、このトイレットペーパーを鑑識に回して下さい」
「わかりました」
赤峰刑事がトイレットペーパーを回収した。
鑑識からの報告で、トイレットペーパーから毒が検出された。
「女性の前にトイレに入ったヒゲの方、あなたはトイレットペーパーに触れましたか?」
ヒゲの見窄らしい男性は首を横に振るった。
「志村刑事!」
他の捜査員がやってきて、志村刑事に報告した。
「何!?」
「どうしたんですか?」
「トイレの窓の外で目出し帽が発見されたそうだ」
「そういえば、毛利さんたちが来る前に男が来たな」
「どんな顔ですか?」
と、どこからか用意した画用紙とペンでモンタージュを作成する聡美。
「こんな感じ?」
「そうそう、その男だ!」
「名前、わかりますか?」
「
「峯岸……殺人までやらかすとはね」
「工藤くん、その峯岸が犯人なのか?」
「否定はできませんね。刺傷事件の犯人は峯岸で確定ですが」
「その峯岸はどこに?」
「近所の家に立て籠もってますよ」
「よーし! その峯岸のところへ行こうではないか!」
聡美たちは峯岸が立て籠もっている家へ向かった。
現場に着き、電話をかける聡美。
応答する男。
「峯岸さん」
「な、なぜ俺の名を」
「あなた、先ほど寿司屋に行きましたね? トイレの窓の外に目出し帽があったそうですよ」
「そんな事より、望美は連れて来れたのかよ?」
「亡くなりました」
「はあ?」
「あなたが殺したんです」
「どういう事だ?」
「寿司屋のトイレで毒物が検出されてます。あなたが用意したものではないんですか?」
「知らねえよ! 俺じゃねえ!」
「そもそも、あなたが立て籠もってる理由は通り魔をやらかしたから、ですよね?」
「は? 通り魔なんてやってねえよ」
「え?」
思考が一瞬停止する聡美。
(はっ!?)
「志村刑事、寿司屋にいたヒゲの男性を! 速く!」
志村刑事が他の捜査員に寿司屋のヒゲの男性を確保させた。
「工藤くん、部下にヒゲの男性を確保させたが、何の容疑で立件するんだ?」
「通り魔の刺傷事件と口封じに磯貝さんを殺害した容疑です」
「何?」
疑問符を浮かべる志村刑事。
「峯岸さん、あなたはなぜ立て籠もっているのですか?」
「望美に会いたいからだよ」
「峯岸さん、磯貝さんとはどういうご関係で?」
「恋人だよ! 運命の! だけど、別れたんだ。もう会わないって。だから、事件起こして、警察に連れて来てもらおうと思ってな」
投降しよう──と、峯岸が家から出て来る。
制服警官が峯岸を警視庁へ連行する。
さりげなく出て来るコナン。
「あら、コナンくん」
と、蘭。
「忘れ物しちゃって、戻ってきたらこの騒ぎだけど……」
「小さな探偵さんの出番はなかったかな」
嫌味を言う聡美。
「ほっとけ」
一方、寿司屋で捜査員に確保された男は、警視庁の取調室で犯行の全てを自供したと言う。