高校からの帰り道、聡美は蘭とコナンの三人で歩いている。
「え? 加村くんの弟と?」
「そうなのよ。妙に懐かれちゃって。しまいにはプロポーズされたわ」
「へ、へえ……」
その時だ。
サイレンを鳴らした複数台のパトカーが三人を追い抜く。
「……!?」
コナンが駆け出した。
「コナンくん!?」
と、追いかける蘭。
聡美も走り出した。
パトカーが止まっている現場へと辿り着く。
「ねえ、お巡りさん?」
と、コナンが見張りの警察官に訊ねる。
「ああ、君たちか」
警察官は一瞬考え込んで答える。
「実はこの家の住人が今日の未明に撲殺されてね」
「撲殺?」
こちらに気づいた目暮警部がやってくる。
「おお! 聡美くんたちか」
「いったい何があったんです、目暮警部?」
「まあ、中で話そうか」
三人は目暮警部に案内されて現場に入る。
「ご覧の通りだ」
「被害者は
遺体が机に伏せている。
パソコンの電源がオンになっており、画面にはとあるサイトの掲示板が表示されている。
「死亡推定時刻は昨夜十一時から午前二時ごろ。被害者が掲示板に投稿していたのが、午前一時半なので、それ以降に殺害されたものと我々は見ている」
遺体のそばにスマホが落ちている。
聡美はスマホに手を伸ばした。
スマホを操作しようとするが、ロックがかかっていた。
「後で鑑識に見てもらうよ」
目暮警部がスマホを預かる。
聡美はパソコンを操作した。
確かに目暮警部の言う通り、午前一時半に掲示板へ投稿した履歴があった。
「うん?」
投稿を遡ってみると、同じIPアドレスの人物が自作自演をしている箇所が見られた。その証拠に他者がそれを指摘している。
「高木刑事、至急このIPアドレスを調べてもらえますか?」
「IPアドレスですか? ちょっと待って下さい」
高木刑事がIPアドレスをメモした。
「では!」
高木刑事は大急ぎで駆けっていった。
「目暮警部! 被害者が亡くなる前に電話していた相手が判明しました!」
「本当かね?」
「
「その人物のアリバイは?」
「被害者が死亡する直前に自宅アパートの防犯カメラの映像に帰宅する様子が映っていました」
そこへ高木刑事がふくよかな男性を連れてきた。
「こちら、IPアドレスの持ち主の副島さんです」
「……!?」
聡美は驚いた。
「副島? 下の名は彰さんですか?」
「はい。刑事さん、これは一体?」
「実はあなたのご友人の野中さんがお亡くなりなられましてな」
「亡くなった? 一体、誰に殴られたんですか?」
「それはこれから……」
聡美は鑑識のトメに訊く。
「トメさん、被害者のスマホに……の痕跡ありました?」
「ああ、あったよ! けど、よくわかったね!?」
聡美は副島を見つめる。
(間違いない。犯人はこの人だ)
「その顔、犯人がわかったみたいだな」
と、コナンが聡美に言う。
「まあ、とりあえずあなたのアリバイは確認できてるので、お引き止めする必要もないでしょう」
目暮警部が副島を帰らせようとする。
「困りますね、勝手に帰られては」
「え?」
帰ろうとした副島が立ち止まって聡美を見る。
「これからあなたがどうやって、被害者を殺害してアリバイを作ったのか、それを明らかにしようとしたのに」
「何を言うんだね、聡美くん。彼には犯行は無理だろう?」
「それができるんですよ。パソコンとスマホがあればね」
「なんだって?」
「ほう? じゃあ、聞かせてくれ。僕がどうやって野中を殺したのか」
聡美の説明はこうだ。
掲示板のフォームに文章を打ち込み、投稿せずにそのままにし、マウスポインタを投稿ボタンの上に合わせ、スマホのアラームをバイブレーションに設定してマウスに立てかけ、タイマーをセットしてその時刻、つまり午前一時半に起動するようにし、現場を離れる。後は何食わぬ顔で帰宅し、防犯カメラに映り込めば、犯行は完成だ。
「……と、いうわけですよ」
「……!」
「確かにその方法ならできる。だが証拠が、俺がやった証拠がないじゃないか」
「証拠ですと? それはあなたがさっき自分で口にしていたじゃないですか。『一体、誰に殴られたんですか?』とね」
「……!?」
「あなたが来た時はすでに遺体は運ばれた後。どうして被害者が撲殺されたこと、あなたは知っているんですか。説明、できますか?」
「……くっ!」
副島は膝をついた。
「あいつが悪いんだ。あいつが俺のサイトを掲示板に載せたから。それで俺のサイトは荒らしの被害にあってな……」
副島は制服警官に連行された。
「いやあ、また君の世話になったな、聡美くん」
(本当はあまり関わりたくないんだけど……)
と、聡美は頭の中で思うのだった。