名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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51.インターネット殺人事件

 高校からの帰り道、聡美は蘭とコナンの三人で歩いている。

「え? 加村くんの弟と?」

「そうなのよ。妙に懐かれちゃって。しまいにはプロポーズされたわ」

「へ、へえ……」

 その時だ。

 サイレンを鳴らした複数台のパトカーが三人を追い抜く。

「……!?」

 コナンが駆け出した。

「コナンくん!?」

 と、追いかける蘭。

 聡美も走り出した。

 パトカーが止まっている現場へと辿り着く。

「ねえ、お巡りさん?」

 と、コナンが見張りの警察官に訊ねる。

「ああ、君たちか」

 警察官は一瞬考え込んで答える。

「実はこの家の住人が今日の未明に撲殺されてね」

「撲殺?」

 こちらに気づいた目暮警部がやってくる。

「おお! 聡美くんたちか」

「いったい何があったんです、目暮警部?」

「まあ、中で話そうか」

 三人は目暮警部に案内されて現場に入る。

「ご覧の通りだ」

「被害者は野中(のなか) (たかし)、三十二歳。プログラマーです」

 遺体が机に伏せている。

 パソコンの電源がオンになっており、画面にはとあるサイトの掲示板が表示されている。

「死亡推定時刻は昨夜十一時から午前二時ごろ。被害者が掲示板に投稿していたのが、午前一時半なので、それ以降に殺害されたものと我々は見ている」

 遺体のそばにスマホが落ちている。

 聡美はスマホに手を伸ばした。

 スマホを操作しようとするが、ロックがかかっていた。

「後で鑑識に見てもらうよ」

 目暮警部がスマホを預かる。

 聡美はパソコンを操作した。

 確かに目暮警部の言う通り、午前一時半に掲示板へ投稿した履歴があった。

「うん?」

 投稿を遡ってみると、同じIPアドレスの人物が自作自演をしている箇所が見られた。その証拠に他者がそれを指摘している。

「高木刑事、至急このIPアドレスを調べてもらえますか?」

「IPアドレスですか? ちょっと待って下さい」

 高木刑事がIPアドレスをメモした。

「では!」

 高木刑事は大急ぎで駆けっていった。

「目暮警部! 被害者が亡くなる前に電話していた相手が判明しました!」

「本当かね?」

副島(そえじま) (あきら)という人物です」

「その人物のアリバイは?」

「被害者が死亡する直前に自宅アパートの防犯カメラの映像に帰宅する様子が映っていました」

 そこへ高木刑事がふくよかな男性を連れてきた。

「こちら、IPアドレスの持ち主の副島さんです」

「……!?」

 聡美は驚いた。

「副島? 下の名は彰さんですか?」

「はい。刑事さん、これは一体?」

「実はあなたのご友人の野中さんがお亡くなりなられましてな」

「亡くなった? 一体、誰に殴られたんですか?」

「それはこれから……」

 聡美は鑑識のトメに訊く。

「トメさん、被害者のスマホに……の痕跡ありました?」

「ああ、あったよ! けど、よくわかったね!?」

 聡美は副島を見つめる。

(間違いない。犯人はこの人だ)

「その顔、犯人がわかったみたいだな」

 と、コナンが聡美に言う。

「まあ、とりあえずあなたのアリバイは確認できてるので、お引き止めする必要もないでしょう」

 目暮警部が副島を帰らせようとする。

「困りますね、勝手に帰られては」

「え?」

 帰ろうとした副島が立ち止まって聡美を見る。

「これからあなたがどうやって、被害者を殺害してアリバイを作ったのか、それを明らかにしようとしたのに」

「何を言うんだね、聡美くん。彼には犯行は無理だろう?」

「それができるんですよ。パソコンとスマホがあればね」

「なんだって?」

「ほう? じゃあ、聞かせてくれ。僕がどうやって野中を殺したのか」

 聡美の説明はこうだ。

 掲示板のフォームに文章を打ち込み、投稿せずにそのままにし、マウスポインタを投稿ボタンの上に合わせ、スマホのアラームをバイブレーションに設定してマウスに立てかけ、タイマーをセットしてその時刻、つまり午前一時半に起動するようにし、現場を離れる。後は何食わぬ顔で帰宅し、防犯カメラに映り込めば、犯行は完成だ。

「……と、いうわけですよ」

「……!」

「確かにその方法ならできる。だが証拠が、俺がやった証拠がないじゃないか」

「証拠ですと? それはあなたがさっき自分で口にしていたじゃないですか。『一体、誰に殴られたんですか?』とね」

「……!?」

「あなたが来た時はすでに遺体は運ばれた後。どうして被害者が撲殺されたこと、あなたは知っているんですか。説明、できますか?」

「……くっ!」

 副島は膝をついた。

「あいつが悪いんだ。あいつが俺のサイトを掲示板に載せたから。それで俺のサイトは荒らしの被害にあってな……」

 副島は制服警官に連行された。

「いやあ、また君の世話になったな、聡美くん」

(本当はあまり関わりたくないんだけど……)

 と、聡美は頭の中で思うのだった。

 


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