聡美とコナン、蘭、そして小五郎は、京都の時代劇撮影所にやってきた。
ここ、
「へー。これ全部、江戸時代の街並みをそっくり再現したものみたいね」
「あれ?」
と、聞き覚えのある声がし、振り返る聡美と蘭。
「あ、和葉ちゃん!」
「蘭ちゃん、なしてこないなとこに?」
「和葉ちゃんこそどうして?」
「実は平次が時代劇の撮影をしててん。一緒についてきたんよ」
「そうなんだ。私たちはお父さんが事件の依頼を受けたから一緒に」
和葉が聡美を見る。
「そっちの子は初めてやね」
「工藤 聡美」
「く、工藤やて!?」
聡美に和葉が詰め寄る。
「あんたね!? 東京で平次を
「え、なんのこと?」
「とぼけたってアカンで! 平次から全部聞いてんやから!」
傍でコナンが、ヤバイという顔をしている。
「なに言うとんねん、アホ」
と、休憩中の
「俺の言うとる工藤は男や」
「え?」
振り返る和葉。
「でもこの子も工藤て……」
「そいつは工藤の妹やて」
「そうやったの? ごめんな、聡美はん」
「それよか、なんでみんなこないな場所へ来てんねん?」
「事件の依頼だよ、平次兄ちゃん」
「事件やと?」
「ああ。陣川っつー俳優に脅迫状が届いてな。差出人を特定してほしいらしい」
その時だ。
「きゃああああ!」
どこからともなく、女性の甲高い悲鳴が聞こえた。
「なんだ?」
聡美、コナン、平次が駆け出す。
「どないしたんや姉ちゃん!?」
驚いた男性の隣で腰を抜かす女性が小屋を指差す。
「な!?」
聡美は小屋の中の首吊り遺体を見て驚く。
平次が遺体に駆け寄り、様子を調べる。
「アカン、もう亡くなってるで」
「そんな、芳枝が?」
男性はワナワナと震える。
「なあ、これを発見した時、状況はどうなってたんや?」
「ここ、芳枝の控室に使ってたんだけど、中からかんぬきがかかってて、いくら呼んでも返事がないから、突き破って開けたら首を吊ってたんです」
「なんやて!?」
「まさか、芳枝が……」
男性が悲しそうに涙を見せる。
聡美は警察に通報した。
警察が到着し、捜査が行われる。
捜査で死亡した女性の名は、
男性の名は
女性は
被害者の芳枝は陣川と付き合っていたのだが、彼が上妻に乗り換えたことにより犬猿の仲になりかけていた。
「こりゃ自殺だな。中からかんぬきがかけられてたんだろ? 小屋の構造を見ても外からはかけられねえや」
と、小五郎は言う。
捜査員によって遺体が下された。
聡美は遺体を確認するが、特に怪しい点は見つからない。
「毛利さん、自殺となると動機はいったい?」
「そちらの陣川さんが上妻さんに乗り換えたことにより、ショックを受けてのことでしょう」
「さすが、名探偵」
「ナーハハハハ」
高笑いする小五郎。
「自殺ということなら、私は仕事に戻ります」
「まあ、いいでしょう」
と、刑事。
「陣川さんは、脅迫状のことで話を聞きますので、もう少しお付き合い下さい」
「はい」
立ち去ろうとする上妻。
「困りますね、勝手に戻られては」
「え?」
立ち止まり様に振り返る上妻。
「お嬢ちゃん、何なんだね?」
刑事が聞く。
「これから自殺に見せかけた巧妙な殺人トリックの全容を解明しようというのに。ですよね、板垣さんを殺害した犯人の、上妻 英子さん!?」
「な……!?」
驚く上妻。
「ちょっと待ってくれよ。小屋は内側からかんぬきがかけられていたんだよ? なのにどうやって外に脱出したんだ?」
「簡単ですよ。絞殺した被害者を縄で吊るし、両足の間にかんぬきを挟み、振り子のように振ってすぐに扉を閉める。すると扉側に足が戻ってきたときにぶつかり、衝撃でかんぬきが落下し、かんぬきが扉に挟まるというわけですよ」
「そんなの言いがかりだわ!」
「脅迫状」
「え?」
「脅迫状は板垣さんが陣川さんに出したものじゃないんですか? 板垣さんは陣川さんがあなたに乗り換えたことで、陣川さんを殺そうとしていたんですよ」
「なんですって!?」
驚く陣川。
上妻の顔に影が差さる。
「ふっ、そうよ。私が殺したのよ。あいつが輝を殺そうと計画してるのを知って、それを止めるためにね。自殺で片付くと思ったのに、お嬢ちゃんには負けたわ」
上妻は刑事に両手を差し出した。
手錠をかけた刑事が、上妻を制服警官と共に署へ連行するのであった。