「ん?」
誰かの視線に気づき、振り返る聡美。
「誰だ!?」
視線の主は去っていった。
「聡美くん、進展があった!」
目暮が叫ぶ。
聡美は目暮に駆け寄る。
「御影さんなんだが、危険物取り扱いの資格を持っていたことがわかってな。昔は映像会社で特撮ドラマの撮影に携わっていたらしい。事故だとはいえ、その時に仲間が爆発に巻き込まれて亡くなっていたそうだ」
(なんだと?)
「それでな、爆発スイッチをうっかり触って押してしまった
「なんですって!?」
驚く聡美。
「それじゃ、その仲間の死を恨んでる誰かが爆弾を?」
と、世良が言う。
「いずれにせよ、爆発はこれで最後だろう」
そう断言する目暮。
「とりあえず、その爆発事故で亡くなったスタッフについてボクは知りたい」
「私も知りたいです」
二人の言葉に、目暮は申し訳なさそうな顔をして言った。
「その映像会社は潰れててな。残念ながら、当時のスタッフを捜すのは骨が折れるよ」
「当時の関係者を御影さんから聞きましょう」
「そうだな」
三人は東都総合病院に足を運んだ。
病棟の個室に、御影はいた。
「御影さん、警察です」
目暮が御影に警察手帳を見せた。
「あなた、寿司を握る前は映像会社で働いてましたよね?」
「はい。
「その時に起きた爆発事故についてお話を聞かせてくれませんか?」
「いや、今はなにも……」
「しかし、爆破事件の犯人を捕まえないとまた襲われる可能性がだね」
「刑事さん、あなたは当時の関係者が犯人だと?」
「その可能性は十分にあります」
「
「え?」
「
「天沢?」
目暮は埼玉県警に天沢という警察官がいることを思い出した。
その天沢の妹が、輝という名で、他界しているらしい。
「目暮警部、天沢 輝って確か、当時ニュースになったけど、兄が記者会見してませんでした?」
「その兄、私の知り合いの警察官かもしれん」
「警察官?」
「埼玉県警のな」
「それじゃ、その警官が?」
「いや、まだ決まったわけじゃないよ」
「警部、容疑を固めるためにも、埼玉県警へ飛びましょう」
「そうだな」
三人は埼玉県警本部に向かった。
「警視庁の刑事さんが何の用で?」
「天沢について調べてる。知ってることを教えてくれ。東京で起きた爆破事件の重要参考人なんだ」
「天沢?」
「輝の兄だ」
「ああ、あの映像会社の事故の?」
「ああ」
「天沢は今、爆発物処理班に配属されておるよ。まさか、爆弾の知識を取り入れて?」
「処理班だな? よし」
目暮は二人を連れて爆発物処理班の部屋へ向かった。
「なんですか?」
目暮は警察手帳を見せる。
「警視庁?」
「天沢はどこだ?」
「今週は有給で休みです」
「どこにいるか聞いてるか?」
「さあ、それは」
「連絡先教えてくれないか? 重要参考人なんだ」
「なんの?」
「東京で二件起こった爆破事件のな」
「え? まさか、天沢が?」
これが携帯番号ですけど——と、職員が番号を見せる。
「どうもありがとう」
「あと、これも」
目暮は天沢の住所が書かれたメモを受け取った。
「行くぞ」
三人は天沢の家に向かった。
ピンポン、とチャイムを鳴らす。
男性が出てきた。
「あれ! 目暮警部じゃないですか」
「天沢、今日なにしてた?」
「なにって、家にいましたが?」
「実はな、お前の妹が務めていた映像会社の関係者の店で事件が起きてな」
「事件? 相当の威力だったんでしょうか?」
「ああ、両手が吹っ飛ぶくらいのな。二件目は客が死んでおる」
「そうなんですね」
聡美は口を開いた。
「今の、秘密の暴露ですよね?」
「え?」
「目暮警部は爆破事件だなんて一言も言ってません。なんで、爆破だとわかったんですか?」
「ああ、それはニュースを見て……」
「まだニュースにはなってませんよ」
「……………………」
「一件目、二件目の料理屋を爆破したのは、あなたですよね?」
「俺は寿司屋なんて爆破してねえ!」
聡美は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「なんだよ?」
「寿司屋、と言いましたね?」
「ああ、それがどうした?」
「私は料理屋と言っただけで、寿司屋だなんて、一言も言ってませんよ」
「……!?」
焦る天沢。
「天沢、署まで来い」
天沢を署まで連行する目暮。
その後、天沢は取調室で全面自供した。