名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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4.自殺

 帝丹高校。

 聡美が登校する。

「ついに新一と会えなかった」

 一緒に登校した蘭が学校に着くなり嘆いた。

「家にも帰ってないなんて、どこ行っちゃったんだろ?」

「連絡ないから、私もわからない」

「はーあ」

 ため息を吐く蘭。

 校舎に入り、靴を履き替える。

 2ーBへ移動し、席に着く二人。

「どうしたの? 蘭」

 と、友達の鈴木 園子(すずき そのこ)が泣きそうな蘭に訊ねる。

「新一の行方が分からなくなったのよ」

「マジ?」

「うん」

 寂しそうな表情をする蘭。

「どこに行っちゃったんだろう? 新一」

「そ、その内ひょっこり帰ってくるわよ」

 慰める聡美だが。

「もしかして、変なことに首を突っ込んで帰らぬ人に?」

「それはない」

 はっきり否定する聡美。

「どうして?」

「実は蘭が来る前、家にいたのよ。でも電話があって、地方の方へ事件の調査に行っちゃって」

「本当に?」

「うん」

 明るくなる蘭。

「その内に連絡あると思うよ」

「そうかな」

 チャイムが鳴り、教諭が入って来る。

 一方、帝丹小学校では、編入生の紹介がされていた。

「江戸川 コナン……です。よ、よろしく」

「はーい、じゃあ空いてる席に座ってね」

 コナンは空席に座った。

 授業が始まる。

 ……。

 …………。

 ………………。

 授業が終わり、コナンの周りに人だかりができる。

 場所は戻って、帝丹高校。

 時刻はお昼。

 食堂でご飯を食べている聡美。

「ここ、いい?」

 向かい側に男子生徒が座る。

 聡美は、無言で黙々と食べている。

「君、確か工藤 新一の妹だったね」

「ええ」

「君の推理力も彼に引けを取らないそうじゃん? それで、折り入って相談があるんだけど」

「相談?」

 と、ちょうどご飯を平らげた聡美は顔を上げた。

「お聞きしましょう」

「実は……」

 男子生徒の母親が亡くなった。

 部屋に荒らされた形跡があることから、警察は他殺と見て調べたが、捜査は難航を極めている。

 母親は、背中を刺された状態で死んでいたという。

「なるほど」

「犯人を捕まえて欲しいんだ。俺の母さんを殺した」

「とりあえず、学校が終わったらお家にお伺いします」

 聡美はそう約束した。

 

 

 放課後、聡美は男子生徒の家に同行した。

 現場はリビングで、遺体が倒れていた位置に白線が貼られている。

 フローリングの床を調べてみると、遺体が倒れていたところの近くに、何らかによる凹みができているのが見つかった。

「第一発見者は?」

「俺だ。昨日、学校から帰ってきたら死んでたんだ」

「その時、暖房ついてなかった?」

「そういえば暑かったな」

「なるほど。わかりましたよ、犯人が」

「え?」

「お母さんは自殺だったんです」

「自殺? でもどうやって?」

「簡単ですよ。氷にナイフの柄を刺して、床に立てる。椅子を用意し、背中からナイフに向かってダイビングをすれば、自分の背中にナイフが突き刺さるんですよ」

床を見て下さい──と、聡美は床の凹みを指差す。「これは背中にナイフを刺した時にできた傷です」

「なるほど」

「そして、暖房がついていたのは、氷を速やかに溶かすため……これらのことを踏まえると、お母さんが自殺した、という結論に至るわけですよ」

「でも、何でかあさんは自殺を?」

「動機ですか? そこまではわかりませんね」

「そっか。でもすっきりしたよ。ありがとう。警察には俺から今の推理を伝えておくね」

 


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