朝。
聡美の携帯がけたたましく鳴る。
「はい?」
聡美は応答した。
「本田です。拳銃のルート辿ったんですが、アメリカで購入されてることがわかりました」
「そうですか。誰が買ったかわかります?」
「えっと……
「魚塚さん、ですか……。現住所わかります?」
「アメリカ合衆国テキサス州……になってますね」
「ありがとうございます」
それを聞いた聡美は電話をしまい、国際免許を取得し、バイクごと渡米した。
アメリカに辿り着いた聡美は、魚塚の家へバイクを駆る。
魚塚の家に着き、インターホンを押す、が、しかし、誰も出てこない。
ドアを開けようと、ドアノブに手をかけた。
すんなりと開く扉。
聡美は家の中に入る。
一通り中を見ていると、ウォッカが写った写真を見つけた。
(……?)
玄関から物音。
(誰か戻ってきた?)
聡美はクローゼットに隠れた。
サングラスをかけたウォッカが部屋に入ってくる。
(やばいやばいやばいやばい、見つかったら何されっかわかったもんじゃない)
ウォッカはサングラスを外して机に置き、クローゼットの前までやってくる。
「あ!」
ウォッカは机のサングラスを取る。
「兄貴のところへ携帯置いてきてしまった」
ウォッカが部屋を出て行く。
聡美はクローゼットを出て、魚塚の家を後にした。
魚塚の家から持ち帰ったものは、魚塚名義の拳銃の領収書、他に大量にあった偽造パスポートの一部。
聡美は宿泊先のホテルで考えを巡らせた。
魚塚の家にあったウォッカの写真。このことから、ウォッカの名前は魚塚であることが窺える。そして、拳銃の明細書と偽造されたパスポート。恐らく、ウォッカは拳銃を買い、その拳銃をX線を遮断するケースに詰め、偽造パスポートで日本に入国し、拳銃を持ち込んだのだろう。それが、聡美の手元に渡り、桜田門警視庁に届けられたのだ。
聡美は一晩泊まって疲れを癒し、日本に帰国した。
帰国後、聡美は警視庁に立ち寄った。
組織犯罪対策課の本田に会う。
「工藤さん、何かご用ですか?」
聡美は魚塚がウォッカのコードネームで、組織の幹部として活動していること。偽造パスポートで不法入国していること。拳銃を密輸したことを説明した。
「魚塚が日本に来てる? 偽造パスポートで?」
「はい」
「これが偽造パスポートです」
聡美はウォッカのパスポートを提出した。
「これは……アメリカのものだな……。しかし、これが偽造なら精巧な技術だぞ」
「すぐに入国管理局に確認を」
「ああ、そうだな」
本田は入管に照会をかけた。
入管からすぐに回答が来る。
ウォッカの写真で入国の記録が残っていたようだ。
聡美が船で帰国する直前、国際線の航空機で入国していた。もちろん、名義は魚塚ではない。
「とりあえず、魚塚を確保しましょう。そうすれば組織全体を根絶やしにすることもできるかもしれません」
「ああ、そうだな」
本田は部署に戻り、大勢の捜査員を動員した。
警察の全力な捜査で、ウォッカの居場所を特定し、確保に成功した。
ウォッカは警視庁に連行され、連日連夜の事情聴取の末、検察に送検された。
聡美は確保時のウォッカの所持品を警察から預かり、ウォッカに変装してジンと接触した。
「ジンの兄貴」
「なんだ?」
「ジンの兄貴、名前なんでやしたっけ?」
「そう言えば教えてなかったな。
なるほど。
「しかし、なぜそんなことを訊く?」
「相棒のことはよく知っておこうと思いやして」
「相棒か」
ジンは照れ臭そうに笑みを浮かべた。