名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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34.逃げる加村

 放課後。

 聡美が蘭と園子と一緒に帰路に就いている。

 そこへ、背後から加村が走ってくる。

「どけ!」

 加村が聡美たちを押しのけて抜けていく。

「待て!」

 その後を、赤峰刑事が追う。

「赤峰刑事!」

「ああ、聡美くんたち!」

 赤峰刑事が慌てながら加村を追って行った。

 聡美は携帯で目暮に連絡を取った。

 目暮によると、加村が殺人の容疑者として浮上したらしい。

 その電話のあと、加村 義男から電話が。

「どうしたの?」

「兄ちゃんが! 兄ちゃんが警察に追わでてるんだ! 助けて!」

(あの人、義男くんのお兄さんだったんだ)

「聡美姐ちゃん、お願いだよ!」

「わかった。お兄さんは私が必ず助ける」

 聡美は電話を切るとポケットにしまった。

「とは言うものの、見失ったわね」

 聡美は二人が走り去って行った先を見る。

「聡美、事件現場へ行ってみたら? 聞いてるんでしょ?」

「そうね」

 三人は現場である近くの廃屋に足を運んだ。

「おや? 聡美くんたちじゃないか」

 三人は志村刑事に遭遇した。

「こんなところへどうしたんだ?」

「ちょうどよかった。志村刑事、現場をちらっとでいいんです」

「ああ、構わんよ。君たちには世話になってるからね」

 三人は現場に足を踏み入れた。

「被害者はホームレスの権藤(ごんどう) 美喜男(みきお)。遺体があるとの通報を受けてやってきた我々が、近くをウロウロしていた加村という少年に職質をしたところ、逃げ出したので赤峰くんが追いかけてる」

「被害者の所持品等は?」

「数枚の千円札と小銭だけだったよ」

「名前はどうして?」

「ホームレス仲間に聞いて回ったんだ」

「殺害方法は?」

「絞殺だ。発見したとき、ロープで首を吊られていた」

 聡美は現場の状況を観察する。

 垂れ下がっているロープの下に崩された黄色い箱。犯人はそれを積み上げ、登って首を吊ったか。

「志村刑事、犯人は権藤さん自身ですよ」

「なに? どういうことだ?」

「黄色い箱、崩されてますよね?」

「これは争った後なんじゃ?」

 聡美は降ろされた遺体の首元を示す。

「争って絞殺されたんなら、遺体の首には吉川線があるはずです」

「吉川線?」

 と、蘭が疑問符を浮かべた。

「吉川線ってのは、絞殺された被害者が抵抗したときに首元にできる引っかき傷のようなものだよ」

「ああ、本当だ」

 志村刑事が遺体を再確認して納得する。

「権藤さんはなんらかの動機があって自殺したのでしょうね」

あ!——聡美は思い出したように言う。「赤峰刑事を止めないと」

「そうだった!」

 志村刑事は赤峰刑事に連絡を入れた。

「赤峰くん、逃走した加村はもういい。権藤は本当は自殺だったんだ」

「なんですって!?」

 電話越しに赤峰刑事の驚いた声が聞こえた。

「わかりました。追尾はやめます」

 電話をしまう志村刑事。

「聡美くん、どうもありがとう。あとは我々で」

「いえいえ」

 三人は現場を後にした。

 


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