名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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33.食堂での一時

 帝丹高校。

 蘭が幸せそうな顔で登校してきた。

「どうしたの?」

 園子が訊くと、蘭は新一と電話で話をしたという。

(それ私なんだよね)

 内心で暴露する聡美。

「新一くん、いまどこにいるの?」

「昨日、坂宮 泉が亡くなった現場にいたみたい。殺人事件だったらしいよ」

「坂宮 泉って、病院の非常階段から落ちて亡くなったあの!?」

「うん」

「そうなんだ」

 チャイムが鳴り、教師が入ってきてホームルームが始まる。

 ……。

 …………。

 ………………。

 お昼休み、聡美は食堂に来ていた。

「すみません、焼きそばパン一個」

「ごめんねー。焼きそばパンは今売り切れちゃったよ。焼うどんパンで我慢して」

「焼うどん……?」

「今月から出してる新商品よ。美味しいんだから」

 食堂スタッフが焼うどんパンを出す。

 本当にうまいのか、と訊こうと思った聡美だが、面倒なためやめた。

 お金を払い、焼うどんパンをもらう。

「まいどありー!」

 聡美は席に座り、焼うどんパンを食べてみる。

「あ、美味しい」

 向かい側に、見覚えのない男子生徒が座る。

(えっと……誰?)

「うん? 俺の顔になんかついてる?」

「いや、別に」

「あそ。ああ、俺は柴山(しばやま) 裕一(ゆういち)って言うんだけど、君は?」

「工藤 聡美」

「工藤? 工藤 新一の親戚か?」

「うん」

「そうか」

 ……………………。

 無言が続いたが、柴山が口を開いた。

「君さ、彼氏いる?」

「え?」

(なんだこいつ?)

「いや、いませんが……」

「フリでいいから、俺の彼女になって?」

「……は?」

「だから、ウソカノになってよ」

「ウソカノって、あなた……」

「ダメ……?」

「ダメに決まってるでしょ。私には加村って……」

 言いかけて止まる。

(あれ? なんで今、加村くんの名前?)

「加村? 加村って、あの加村?」

「え?」

「だから、三年A組の加村だよ。精悍な顔立ちはしてるけど、中身はヤバヤバの不良だって噂さ。(まれ)に学校に来るけど、ほとんど来てないって聞くよ」

 その時だ。

「なんで焼きそばパンねえんだよ!?」

 精悍な顔立ちをした男子生徒が叫んだ。

「あいつだよ、加村って」

「ああ? 何見てんだてめえ?」

 加村が柴山に歩み寄ってくる。

 聡美が加村を遮る。

「か、加村くんってあなた?」

「そうだけど、あんたは?」

「工藤 聡美」

「ほう」

 品定めをするようにまじまじと見つめてくる加村。

「あんたが工藤 聡美か。可愛いじゃねえか」

「あ、ありがとうございます」

「うん、決めた。お前、俺と付き合え」

「いや、それは……」

「なんだお前? 俺が嫌なのか?」

「そう言うわけでは。精悍な顔立ちなのは評価します。ただ、お互いのことよく知らないし。だから、まずはお友達からってことでお願いします」

「そうかよ」

 加村は聡美に手にある焼うどんパンを見た。

「あ、お前それ焼きそばパン」

「え?」

 聡美は焼うどんパンを加村に奪われ、食われた。

「って、うどんかよ!」

「あ、私の……」

「ああ、すまん」

 加村は100円を渡して去って行った。

「いや、あの、足りない……」

 だが、加村には聞こえていなかった。

 


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