名探偵コナン〜新一の妹〜   作:桂ヒナギク

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31.芸能人殺人事件2

「実は——」

 蘭は語り出す。

 今、蘭は園子と一緒に、帝丹高校を卒業した先輩の二宮(にのみや) 一香(いちか)に会うため、彼女の家を訪れている。その二宮の家で、蘭と園子は、殺害された一香を発見したという。

「——ということなの。ねえ、新一? 今、どこにいるの?」

 一香といえば、かつて新一が入部していた帝丹高校サッカー部のマネージャーだった人物である。新一とも仲が良かった。

「蘭、一香先輩はどういう風に亡くなってたんだ?」

 聡美はコナンにも聞こえるようにスピーカーフォンにした。

「私たちが発見したとき、一香先輩は首を吊って亡くなってたの。一香先輩、亡くなる前に言ってたわ。相談したいことがあるって。もしかしたら、それが原因で自殺しちゃったんじゃないかって思って」

「現場の状況を克明に教えてくれ。遺体のそばに椅子とか、何か台になるものはあったか?」

「台? そんなのなかったけど、それがどうしたの?」

「いいか? 普通、首吊り自殺をするとき、その人物は椅子とか台になるものを用意する。なぜなら縄を首に引っ掛けて、椅子を倒して自らの首を吊るためだからだ。だが、それがなかったと言うことは、一香先輩は他殺としか考えられない。警察には電話したのか?」

「これからするわ。でも、その前に新一に推理してもらいたくて」

「そうか。それより、今忙しいから、切るな」

「忙しいって、何してるのよ?」

「SARDの坂宮の亡くなった原因を調べててな」

「坂宮 泉の? なんでまた?」

「実は沖野 ヨーコに頼まれて」

「へえ、そうなんだ?」

「忙しいから、もう切るぞ」

 聡美は電話を切ってコナンに渡した。

「お前今、俺の声を出したよな?」

「怪盗キッドに教えてもらったのよ」

「キッドに?」

「うん。捜査二課の中森警部に正体暴露するって脅してね」

「正体知ってるのか?」

「うん。黒羽(くろば)っていう亡くなったマジシャンいたでしょ?」

「ああ、そういえばそんなニュースあったな」

「その黒羽の息子が怪盗キッドなのよ。名前は快斗(かいと)。誰にも言わないでね」

「ああ。次にキッドと対峙したときのためにとっとくよ」

「で、坂宮に戻るけど……」

 聡美とコナンは、地上に降りると院内に入った。

 受付で坂宮のことについて訊ねる。

 坂宮が亡くなった日、彼女の見舞いに来た男性が入館していることがわかった。

 男性の名は、宮木(みやき) 義晴(よしはる)。坂宮の幼馴染らしい。

「住所は教えては……くれないですよね?」

「ええ、個人情報なので。警察なら例外ですけど」

 聡美は懐から警察手帳のレプリカを取り出した。

「警察の方?」

 聡美のズボンの裾を引っ張るコナン。

「何?」

「お前、それ公記号偽造だぞ」

「犯罪には利用してないから、不起訴になるわ」

「あそ」

 聡美はレプリカをしまう。

「宮木さんの住所を」

 スッタフが入館記録を持ってきた。

「これが宮木さんの住所になります」

 聡美は住所をメモした。

「ありがとうございます」

 聡美とコナンは宮木家を訪ねた。

 ピンポン、とチャイムを鳴らすと、男性が出てきた。

「誰だ?」

「探偵の工藤と申します。あなた、坂宮さんが亡くなった日、彼女に会われてますよね?」

「会ってないよ。というか、会えなかったんだ」

「え?」

「病室に入ったらいなくて、どこを捜してもいなかったからね」

「それ、本当ですか?」

「ああ。だけど、まさか亡くなるなんて……。俺たち、婚約してたのに……」

「婚約者だったんですか?」

「ああ。あんた、俺が殺したと思って来たわけ? 婚約者相手にそんなことするわけないだろ」

「それもそうですね」

「俺、眠いんだ。用がないなら帰ってくれ」

「最後にいいですか? 宮木さんのお仕事はなんでしょう?」

「芸能人だよ」

「お笑いですか?」

「いや、マジシャンだよ。今日は明けでマジックバーから帰ってきて、寝るところだったんだ」

「それはすみませんでした」

「なんかわかったら教えてくれよな」

 扉を閉める宮木。

「とりあえず、一香先輩のところ行こうか?」

「ああ、そうだな」

 聡美とコナンはバイクで一香の家を訪問した。

「あ、聡美にコナンくん」

 と、蘭が二人に気づいた。

「お兄ちゃんから聞いたよ。一香先輩、亡くなったんだって?」

「うん。今、所轄の刑事さんたちが捜査中」

 聡美は現場に入った。

「刑事さん」

「なんだい、君? 勝手に入って来ちゃいかんだろ。見張りの警官は何してるんだ?」

「私のことを知らない?」

「知らないね」

「探偵の工藤ですよ」

「工藤? 工藤は確か男じゃなかったか?」

「の、妹」

「そうか。しかし、だからと言って、現場に勝手に入るのはいただけないな」

 


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